■ 北アルプスの向こう側
北アルプスといえば、ぼくの住む関東のほうから見れば、すぐに思い浮かぶのは、
白馬や常念といった後立山連邦や穂高、乗鞍といったあたりだ。その向こう側の立山連峰となると、
交通アクセスの関係で、「ちょっと遠いなあ」といった感覚がある。関東地方在住で登山を趣味にしている人なら、
その感覚はなおさら強いと思う。ぼくもその内の一人だが、北アルプスの向こう側にある立山連峰の立山、
薬師岳、野口五郎岳といったあたりは、ちょっと気になる山域なのである。
今回は、北アルプスの表玄関である松本のほうから、そのちょっと気になる立山方面へと抜ける
マイナーだけど期待の持てそうな山岳ルートを辿ってみることにした。
■ お馴染みルートを素通りして
中央道の松本ICを降りて、R158を西へ。このルートは、上高地、乗鞍、平湯、
高山といった中部日本のメジャーな観光地を結ぶ国道だけに、馴染み深い人も多いはずだ。
夏休みの時期には大混雑して、車だとにっちもさっちもいかなくなったりする。
また、上高地方面はマイカー規制が行われるので、
途中に上高地ターミナル行きのバスに乗り換えるための駐車場が開設されたりして、
独特の賑わいを見せたりするところでもある。
今回のぼくの目的地は、そのどれでもないので、安房トンネルを抜けたら平湯を通り過ぎ、
賑わいを他所に、さっさとR471を上宝村のほうへ向かう。
このR471の上宝村栃尾温泉(71B5)あたりまでと、その先県道475の新穂高温泉にかけては、
穂高連峰と焼岳を挟んで上高地の反対側になる。沿道に温泉が豊富な湯煙りロードだ。
ここは、どの温泉も、それぞれに特徴があってお勧めだが、
栃尾温泉「荒神の湯」(71B5)と新穂高温泉「アルペン浴場」(71C4)の二つはとくにお勧め。
「荒神の湯」は、蒲田川の河原にある広い露天風呂で、対岸に焼岳の雄姿が立ちはだかる豪快な風景が拝める。
「アルペン浴場」は、新穂高ロープウェイの新穂高温泉駅の近くにあって、
その名の通りアルペンムード満点の山岳景観が楽しめる。
この温泉は、昔から、穂高方面から下山した登山者が山旅の疲れを癒す温泉として有名だ。
いずれも無料(寸志)なのがまたうれしいところ。
時間があれば、新穂高ロープウェイで西穂高口駅まで登り、その先、西穂高岳頂上(71D4)まで足を伸ばしてみるといい。
3000mクラスの稜線は、残雪の谷を見下ろす天然のクーラー。
天気に恵まれれば、槍ガ岳から前穂高岳、奥穂高岳、蝶ガ岳と連なる日本の屋根を間近に望むことができる。
ただし、ロープウェイで手軽に登れるといっても、そこは本格的な山岳だから、
歩きやすい靴に雨具、最低限の行動食と水は用意して臨みたい。
■ 爽快な高原ルートを一人占め
今回は、余裕を持ってツーリングを楽しむために、初日は上宝村で一泊することにした。
R471沿いにある奥飛騨温泉郷オートキャンプ場(78A5)にテントを張る。
ここは、道の駅『奥飛騨温泉郷上宝』に併設されたキャンプ場で、高原川の河岸段丘にあって気持ちがいい。
オートバイは管理費込みで1800円と、ちょっと高いが、場内にある温泉が自由に使えるのがいい。
さて、翌朝、早々にテントを畳み、R471を西進する。
13kmほどで、今回のメインルートとなる高山大山林道への分岐(77F4)にさしかかる。
朝食がまだだったので、そのまま少し進み、駒止め橋のたもとにある喫茶店『ウェンディ』でモーニングを食べる。
真っ青な高原川の流れを見下ろしながら食事の楽しめるお勧めの店。
腹ごしらえを済ませてから、道を少し戻り、高山大山林道へと入る。林道といっても、
ゆったりとした2車線の舗装路だ。はじめ双六川に沿った道は5kmほどで、左に折れ、
広々した高原を駆け抜ける爽快なスカイラインとなる。上高地や乗鞍のほうの喧騒と対照的に、
すれ違う車もほとんどなく、この最高のツーリングルートを一人占めだ。
途中、神岡町山之村というその地名がぴったりの爽やかな高原に『夕顔の駅』がある。
食堂兼土産物店で、おすすめ休憩ポイント。この山之村に至るルートは、
神岡町坂巻から県道484もあるが、こちらは、2000年9月20日まで災害復旧工事で通行止めになっている。
立山連峰の前衛となる2000mクラスの山塊を縫って、飛越トンネル(83G6)を抜けると、
岐阜県から富山県に入る。すぐにゲートがあり、有峰林道が始まる。
バイクは300円也。この道は、夜間は通行止めとなる。
有峰林道には、大山町の小口川ダム方面へ至る小口川線や岐阜県との県境にあたる大多和峠に至る支線があるが、
いずれも2000年8月現在通行止となっている。
深い山並みの中に突然姿を現す有峰湖、エメラルドグリーンの湖面が神秘的だ。
立山方面の湖としては黒部ダムによってせき止められてできた黒部湖が有名だが、
この有峰湖はスケールではそれを上回り、神秘さでも肩を並べる人口湖だ。
有峰湖から先、大山町有峰口までは、断崖の縁につけられた狭路となる。
所々、補修工事が行われていて、大型車の通行も多く、ダートも現れるので、走行には気を使う。
■ 室堂行きは、バイクじゃないときに...
有峰林道を下りたら、右折して立山方面へ向かう。
ほんとうは、そのまま立山駅を通りすぎ、立山道路を立山山頂近くの室堂まで入れれば最高なのだが、
残念ながら立山道路は二輪車通行止め。室堂行きは別の機会にする。
立山駅前は、ここに車を置いて黒部湖方面へ向かう人が多く、シーズン中の駐車場は満杯。
バイクを道端に止めて、駅前の千寿が原温泉(83G1)に入る。
汗を流したら、立山方面に3kmほど進み、レストラン『クムジュン』(83H1)で、ネパールカレーを食べる。
立山連峰の麓に位置する立山町は、山岳信仰の町としても知られ、山に信者を案内する先達の伝統を守る人も多い。
また、山のスペシャリストとして、多くの登山家も輩出している。
クムジュンのオーナーのお父さんは、そんな登山家の一人で、
南極越冬隊に参加したりヒマラヤ登山を通してネパールとの民間交流に努めたりされた人で、
その業績を偲ぶギャラリーなども併設されている。
立山からは県道6号線を下れば、そのまま北陸道の立山ICに直結する。途中、時間があったら、
立山博物館(83G1)を覗いてみるといい。立山の地理や自然の紹介の他、
立山独自の曼陀羅世界が展開する立山信仰についてよくまとめられている。
また、吉峰温泉(89E6)も、最後に旅の疲れを癒すのに、お勧めのスポット。
広い湯舟でゆったりと手足を伸ばしてくつろいだら、腹を満たして、帰路につこう。