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「巨椋池」とは?~干拓によって失われた日本最大の池~ 写真:123RF

まっぷるトラベルガイド編集部

更新日:2022年3月17日

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「巨椋池」とは?~干拓によって失われた日本最大の池~

現在の宇治市、久世郡久御山町(くせぐんくみやまちょう)、京都市伏見区にはかつて巨椋池(おぐらいけ)がありました。
自然豊かな景勝地として多くの人々に愛されましたが、昭和初期に消失します。

巨椋池とは

巨椋池は山城盆地の中央部、現在の巨椋インターチェンジ付近に存在しました。平均水深は1m前後と深くはないものの、周囲は約16㎞、面積はおよそ794haと東京ドーム170個分に相当する広大な池でした。

東からは琵琶湖を水源とする宇治川、南からは木津川、北からは桂川が巨椋池に合流し、そこから1本の淀川となって大阪湾へと流れていきます。清涼な水が満々とたたえられ、多くの水鳥や渡り鳥が飛来するなど、古くから風光明媚な景勝地として知られました。

ハスの名所としても名高く、7~8月になると水面には可憐な花が咲き誇り、「香世界に入るがごとし」と称されるほどでした。

平安時代には、藤原氏をはじめとする公家たちが近辺に別荘を建て、詩や音楽に興じました。また漁業も盛んで、明治時代中ごろの沿岸の漁業者は1万5000戸にのぼったといいます。

巨椋池のエリアで多発していた水害

その一方、巨椋池の位置するエリアは低湿地であったため、過去には幾度となく水害に見舞われてきました。奈良時代から少なくとも100回以上の洪水が起こったとされ、近代に入ってからも1871~1907年の間に8回も大規模な水害が発生しています。

巨椋池の治水対策

明治期に本格的な治水対策がとられるようになり、1906年には宇治川の付け替えが行われ、巨椋池は川と完全に切り離されました

ちなみに、1896年に奈良鉄道(現在のJR奈良線)の桃山〜玉水間が開業した際、巨椋池があったため線路は迂回して設置されました。

巨椋池の水質の悪化と周辺への影響

その後の巨椋池を待ち受けていたのは悲惨な運命でした。

水の循環が失われた結果、池の底に汚泥が堆積するなど水質の悪化が見られるようになります。その影響から蚊が大量に発生し、周辺の村ではマラリアが流行。漁獲量も減少し、周辺の農作物にも被害がおよびました。

かつて平安貴族に愛された巨椋池は「無用有害に近い存在」という扱いを受けるようになったのです。

巨椋池の干拓事業

やがて周辺住民から巨椋池を農地に転換してほしいという要望が出て、1933年に国内初となる国営の干拓事業が開始されました。池の水を汲み出す排水機場の設置など、当時の土木技術の粋を結集した事業は8年後の1941年に完了。634haが新たな干拓地として生まれ変わりました

巨椋池付近の現在の様子

現在、巨椋池のあった場所は緑豊かな田園地帯が広がり、向島ニュータウンなどの住宅地としても利用されています。

ちなみに、日本で一番大きい池(慣例で水深おおむね5m未満)は鳥取県の湖山池(こやまいけ)で、その面積は約690ha。もし干拓事業がなければ、京都には今でも日本一広い池が存在したのです。

京都と伏見の物流を担った高瀬舟

京都の中心部から伏見まで流れる高瀬川は、物資を輸送するためにつくられました。開削を行ったのは豪商・角倉了以(すみのくらりょうい)で、1611年にはじまった工事は3年後に完了。総工費の約7万5000両(現在の価値で約75億円)は、すべて角倉了以が負担したといいます。なお、荷物の上げ下ろしや方向転換をする場所 を「船入」といい、かつては9カ所に存在しました。

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・琵琶湖疏水の秘密/洛中と洛外を隔てるおどい
・観光のメッカ東山の地形(地獄の入り口六道珍皇寺)
・失われた巨椋池/天橋立はなぜあのような地形になったのか
・舞鶴が重要港湾となった地形的な秘密
・霧のまち亀岡(亀岡盆地)

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Part.2 京都を駆ける充実の交通網

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・若狭と京都を結ぶ「鯖街道」
・日本初の一般営業用電車が通った京都市電
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・梅小路
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・古代日本を支えた渡来人と京都の関係
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・幕末の騒乱の舞台となった京都
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