ツーリングマップル
2003/04/24 旅する巨人
内田一成

旅の大先輩、宮本常一の一生を追った、胸打つドキュメンタリー
ほんとうは、今日から能登方面へ取材に行く予定だったが、どうも天気が思わしくなく延期した。今回はツーリングマップルではなくて、レイラインの取材。能登一の宮の気多(けた)大社を中心にしたイルカ繋がりの「聖地」と、ちょっと不思議なスポットを巡る予定。

ライアル・ワトソンが、南太平洋のある島にイルカを呼び寄せることを職業としているイルカ専門のシャーマンがいると紹介している。ワトソンはそのシャーマンとしばらく一緒に暮らし、実際に、瞑想してイルカをその島に呼び寄せるのを目撃した。

日本では、「古事記」の中にこんな記述がある。昔、建内宿禰が今の敦賀の海岸にやってきて仮宮を築いた。すると、この地に宿る気比大神が現れて、自分を祭るように言った。建内宿禰は、さっそく気比大神を寿ぎ、お祭りした。すると、沖からイルカの大群が押し寄せて、自ら浜に上がって身を捧げた。

寿ぎとは、祝詞を唱えて祈ることだから、ちょうどワトソンが目撃したシャーマンと同じだ。ちなみに、「敦賀」の地名の由来は、沖からやってきたイルカの大群が浜に打ち上げられて、その浜が「血浦」と呼ばれ、それが訛ったものだという説もある。気比大神を祭る気比大社は、越前一の宮として崇敬を集めているが、その鳥居は、イルカが上陸しただろう気比松原のほうを向いている。

気比大社に対して、能登一の宮である気多大社のほうは、大社自体にイルカにまつわる話は伝わっていないが、能登の突端の鉢ヶ崎と気多大社を結ぶレイライン上には、イルカの呼び寄せを思わせる話が伝わる「聖地」やイルカの骨が大量に出土している遺跡がある。

もしかしたら、能登で、今でもイルカを呼び寄せるシャーマンに出会えるかな....なんて期待を持ってツーリングしてくるつもりだ。

ところで、今回のタイトルの「旅する巨人」とは、日本中を旅して歩き、「昭和の菅江真澄」とも称えられた宮本常一の足跡を追ったノンフィクションのこと。まだ交通機関も満足に発達していない昭和初期の頃から、自分の足でテクテクと寒村を辿り、そこに住む人たちの家に泊まり、古老の話を集めて回った宮本常一。理屈をこねてわかったつもりになるのではなくて、自分の五感でその土地と人を感じることに全力を注いだ宮本常一の心情が痛いほど伝わってくる。

どうせ旅をするなら、この旅の大先輩のように、その土地の自然も文化も味わい尽くさなければもったいないと思う。

「旅する巨人」、天気が悪くて停滞しているときにお薦めの一冊。
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