ツーリングマップル
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2002/05/04 ついに九州へ

崖崩れでルートが寸断され、リルートまでしばしの休憩
 5時過ぎ、周囲の慌しさで目が覚める。テントから顔を出すと、すでにまわりでは撤収ほはじめていた。あわてて飛び起き、雨の中、テントを畳む。ブリーフィングに顔を出すと、GSバカミーズの面々が、全員揃っていてほっとする。

 #28田中正一さんと#45鵜澤さんは、同時にビバーグまで上がってきたので無事はわかっていた。それから、#29八尋さんはぼくたちよりすでに先に、あのとんでもないヒルクライムをクリアして到着していたのだが、#6田中章史さんは、SSを抜けたのが3時過ぎで、#23山口さんは、なんと、ついさっきまでSSの中にいて、立ったまま一夜を明かしたとのこと。もっとも山口さんの場合は、なすすべがなく立ち尽くしていたわけではなく、真夜中に視界も効かず土砂降りの条件の中で無理をしてマシンを壊したり怪我をしたらラリー続行が不可能なると考え、それなら、後に使う体力を温存するためにも、立ったままで休息して、明るくなってから脱出したほうがいいとクレバーに計算していたのだった。山口さんは、走りもいぶし銀だが、そういう状況判断もじつに冷静でいぶし銀だ。

 今朝は、昨晩走ったSSを逆に走るSSが設定されていたが、条件が悪すぎるということでキャンセルになった。普通の林道を辿り、舗装されたバックロードに出てオンコースとなる。長年、四国を舞台に過酷なラリーを演出してきたSSERだけに、四国ステージではしっかりとその洗礼を受けた。まだ、その余韻で朦朧としたまま、高知へ抜け、坂本竜馬ゆかりの桂浜を左手に見ながら南下していく。

 昨晩、泥の中をのた打ち回ったGSとぼくは、ほとんど泥団子のような状態だったので、沿道にコイン洗車場を見つけて、車体と体の泥を落とした。その泥で洗車場のブースが泥沼になった。張り付いていた泥の重さは軽く20kgや30kgはありそうだった。

 それにしても、四国に上陸してからずっと雨で恨めしくなってくる。せっかくの桂浜も、鈍色の海で爽やかさが微塵もない。

 四国のバックロードを辿っていると、遍路の姿を多く見かける。一人、杖をついて地面を見つめながらひたすら歩んでいる者、散策するようなゆっくりとしたペースで雨の中でも楽しそうに歩む夫婦連れ、白装束に菅笠の遍路姿で自転車を漕ぐ若者もいる。いったい、彼らは何を思って遍路の旅に出たのか? どんな体験が、きっかけで四国へ足を向けることになったのか? 街から遠く離れた山奥で黙々と歩く遍路の姿を見かけたりすると、なんだか、人生の悲哀と同時に、それをなんとか克服しようというちっぽけな人間存在の健気さを感じてしまう。

 だが、自分のことを思ってみれば、こうして日本縦断ラリーという過酷な旅に身を投じて、日本の自然を経巡り、様々な体験をしているのも、一種の遍路ではないかという気がする。では、ぼくは、どうしてこの旅に身を投じたのか? そう考えると、そこには明確な答えはみつからない。ひとついえるのは、どんなことでも、身を投じてみなければ、何も始まらないということだ。結局、人間は、どんな困難に遭っても、健気に前に進んでいくしかないのだろう。そこで立ち止まらずに進んでいくからこそ、傍から見たらちっぽけかもしれないけれど、当人にとっては、大きく、得がたいものを手に入れられるのだろう。

 四国は、否応なく自分と向き合わされる土地だ。行けども行けども同じような起伏を描く森が続き、風景のダイナミックな変化が少ない。そんな土地だからこそ、外的なものではなく、内面へと自然に目が向いていくのだろう。

 愛媛の八幡浜から大分の別府に渡るフェリーは13時の出航だった。時間が非常にタイトで、ようやくこの船に間に合った。かなりの数のエントラントがこの船に間に合わず、三崎〜佐賀関の迂回ルートに回ることになった。

 前半、ツーリング的な余裕のあったラリーは、終盤に差し掛かって、俄然、コンペティション、サバイバルの様相を呈してきた。

 別府までは3時間あまりの航海。その間、ほとんどのエントラントが狭い船内の床に横になって熟睡した。

 別府に上陸すると、一路、西へ九重連山のほうに深く分け入っていく。その途中で、林道のSSが用意されていた。昨日泥沼で苦労した身としては、締まったダートは走りやすいことこの上ない。今まででいちばんアグレッシブにGSを走らせることができた。ダートに関しては、GSの走りの特性がだいぶつかめてきた。

 SS終了後のパスチェックで、鵜澤さん、山口さん、それから兵庫から参加の同じR1150GSの#94松浦司さんが一緒になる。山口さんが、どこかオンルート近くの温泉に浸かっていくというので、みんなでそのプランに乗ることにした。

 途中で「筌の口温泉」という看板を見つけ、そちらにハンドルを向ける。素朴な共同浴場で、50人くらい入れそうな湯船に白い硫黄泉が溢れている。客は、地元の人たちのようで、10人あまりが、ゆっくり浸かっている。

 汗と泥で塗り固めたようなウェアを脱ぎ捨てて、お湯に浸かると、気が遠くなるほど気持ち良い。掛け値なしに41年の人生の中でいちばん気持ちのいい温泉だった。四人とも、すっかりお湯の気持ちよさに陶酔して、一時間半ものんびりしてしまった。

 九州のビバーグはオートキャンプ場の一角。九州スタッフは、豪快で明るく、飲み放題のビールや焼酎も用意されていて、最終ステージの前夜祭らしい夜だった。

四国のしっとりとした自然の中でもGSはよく似合う
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