■ 夜明けの一関を出発
日本一の海岸美といっていい「陸中海岸」には、岩手県南部の一関から向かった。
東北本線の一関駅に近いビジネスホテル「ホテルアピア」に泊まり、翌朝は夜明けとともに出発。
県道19号で名所の猊鼻渓を通り、国道343号に入り、北上山地最南端の峠、笹ノ田峠を越える。
そして陸前高田へ。そこから陸中海岸の岬めぐりが始まる。
■ 広田半島の2つの岬
陸前高田から県道38号で広田半島に入り、半島南端の広田崎へ。
ここが「陸中海岸岬めぐり」の第1番目の岬ということになる。広田崎園地の駐車場から遊歩道を下り、
展望台に立つ。徒歩3分。絶景岬だ。青松の茂る松島と10万羽ものウミネコの生息地、椿島を間近に眺める。
第2番目の岬は同じ広田半島の南東端の黒崎。駐車場から松林の遊歩道を10分ほど歩くと、
岬の突端に出る。“黒崎仙峡”と呼ばれるV字の岩の割れ目がすごい。
■ 碁石岬で食べるホヤとホタテ
広田半島からは北隣の末崎半島に入っていく。その南端の岬が碁石岬。
この岬周辺の碁石海岸には乱曝谷の断崖や雷岩、碁石浜などがあって見事な海岸美を見せている。
遊覧船も出ている。岬の先端にはミニ灯台。その先の展望台に立つと、対岸に、さきほど立った黒崎を望む。
このあたりの海は養殖が盛ん。名産の「三陸ワカメ」の一大産地になっている。
岬からの風景を存分に眺めたあと、岬入口の店で三陸名物の生ホヤを酢醤油で食べる。
三陸ワカメつき。店のおばちゃんには「兄さん、よく食べられるわね」といわれたが、ぼくの大好物。
このクセのある味が三陸を実感させてくれる。ここではもう1品、焼きホタテも食べた。
肉厚のホタテでうまかった。
碁石岬で見落としてはならないのは、岬近くにある「三面椿」。樹齢1400年で、
日本一の椿の古木として知られている。
■ 「鉄の歴史館」と「釜石大観音」
大船渡から国道45号で釜石へ。釜石の町の入口近くには国道をはさんで左手に「鉄の博物館」、
右手に「釜石大観音」がある。ともにおすすめの立ち寄りポイントだ。
釜石はかつては製鉄の町。それにちなんだ「鉄の博物館」で目を引くのは
南部藩最大規模を誇った橋野高炉の精巧な模型だ。ここでは1000人の人たちが働き、
年間25万貫(約1000トン)の鉄を生産したという。
白亜の「釜石大観音」は高さ48メートル。海に向かって建っている。大観音内のらせん状の階段を登り、
胎内めぐりをしながら最上階の展望台に立つと、眼下の釜石湾を一望する。
目に残る風景。リアス式海岸の陸中海岸には南の大船渡湾にはじまり、綾里湾、
越喜来湾‥‥と、このような奥深くまで切れ込んだ湾が連続する。釜石湾もそのひとつだ。
■ 本州最東端のトドヶ崎
釜石から国道45号を北に行くと、浪板海岸に出る。きれいな白砂の海岸。
険しい海岸線がつづく陸中海岸にあっては貴重な存在の砂浜だ。ここは海水浴場になっている。
その先で国道を右折したところに、三陸山田温泉の「浜の湯」がある。
陸中海岸には温泉がほとんどないので、ここも貴重な存在だ。
養殖漁業が盛んな“海の畑”といった感のある山田湾を右手に見ながら走り、
山田の町を通り過ぎたところで国道を右折し、県道41号で重茂(おもえ)半島に入っていく。
ここは日本の秘境。豊かな自然が残されている。その東端が本州最東端のトドヶ崎。
姉吉という漁港のわきから山道を1時間ほど歩いたとこである。
トドヶ崎には高さ34メートルという東北一のノッポ灯台。岩場には“本州最東端の碑”が建っている。
目の前の海には島影ひとつなく、まさに「最果ての地までやってきた!」という気分にさせてくれる岬だ。
■ 浄土ヶ浜の生ウニ丼
重茂半島から宮古へ。そして陸中海岸きっての名所、浄土ヶ浜に行く。
宮古の市街地と隣り合っているのが驚きだ。抜けるような青空と青い海、
海に突き出た岩肌の白さとその上にはえている赤松の緑。そんな浄土ヶ浜のすばらしい風景を眺めながら、
「浄土ヶ浜レストハウス」で名物の生ウニ丼を食べた。ご飯の上にのった生ウニは、トロッとした食感。
海から吹き込んでくる風が最高に気持ちいい。
■ 陸中海岸のハイライトシーン
宮古から国道45号を北へ。国立公園にも指定されている陸中海岸は、宮古を境にして大きく変わる。
宮古以南は沈降海岸でリアス式海岸が発達している。
それに対して宮古以北は隆起海岸で海岸段丘が発達している。
三陸山田温泉と並ぶ陸中海岸のもうひとつの温泉、小本温泉に入り、
隆起海岸の典型といっていい鵜ノ巣断崖に向かう。田老町から田野畑村に入ったところで、
国道45号を右折。両側に牧場が広がる道を走っていく。駐車場にバイクを停め、赤松林の遊歩道を歩く。
その行き止まり地点が鵜ノ巣断崖だ。赤松林の段丘がストンと海に落ちる地点にある展望台に立つと、
目のくらむような断崖絶壁がはてしなく北へと延びている。“海のアルプス”のような光景。
陸中海岸のハイライトシーンといってもいいほどの強烈な眺めだ。
さらにもう1ヵ所、北山崎の展望台にも立った。あいにくとガスってきたが、
それによって断崖絶壁のつづく海岸はよけいにそれに迫力のある風景となった。
■ 北緯40度の黒崎
“陸中海岸岬めぐり”の最後は、北緯40度線上の岬の黒崎だ。
ここには地球儀型をした北緯40度線のシンボルタワーが建っている。赤い線で北緯40度線が描かれている。
その線上にはアメリカのサクラメント、ソルトレークシティー、デンバー、フィラデルフィア、
ヨーロッパのリスボン、マドリッド、ナポリ、アジアのアンカラ、バクー、サマルカンド、
敦煌、北京、ピョンヤン、それにつづいて大きな字で書かれた“普代村”がある。
この中でまだ自分が行ったことのないところは、カスピ海沿岸のバクー、
中央アジアのサマルカンドと敦煌だ。「うーん、行ってみたい!」と、
黒崎で遠い世界に想いを馳せるカソリだった。
北緯40度線のシンボルタワーの前にはカリヨンの鐘がある。いい音だ。
いかにも幸せをもたらしてくれるような鐘の音。高さ140メートルの断崖上には展望台もあるが、
残念ながらここからの展望はあまりよくない。こうして、たっぷりと陸中海岸の海岸美を堪能し、
国道45号で久慈に出るのだった。