スポーツツーリングとツーリングスポーツ
スポーツツーリングという言葉がある。簡単にいえば、走ることを楽しむためのツーリングとでもいえばいいか。
まあ、本来、ツーリングの基本というか、ベースにあるものは,もともと"走り"ではあるのだが、それはともかく、特に何か目的を掲げたときに、たとえば、それは温泉だったり、うまいものだったり、あるいはキャンプだったり、はたまたダート走りだったりと、まあ、いろいろあるにはある。
でもって以前紹介したKTMのアドベンチャーみたいなバイクだったら、これらすべてを楽しもうと思えば楽しめる。そんな欲ばりなマシンや旅のスタイル−アドベンツーリングってやつだね−もある。
スポーツツーリングとは、そのダート走りのところをワインディング走りにおきかえたものだと考えるとわかりやすいかもしれない。いうまでもなく、バイクの根源的な楽しみのひとつがスポーティなワインディングランと、そこにおけるコーナリングにあることは誰もが認めるものでもあるはず。そのワインディングランを主眼におき、むろん、走りだけではなく、温泉、キャンプ、うまいものとすべて楽しむ、スポーツ心満点の旅のスタイルがスポーツツーリングだというわけだ。
前々回書いたグランツーリスモ的な旅というのは、マシンやフィールドの関係で、だれでも簡単に楽しめるものではないという一面があるけれど、今回提案するこのスポーツツーリングや、さっきも書いたアドベンツーリングは、マシンのチョイスさえ的確なら、だれでも楽しめるものだし、その意味で、今回のスポーツツーリングというスタイルも、ツーリングマップルイチオシのバイク旅のカタチでもある。
つまり単なる林道ツーリングからの脱却がレイドモデルによるアドベンツーリングであるように、スーパースポーツにツナギで、ただワインディングを攻めるだけに峠へ出掛けるところからの脱却。それがスポーツツーリングであり、そのためのバイクが、実はツーリングスポーツと呼ばれるマシンなのだ。
VFRはどうだ
結論からいってしまうと、今回紹介するVFRは、そんなスポーツツーリングのために生まれてきたといってもいいくらいの、ツーリングスポーツらしい、すがすがしい魅力にあふれたマシンだ。
ところで、このツーリングスポーツの先駆者といえば、BMWのRSを忘れるわけにはいかない。もっともRSは、ツーリングスポーツというよりは、スポーツツアラー−ぼくのなかでは、ツーリングスポーツのほうが、スポーツツアラーより軽くコンパクトで、よりスポーツライクといったニュアンスだ−としたほうが、より正確かもしれないが、広義では、ツーリングスポーツの雄として、長らくこのジャンルに君臨してきたモデルだといっても過言ではない。
そして、そのRSのスポーツ性にさらに磨きをかけて登場した、ヨーロピアンツーリングスポーツがエスことR1100Sだった。
VFRは、そのSの正しくライバルになりうる一台として見ても、注目に値する。というのも、これまでの日本車といえば、もっととんがったワインディングオンリーのスーパースポーツ系か、そうでなければ、より大排気量で大パワーの高速カットビメーンのハイスピードツアラーのジャンルでは、ヨーロッパ車の追従を許すところではなかったが、いわば、その両者の良さを合わせもつともいえるツーリングスポーツ(スポーツツアラー)のカテゴリーでは、正直なところ、コレというマシンがなかったからだ。
そんななかで、VFRの前身でもあるVFR750は、ヨーロッパを中心に通好みの一台として人気を博していたマシンで、今回のVFRは、その750をベースに、排気量をアップ。インジェクションやキャタライザーなど、数々の先進的フィーチャーを装備して昨年リリースされたもの。いわば、その実力は折り紙付きといってもいいほどの素性の良さを持っているといってもいいバイクなのだ。
使いきれる特性こそツーリングスポーツの美点
ツーリングスポーツの条件として、まず欠かせないことは、今もいった軽さ&使い切れるパワー。そして、長距離にも対応しうる余裕&装備という二点に集約されるだろう。特に軽さ&使い切れるパワーという点で、よく似てはいるがスポーツツアラーやハイスピードツアラーとその持ち味を異にする最大のところだ。VFRは、その点、何とも秀逸。
パワー的には80ps(国内仕様)と控え目−それでもR1100GSと同等だ−ながら、常用域でのリニアな加速と、スピードのノリはV4ならではのもので、コンパクトかつ軽量なボディ−209kg(乾燥)と、かなり軽い−とも相まって、ツインはおろか、同じ4気筒のマルチでも、160km/hまでの到達スピードなら、VFRは勝るとも劣らない。それでいて、V4らしいトラクタブルな−トルキーとは違う。あくまでもトラクタブルなのだ−特性に富むエンジンは、流す走りでも、低回転からなめらかにバイクを前へ進めてくれるから、スロットル操作にさほど神経質にならなくて済むし、何よりロングランでも疲れない。
インジェクションや前後連動ブレーキも、そうといわれない限り、気にならないくらい、よく調教されていて、ことさらな違和感はない。ホンダ独創のH.MASを仕込んだ前後サスペンションのしなやかな動きや、イグニッションオンと同時に瞬時にモニターされるLCDインジケーターパネルの反応の速さは、いかにもイマ風というか現代的で、スポーツツーリングの何よりもの醍醐味であるスポーツライクな気分を盛り上げてくれる。
また、今年10月から施行された二輪車のエミッション規制に適合した排気ガスクリーンシステムを搭載。スポーツバイクとしては日本車初の規制適合車だということだが、そうした環境問題にも他車に先駆けて対応している点も、VFRらしいところで好感が持てる。
一見地味だが、最新のテクノロジーを満載した次世代のツーリングスポーツとして、いかにもホンダらしい、そして通好みの一台。
確かにこんなバイクで行くツーリングもアリだよなあ。(GS系を中心にしたアドベンツーリングは、かなり普及してきたみたいだし、というわけで、次なるトレンドはこのツーリングスポーツによるスポーツツーリングかも。
となると、ベストチョイスのツートップは、このVFRにBMWのSあたりで、それに続くものとして、ドゥカティのST、トライアンフのスプリントST−これらはスポーツツアラーか!?−がライバルの最右翼。でもって、VTRファィヤーストームや、ヤマハのTRXやスズキのTL-Sなんかも、この際、ツーリングスポーツとして見直されてもいいのかもしれない。となると、モトグッツィのデイトナやドゥカティのSS系なんかも、この範疇に入ってくるのか。まあ、本来これらはVツインスポーツになるんだけれど。ともあれ、これからはスポーツツーリングに注目ってことだ。(もちろんマツモトの動向にも気をつけててね)
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