■ 以前のツーリングマップルには、地図だけでなく、毎年の旬の風景や「おすすめ温泉」、「おすすめ夕陽スポット」など、取材担当者のセンスで選んだ物件を載せたページがあった。現行のものでは、北海道版で、担当の小原さんが精力的に取材した成果をもとに、キャンプ場、宿、道、旅人など、テーマごとに臨場感溢れる写真入りでページが割かれている。
■ 他のエリアでは北海道版のようにページを割くことができないので、同じような体裁にするのは難しいが、来年の版から「おすすめ○○10選」といった形で復活することになった。ぼくの担当する中部北陸版でも、編集部のほうから何かおすすめベスト10を選出するようにとの指示があった。
■ 風景やら温泉、料理といったものは、10個絞り込むのはなかなか難しいし、地図上にコメントしておけば、その方面へ出かける人ならすぐに目をつける。そこで、ぼくがテーマに選んでのは、「ミステリースポット」。といっても、心霊スポットやらパワースポットといった得体の知れないものではなくて、伝説や神話の裏付けがあって、その土地が持つ独特の雰囲気をはっきり感じさせる場所を選ぶことにした。
■ 伝説や神話は、昔の人の妄想や迷信ではなくて、それぞれの土地の自然環境や文化を、誰にでもすぐに理解できるように、「物語」として表現したものだ。ところが、時代が変わって、モノやお金に支配される世の中になると、逆に「物語」を読み解くことのできる人が少なくなり、物語自体が風化してしまった。今では、土地の人でも伝説や神話が意味するものを理解できる人はほとんどいなくなってしまった。
■ だけど、それが、土地の持つ雰囲気をかぎ分ける感覚を人間が失ってしまったことを意味しているわけではない。その場に身を置いてみれば、「何か」を感じることはできる。そんな「何か」を感じることができるからこそ、人は旅に出る。
■ ツーリングマップルのユーザーなら、地図やガイドブックを眺めているだけでは、その土地が持つ雰囲気のほんのわずかなことしかわからないことを身を持って知っているだろう。ツーリングをしていると、例えば、峠を一つ越えただけでがらりと土地の雰囲気が変わり、それぞれの土地で暮らす人たちの人柄も異なることを実感する。そんな違いがどこから生まれるのか、それをじっくり観察して考えると、今度は逆に伝説や神話の意味がわかってくる。
■ と、偉そうなことを言いながら、ぼくもつい最近まで、伝説や神話が物語るものについてはっきりとはわかっていたわけではない。伝説や神話が、個々の土地の雰囲気を表わすメタファーだとはっきりわかったのは、レイラインハンティングを通してだった。
■ 太古に、巨大な聖地を築き、複数の聖地を結んでレイラインを形作った人たちの意識にレイラインハンティングを通じて接して、伝説や神話もレイラインと同様に、土地に秘められた力、雰囲気を他の人に伝えようとした古代の人の智恵だと気づいた。
■ 先週訪ねた若狭では、常神半島に点在する神社を訪ねて、そこに祭られているのが鉱山の神様であることを知った。海を目の前にして、その海のほうを向いているのに、そこに祭られているのは、山の神様。そして、ここには、人魚の肉を食べて不老不死になった八百比丘尼の伝説が伝わっている。
■ 若狭は、弘法大師空海が有力な水銀鉱脈を見出した場所でもあって、じつは、空海は不老不死の薬を作るために水銀を求めていた。そして、若狭に隣り合う丹後には、泰の始皇帝の命を受けて不老不死の薬を探しに日本へ渡ったとされる徐福の伝説が残されている。
■ そんな伝説やら史実を踏まえた上で、若狭という土地に立ち、この場所を見直してみると、目に入る風景が突然息づいてくる。ただ「きれい」だとか、「気持ちがいい」といった胡乱な印象ではなくて、海に迫る人の手が入っていない山を見れば、その地下に眠る土地の力の源泉が透けて見えてくる。恐ろしいほど澄んだ水が満ちる入り江の風景には、遥か大陸から渡ってきた古代の人たちの姿や、それを待ち受ける土地の娘の姿が浮かんでくる....。
■ 伝説や神話が、その土地の雰囲気をはっきり物語っているようなポイント。そこに立って風景を見やると、伝説や神話の光景が幻視できるような場所。それをぼくはあえて「ミステリースポット」と呼ぶことにした。2003年版のツーリングマップルをめくりながら、そんなおすめのミステリースポットを慎重に検討している。果たしてそれがどこなのかは、2004年版のツーリングマップルをお楽しみに....。
*先週紹介した湖上館PAMCOの館主田辺さんが、宿から見た満月浮かぶ水月湖の風景をサイトに載せている。月に一度、満月を愛でに出かけてみるのもいい....。
http://www.pamco-net.com/diary/index.html
―レイラインハンティング―
http://www.ley-line.net/index.html
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