■ 指折りの景勝地に恵まれた越前へ
私事から始めて恐縮だが、ぼくが運営しているアウトドア関係のメーリングリストで、
富山在住の方がよく投稿してくれる。冬にはスキー、夏は海水浴や登山、
そして日本海の美味しい季節の幸と四季折々で様々なアクティビティを満喫されていて、
そのときどきの情報を投稿してくれる。
東京がベースだと、アウトドアスポーツを楽しもうと思っても、郊外へ出るまでに時間がかかるし、
どこへいっても人が多くて、自然に浸りきるというのは難しい。
そして、何か旬のものをいただこうと思っても、物価を考えると、ついつい近所のファミレスへ、
なんて情けないことでお茶を濁すことになる。ところが、彼の住む富山からなら、
一時間もあればお気に入りのフィールドにたどり着くことができ、
しかも現地には「混雑」なんて言葉はないから、ほとんど自然を独り占め。
さらに、自然の味覚も東京とは比較にならないほどリーズナブルだ。
富山に限らず、日本海側はだいたいどこでもそういう状況だ。
今回は、そんな羨ましい日本海沿岸でも指折りの景勝地と海の幸に恵まれた
福井の越前周辺を堪能してみることにした。
まずは、出発地となる敦賀まで一気に移動する。東京から移動して、
そのまま旅をスタートするのはさすがに辛いので、初日は敦賀ICのすぐそばにある国民宿舎「つるが荘」
(中部北陸52A6)に投宿する。ここは、北陸トンネルの掘削中に湯が湧き出した
その名も「敦賀トンネル温泉」の源泉から引かれた天然温泉があり、
高速走行で強張った体を気持ちよく弛緩させてくれる。
ちなみにこの温泉、「美肌効果」が効能のひとつとか...。
■ 波が作り上げた景観を楽しみながら北上
翌日、朝風呂で目を覚まして、さっそく出発する。敦賀市内にある気比神宮(中部北陸52A5)に参拝し、
R8を北上する。6kmほど走ったあたり、右手の崖下に帰山観音(中部北陸52A4)がある。
国道に面した売店では、何故か大きなポリタンクを売っている。
それが気になったので聞いてみると、帰山観音の前に湧水があって、
それを汲むためのタンクとのこと。バイクに括りつけられる大きさでもないので、
何故か水道の蛇口から出る湧水をいただいた。
左手に続く敦賀湾は、まるで湖のように凪ぎ、深い藍色の水を湛えている。
そのまま海岸沿いを行く河野海岸道路もあるが、そのままR8を北上。
しばし、海とは山並を隔てた道となる。
河野村からR305に入ると、すぐに視界が開けて、また海沿いを行く道となる。
すでに敦賀湾を出て日本海に直接面しているため、波が強く、海岸には奇岩が続いている。
河野村から越前町にかけては、地元名産の「越前ガニ」を売りにする食堂や民宿が沿道に並んでいる。
このあたりに投宿して、カニ三昧というのもひかれるものがあるが、どうせなら冬の旬のときに楽しみたいところ。
海岸沿いの道は交通量は少ないけれど、集落を抜けるときなど道幅が狭くなるので、
オーバースピードには気をつけたい。この沿道には、河野シーサイド温泉(中部北陸59H5)、
越前厨温泉(中部北陸59F3)、越前玉川温泉(中部北陸59F2)と三つの温泉がある。
中でもお勧めは、海岸を眼下に見下ろす越前厨温泉。間近に打ち寄せる波音を聞きながら湯に浸かるのも、
なかなか風情がある。
その先、越前岬の先にかけては海に突き出した岩をくりぬいたトンネルをいくつも潜っていく。
荒波に侵食された岩が、様々な表情を見せている。
越前町と越廼村の境にあるレストハウス呼鳥門(中部北陸59F1)で少し早めの昼食にする。
ここのブリ丼(1200円)はボリューム満点の人気メニュー。
レストハウス周辺の磯には奇岩がたくさんあって、ちょっと磯遊びするのにいいスポットになっている。
そのままR305を北上し、左に越前ガニの水揚げ港である福井港を見たら、
そのまま海岸沿いに県道7号に入る。この先に日本海沿岸有数の景勝地東尋坊(中部北陸74B5)がある。
ここは、海に大きく突き出した岩だなが侵食されてできた奇岩や
高さ25mにも及ぶ垂直の断崖が1kmあまりも続いている。その断崖の突端まで行くと、
眼下の荒波が打ち寄せる海に引き込まれそうになる。遊覧船で海側から見物するのも面白い。
断崖に出るまでに両側に土産物屋が並んだ通りを過ぎるが、
夏場には、ここで氷水に浸された椰子の実が売られている。
一人ではとても飲みきれなくてもったいないが、何人かいたら、一つ買って飲んでみるといいだろう。
■ 静寂に包まれた古刹で心を休める
東尋坊を後にしたら、芦原温泉を通り抜け、平野の向こうに続く山なみに並行して南下して行く。
県道29号から県道10号に入り、東へ向かい、北陸本線、R8、北陸自動車道と横切っていく。
R364に当たったら、これを南に向かう。こうして、平野から山間に入ってくると、ぐっと気温が下がり、
山の精気に身も心も締まってくる。
九頭竜川を渡り、その支流の永平寺川に沿って進んで行く。
途中、道沿いにあるそば処「かぶと」(中部北陸67G5)で一服する。
このあたりではそばに大根おろしをたっぷり載せた「おろしそば」(720円)が、
もっともポピュラーなそばの食べ方。とくに夏場の暑い時には、冷たい汁をかけて食べるこのそばが格別美味しい。
さらにもう一軒、ゴマ豆腐の「団助」(中部北陸67G5)に寄り道して、
永平寺御用達のゴマ豆腐を買う。これは真空パックしてあって日持ちするので、お土産に最適だ。
そして、いよいよ、北陸随一の古刹、永平寺(中部北陸67G5)に参拝する。
寛元2年(1244)、道元禅師によって開創された「曹洞宗」大本山。
雲水と呼ばれる禅の入門僧が修行する場所としても有名だ。
樹齢700年の杉の巨木が並ぶ参道を辿って行くと、自然に敬虔な気分に包まれてくる。
静謐な山腹に開かれた境内は10万坪の広さがあって、七堂伽藍を中心に70あまりの殿堂楼閣が建ち並んでいる。
400円也の拝観料を払って中に入る。
多くの修行僧たちの思いがこもった聖域は、心地良い緊張感に包まれていて、
そこがいかにも俗世から離れた世界であることが実感できる。
鏡のように磨き上げられた廊下を歩いていると、修行中の雲水さんとすれ違う。
ほとんどの人が20代前半の若者だが、普段、東京ですれ違う若者たちとは違って、
皆、黙して引き締めた表情の中に、自分と向き合う者だけが持つ静かな自信のようなものを湛えている。
坐禅修行の体験ができる参禅も受け付けているので、次の機会には、ぜひ参加してみたいと思う。
永平寺の参拝を済ませたら、永平寺道路を通り、R158から福井ICに出て帰路に着く。
敦賀から永平寺までぐるっと回って150kmあまり。
一日の行程としては急ぎ足に思えるかもしれないが、道の空いてる北陸ならでは、
どのスポットもゆっくりと堪能して十分に回りきれる。