■ 御嶽山中腹の秘湯を目指して
御嶽山といえば、木曽地方の名峰で3000mを越す独立峰。そして、
1979年の有史以来初めての噴火をしたことで、それまで「死火山」、「休火山」、「活火山」と分類されていた火山が、
「全ての火山は噴火の可能性がある」として分類を撤廃された。
突然の天変地異を古来の人々は、「神の怒り」と畏れてきたが、その意味で、「神の怒り」を実感させ、
大地が息づいていることを身をもって(!?)教えてくれた山だ。
木曽の連山や乗鞍岳といったスケールの大きな山域に囲まれていながら、
御嶽山自身もそれに負けない高さと裾野の広がりを持って、多彩な自然を見せてくれる。
今回は、その御嶽山の西側から北側へと大きく裾野をまわりこみながら、その自然を堪能しようと思った。
■ 林道の宝庫
目指す御嶽山西麓には、中央高速の中津川ICからが便利だ。ICを降りたら、すぐにR19からR257に入る。
付知川に沿ったこの道は、すでに御嶽山の広い山裾にかかっていて、
周囲には雄大な景色が展開していく。このあたり、見通しもよくて、スピード感がないので、
ついついオーバースピードになりがちだが、それを見越した取り締まりがしばしば行われているので十分注意したい。
付知町から加子母村にかけて、R257からたくさんの林道が東西両側に派生し、
国道と並行している。広大な植林地を擁するこの地方では林業が盛んで、
その作業用の林道が整備されているのだ。オフロードフリークにとっては垂涎の環境だが、
東側の尾根を隔てた長野県王滝村との間を結んでいた走り応えのある長大な林道は、
いずれも通り抜けできなくなってしまっているのが残念だ。
今回の取材では、東京をゆっくりスタートしたため、加子母村で泊まることにした。
宿はR257沿いにある生花産地直送市場(55E2)の裏手にある民宿『ひきや』(0573-79-2301)にした。
標高700mの高原にあるこの民宿は、古い農家を改装したもので、
昔ながらのゆったりとした素朴さに包まれて、身も心もリラックスできる。
ちなみに、料金も6000円(一泊二食付)からとリーズナブル。
■ 御嶽の秘湯、濁河温泉へ
翌朝、宿を後にして、舞台峠(55E2)から、ちょっと横道にそれてみる。
眼前に弧を描いて立ちふさがる稜線に向かって高度を上げていくと、道は樹林の中に吸い込まれる。
しばらくすると乙女渓谷という看板が出て、涼しい渓谷沿いにバンガローが立ち並んでいる。
さらに先へ行くと、よく踏み固められたダートとなって、奥へと続いている。
このダートは古い地図には出ていないが、この手の林道が、この付近にはたくさんある。
近年、廃れていた林業が復活しつつあって、間伐なども盛んに行われるようになり、
そのための作業用林道の整備が進んでいるとのこと。
路面がフラットで走りやすいが、これはあくまでも林業関係者用の林道なので、利用する際は、
しっかりとマナーを守ってほしい。
再びR257へ復帰してそのまま北上する。舞台峠の少し先からは、かつては鞍掛峠を越えて
王滝村に出られるロングダートがあったが、ここも今は閉鎖されている。
R41に当たったら、そのままJR高山本線と並行しながら北上する。
そして、飛騨小坂から県道437に入り東進。通称鈴蘭スカイラインと呼ばれるこの道は、途中
から深い谷を挟んで御嶽山から派生する尾根筋と向き合う雄大な風景が展開してくる。
見渡す限り緑の海で、御嶽山の山懐の深さを実感させる。ときどき、野生の猿が道を横切ったり、
枝の上からこちらの様子をうかがっているのも目に入る。ここは、彼ら野生生物のテリトリーなのだ。
嫌になるほどのつづら折れを繰り返し、いくつかの峠を通り過ぎて、濁河峠への道を左に分けると、
ようやく今回いちばんの目的地、濁河温泉(63G3)に到着する。
ここまでの山深い道が嘘のように思える温泉街が御嶽の中腹に出現する。
温泉街のホテルや旅館でも日帰り入浴が可能だが、お勧めは小坂町営の露天風呂(400円)。
温泉街を抜けた高台にある。ここまでのアプローチの長さといい、深山の雰囲気といい、
まさに『秘湯』の名にふさわしい温泉だ。標高1800m、真夏でも空気がキンと締まっていて、
時折、御嶽の山頂から吹きおろしてくるガス混じりの涼風が肌に気持ちいい。
■ 乗鞍の裏プロムナード
濁河温泉を後にして、再び来た道を秋神温泉への分岐(63G2)まで戻る。
そこから秋神温泉方面へ。この道は、鬱蒼とした林の中の道で、やや舗装が荒れているが、
交通量少なく、R158、高山方面へのショートカットルートになる。
秋神温泉を通りすぎ、しばらく行くと、道の右手の河原にキャンプ場が見える。
ここ『くるみ温泉オートキャンプ場』(63F1)は、入湯だけもOK(500円)。
オートバイでのキャンプは1500円。今回のツーリングコースではちょうど中間点にあたるので、
ここで一泊という予定でもよさそうだ。
そのまま渓流沿いの静かな山道を下って行く。R361に出たら、高山方面へ。
しばらく行くと、道の駅あさひ(70F4)がある。この中にある蓬庵で昼食にする。
うどんの中に蓬を混ぜこんだヨモギうどんが名物。ぼくは、かやくご飯と旬の山菜のてんぷらがついた
うどん定食(1000円)を注文する。
高山方面へ抜けるのなら、このままR361を進めばいい。
今回のお勧めルートでは松本へ出るルートを取っているが、ロードバイクなら、
やはりR361を西へ進んで、R158から松本方面へ辿るのがいい。今回のぼくは、
DR−Z400Sという足回りのいいオフロードバイクが相棒なので、
あえてダートランを含むR158へのショートカットコースを取ることにした。
道の駅から来た道を500mほど戻り、カクレハ高原方面へ左折する。
快適なワインディングロードをしばらく行くと駄吉林道入り口(70G2)がある。
標識もしっかりしていてわかりやすい。駄吉林道は
このあたりの山の大きさを実感させる雄大な風景の中を行く。途中、高山の町並みが遠望できたり、
乗鞍を裏側から眺めることができる。ここは、いわば乗鞍の裏プロムナード。
表のプロムナードが日本有数の観光地&ドライブルートであるのと対照的に、景色一人占めの静かなルート。
こういうルートを楽しめるのも、オフロードバイクのフットワークがあってこそ。
駄吉林道は8kmあまりでいったん舗装路に出る。そして再びダートに入る。
こちらの後半区間は、舗装が進んでいて、ダートは4kmあまりしかない。ちなみに、
2000年の8月28日から大掛かりな工事が始まる予定。
雄大な風景の中のダートランもつかの間、すぐにR158に出る。ここからは、高山も至近だし、
乗鞍の本格的な山岳ドライブコースも目前にある。平湯温泉やその奥の新穂高温泉郷、
そして日本屈指の山岳風景が堪能できる上高地も近い。
今回は、御嶽の素朴な自然の思い出だけを胸に、松本ICから帰路に着くことにする。