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集成館が築いた近代産業の礎~製鉄、造船、紡績など島津斉彬が推進した事業~

まっぷるトラベルガイド編集部

更新日:2022年5月19日

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集成館が築いた近代産業の礎~製鉄、造船、紡績など島津斉彬が推進した事業~

薩摩藩主・島津斉彬のもと、地産の原料と在来技術、西欧の知識を融合し、日本産業の近代化を牽引。
博物館「尚古集成館」にはその歴史が息づいています。

集成館とは

江戸時代、支配下の琉球王国を通じて中国と交易を行ってきた薩摩藩。ほかの地域に先駆けて海外の物資や情報が流入するとともに、1840年代から西欧列強の脅威にさらされました。

危機感を強めた11代藩主・島津斉彬(なりあきら)が推進したのが富国強兵・殖産興業政策「集成館事業」です。島津家別邸「仙巌園(せんがんえん)」(鹿児島市)の敷地で竹林を切り開き、製鉄、造船、ガラス、紡績、食品加工、印刷など、多分野で近代化事業を推進。最盛期には約1200人が働いていたといわれています。

島津斉彬の製鉄事業への注力

力を注いだのは鉄製大砲を鋳造する製鉄事業。燃料の炎をアーチ状の天井に反射させ、その熱で鉄を溶かし、鋳型に流し込む反射炉を、オランダの本をたよりに建設しました。土台には約50万年前の吉野火砕流(よしのかさいりゅう)でできた溶結凝灰岩(ようけつぎょうかいがん)「たんたど石」を使用(諸説あり)。城の石垣づくりなどで培われた、在来の石工(いしく)技術を駆使して精巧に組み上げました。空気を大量に取り込む煙突には、薩摩焼の技術で焼成した耐火レンガを使いました。

反射炉に銑鉄(せんてつ)を供給する溶鉱炉もオランダの本を参考に1854(安政元)年、日本初の洋式高炉を建設。鋳造した砲身に穴を開ける鑽開台(さんかいだい)の動力は水力で、仙巌園の裏山に水路を張り巡らし、水車の回転を利用して鋼製のきりでくり抜きました。反射炉は一度失敗したものの、1857(安政4)年に2号炉が完成し、大砲製造に成功しました。

原料は地元の砂鉄。鹿児島は九州砂鉄鉱業発祥の地である種子島(たねがしま)、屋久島(やくしま)のほか、古くから砂鉄採取が盛んで、鹿児島湾、東シナ海、志布志(しぶし)湾の海岸線に点在する鉱床から採取した良質な砂鉄を利用できました。

島津斉彬の製鉄事業への注力

指宿(いぶすき)から頴娃の海岸線や志布志地域は砂鉄採取が盛んで、集成館の高炉製鉄の原料に使用されました。

集成館は島津斉彬の死後一時衰退するも再興

蒸気船やガス灯、薩摩切子(さつまきりこ)など、さまざまな近代技術を開発した集成館事業は、1858(安政5)年の島津斉彬の死後、縮小を余儀なくされました。

1863(文久3)年の薩英戦争では集成館で製造した大砲や砲台により、イギリス艦隊と互角に戦いましたが、西欧列強の力を目の当たりにした薩摩藩は、近代工業の必要性を改めて痛感。砲撃を受けて主要施設が焼失した集成館の再興に着手しました。

集成館で稼働していた近代的な工場の数々

オランダやイギリスから蒸気機関や鉄工機械などを技術移転し、1865(慶応元)年に機械工場(現・尚古(しょうこ)集成館の建物)を完成。戊辰戦争で威力を発揮した軽量小型の野戦砲「四斤山砲(よんきんさんぽう)」など、各種兵器を製造しました。

ほかに紡績所や製薬所、製糖所など26の工場を備え、近代化が進められました。

工場は奥行き約13m、長さ約77mの平屋建てで、外壁は不燃化を目的に、断熱性にすぐれた溶結凝灰岩「小野石(おのいし)」を使用。薩摩の石工の技術を生かした精密な石組みで、「ストーンホーム」と呼ばれました。太い梁や瓦屋根などの在来技術と洋風の外観が融合し、幕末・明治と時代の先端を駆け抜けた薩摩を象徴する建物のひとつです。

