ツーリングマップル
2002/02/28 再びサンドライディングの話
内田一成

これが問題のKX500
この前の日曜日、月一恒例のサンドライディングに行ってきた。メンバーは土曜コラムの松本さんと、ライターのA氏、カメラマンのM氏。A氏とM氏は、かつてBAJA1000を走ったこともあるデザートジャンキーで、ぼくと松本さんが本格的なサンドライディングを楽しんでいることを知って、「砂走りなら、誘ってくれよ!」とジョイントとなったわけ。

そして、当日、いつもの場所に集合したのは、XR400、XR600、KX500、ハスクバーナWR250というなんともファンなマシンとなった。ピックアップトラックにこれらのマシンを積み込んで、オープンフィールドに繰り出すのは、そのままアメリカンオフロードシーンの一コマのようで、ハングリーバレーやグラミス、そしてBAJAといったロケーションが北関東の片田舎の風景にオーバーラップしてくる。

今回、なんといっても圧巻だったのは、KX500だ。2サイクル単気筒500ccエンジンのピュアモトクロッサー。モトクロッサーなんて250だってパワフルすぎて持て余してしまうような代物なのに、その倍の排気量。昔、BAJAでYZ490とかハスクバーナWR430とか、ほんの少し走らせたことがあったが、あの広大なフィールドでもパワーに翻弄されて、1時間と乗りつづけることはできなかった。どう考えても、日本というフィールドでは、このマシンにフィットするシチュエーションがありそうには思えないのだが...。

サンドライディングでは、砂にパワーの大半を食われてしまうので、XR600やモトクロッサーの250といった、普通のオフロードでは持て余してしまうようなマシンが、ちょうどいいパワーバランスになる。ところが、KX500は、リアが半分埋まってしまうような状況でもスタックするどころか、軽々とフロントを浮かして飛び出してしまう。下手なアクセルワークをすると、どこへいってしまうかわからない。路面の締まった波打ち際でワイドオープンすると、恐ろしいばかりの振動で、ただまっすぐ走っているだけなのに、胃袋の中身がせりあがってくる。こいつと比べたら、XR600のなんとマイルドなことか。

すでにモトクロス500ccクラスは大半のマシンが4ストロークになってしまい、海外でもKX500のような2ストローク500ccモトクロッサーは見かけなくなった。そんなある意味貴重なマシンを走らせることができたのは、とてもいい体験だった。ほとんど人間がコントロールできる限界というモンスターは、モーターサイクルの本質をよく教えてくれる。四輪でいえばF1、ロードでいえばGP500マシンのようなもので、スロットルワークに対するパワーの出方が強烈かつセンシティヴだから、少しでもラフにスロットルを開くととんでもないことになる。そのへんがマイルドな特性のマシンに乗っていると、ライダーのミスコントロールをある程度カバーしてくれるので、けっこうルーズな乗り方が身についてしまっていたりする。それを正す意味では、こういうマシンにときどき乗ってみるのもいいかもしれないと思ったわけだ。

そしてハスクバーナのWR250。こいつはかつてKTM250GSとエンデューロキングを争い続けていた名車をその系譜の先に持つ最新モデル。最近のエンデューロマシンは競技形態がモトクロス的なスプリント色が強くなってきたので、KTMもハスクバーナもモトクロッサーに近いテイストになってきたのが残念だが、それでも、タフで、道なき道をどこまでも行く気にさせるエンデューロスピリッツは生きている。なんといっても、100kgそこそこの絶対的な軽さがいい。どんなにフカフカなサンドでも、その上を軽快に滑るように進んでいく。同じサンドでも、XRで走るのとはまったくちがった感覚だ。でも、欲をいえば、サンドではWRの持ち味を最大限発揮するのは難しい。こいつが似合うのは、もっとトリッキーなウッズエンデューロやヘアースクランブルの領域だ。めまぐるしく移り変わるコースコンディションをものともせずに、タフで、だけど軽快に突き進んでいく。WRを走らせていると、ISDEや北米のヘアースクランブルレースの情景が自然に浮かんでくる。

そして、Xといえば、こいつは、まさにデザートレースのために生まれてきたマシンなだけに、これほどサンドが似合うバイクはないという印象が、KXとWRと乗り比べてみて、さらに深まった。ふつうのマシンがスタックするようなフカフカのサンドでも、ぐいぐいトラクションを効かせて前進するし、どんなに轍が錯綜していても、ワイドオープンしてやればフロントが抜重して、いともスムーズに直進する。しかもほとんどのアクションは、スロットルワーク一つですみ、半クラッチを使うようなことはほとんどない。まさに「イージーライディング」だ。サンド、デザートという厳しいシチュエーションで、ライダーは鼻歌混じりにマシンを前進させることができる。...それにしても、このXRが、純日本製マシンとして日本の技術者の手によって生み出されたというのは、今更ながらすごいことだと思う。

今回、少々残念だったのは、体調が今ひとつで、満足のいく走りができなかったこと。いつもより転倒が多くて、リアホイールにごみが巻きついてしまうことも何度かあった。走りにいまいち元気がなくて、しっかりラインを見定めることができなくて、ギャップでフロントから刺さったり、打ち上げられたゴミ溜まりを避けられずに突っ込んだりしてしまったためだ。

翌日、38度5分の熱を出して寝込んでしまったが、それで、当日は、自分で自覚していた以上に体調が悪かったことがわかった。同時に、バイクは人間の感覚を増幅するデバイスなんだと、妙に感心してしまった。

今度は、体調を万全にしてKX500に再挑戦ダ!!


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