集成館閉鎖後は博物館として復活

明治以降は所有者が転々とし、産業界発展のスピードに対応できず、1915(大正4)年に閉鎖されました。

島津家は、唯一残された機械工場を博物館として活用しようと、全国各地の刑務所を設計した司法省の技師・山下啓次郎(やましたけいじろう)に改築の設計・監理を依頼。1920(大正9)年に完成し、1923(大正12)年に博物館「尚古集成館」として開館しました。

2015(平成27)年、「明治日本の産業革命遺産」の構成資産のひとつとして世界文化遺産に登録されました。島津家伝来の資料を中心に約1万点を収蔵・展示し、島津家の歴史や近代化事業などを紹介しています。

尚古集成館

住所
鹿児島県鹿児島市吉野町9698-1
交通
JR鹿児島中央駅から鹿児島交通まち巡りバスで34分、仙巌園前下車すぐ
料金
入館料(名勝仙巌園と共通)=大人1000円、小・中学生500円/(障がい者手帳持参で県外在住者は本人と介護者1名入館料半額、県内在住者は無料、仙巌園で受付)

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Part.1 地図で読み解く鹿児島の大地

・鹿児島を筆頭に九州になぜ火山が多く一直線に並ぶ?
・大正時代に驚くべき大噴火!桜島の形成とメカニズム
・アンモナイトやクビナガリュウなど恐竜時代の化石が獅子島で続々!
・屋久島は巨大な花崗岩の塊を付加体が取り巻いている!
・超巨大火山「喜界カルデラ」に知られざる溶岩ドームが存在!
・薩摩富士・開聞岳や池田湖ほか薩摩半島南東部の火山群の歴史
・テーチ木と奄美の赤黄色土が生む日本を代表する絹織物・大島紬

…などなど鹿児島の自然のポイントを解説。

Part.2 鹿児島を駆け抜ける充実の鉄道網

・明治時代開通の鹿児島線 鹿児島~国分に始まる鉄道史
・新大阪からの直通も走る!九州新幹線鹿児島ルートの全貌
・国内屈指の大幹線として君臨・東京直通も走った鹿児島本線
・日本最長の寝台特急も走った九州東部を縦貫する日豊本線
・「おれんじ食堂」の投入など奮闘する肥薩おれんじ鉄道
・開聞岳ほか薩南の絶景を満喫!JR最南端駅もある指宿枕崎線
・県内唯一の私鉄も今や幻に・鹿児島交通枕崎線&知覧線

…などなど鹿児島の鉄道事情を解説。

Part.3 鹿児島で動いた歴史の瞬間

・鹿児島の古代史総論
・国内最古級の大規模な定住集落跡・上野原遺跡とは?
・政府と薩摩の間に起った軍事的衝突
・日本の南の玄関口・鹿児島に鉄砲やキリスト教が伝来
・九州統一を目指す島津氏VS九州攻めに乗り出した豊臣秀吉
・江戸~薩摩間約1700㎞!最も遠方からの参勤交代
・鹿児島城の築城と薩摩藩独自の外城制度
・薩英戦争が薩摩藩にもたらした近代化と倒幕への方針転換
・戦後アメリカの統治下となった奄美群島が日本復帰

…などなど鹿児島の歴史を徹底解説。

Part.4 鹿児島で育まれた産業や文化

・近代産業の礎を築いた集成館
・日本の金産出量の約9割を占める菱刈鉱山がすごい!
・かつては海軍の航空基地・鹿児島空港開港の歴史
・志布志湾に浮かぶ人工島にある志布志国家石油備蓄基地とは?
・鹿児島臨海工業地帯の造成の変遷をたどる
・ロケット打ち上げ施設は国内唯一・日本で宇宙に一番近い県
・古代より栄えた坊津の港に代わり枕崎が遠洋漁業の拠点に!
・本土が半分がやせたシラス台地なのになぜ全国有数の農業県になれた?

…などなど鹿児島の産業と文化を丁寧に解説。

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