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鴻池新田:豪商・鴻池家による開発

鴻池の名称は、開拓を主導した豪商・鴻池家からつけられました。鴻池家は尼子家(あまごけ)の忠臣・山中鹿介(やまなかしかのすけ)の子孫ともいわれています。もともとは伊丹(現・兵庫県伊丹市)で酒造業を営んでいましたが、1619年に大坂へと進出。海運業と両替業にも成功し、大坂随一の豪商に成長しました。一説によると、財の規模は江戸時代の商人のなかでも最大級だったといいます。

鴻池新田は、町人請負新田のひとつ

元禄年間(1688~1704年)は町人の新田開発が奨励された時期でもあります。当時の幕府は財政難に見舞われており、大規模開墾をする余力はありませんでした。そこで有力町人に開墾を請け負わせたのです。

開墾後、鴻池家には農民から小作料を徴収する権利を与え、それを幕府への年貢として納めさせました。こうした町人出資の開墾事業を「町人請負新田」といいます。鴻池家はこの事業に着目し、新開池の開発を請け負ったのです。

鴻池新田完成時の様子

鴻池新田完成時の様子
総面積は約158haで、この広さは旧大和川沿いの新田のなかでも最大の規模

広大な面積を誇る新田は1706年に完成し、米のほかに木綿やレンコンの栽培も行われました。収穫高は平均3万石にもなったとされ、当初の石高予想の10倍であったということです。最初の入植者は8軒ほどで、2回目に10数軒が入植して、人口は増えていきました。現在も、入植者の子孫が地域に居住しているといいます。

また、新田を管理運営するために鴻池新田会所も建てられます。敷地面積は約1万662㎡で、米倉や蔵屋敷などの施設が設けられ、田畑の管理や水路、道路の維持はもちろん、農民からの税徴収と幕府への年貢の支払い、地域の騒動の裁定や宗門改帳での戸籍管理も行われる、地域の役所としての機能も有していたのです。

鴻池新田:明治維新から現在

けれども、明治維新後、廃藩置県で鴻池家から大名への貸付金は残らず消滅します。幕末時には76藩との取引があったとされるので、損失は膨大なものとなりました。それでも、1877年に第十三国立銀行の開設によって鴻池家は財閥となり、1897年には国立銀行から普通銀行に転換して鴻池銀行となりました。

1933年には三十四銀行、山口銀行と合併し、三和銀行(現・三菱UFJ銀行)が誕生します。
第11代当主である幸方(ゆきかた)は日本生命の初代社長を務めるなどして財界の重鎮となり、財閥の持株会社として1921年に鴻池合名会社を設立。終戦後の財閥解体で鴻池新田の農地は没収されましたが、1976年には鴻池新田会所東側の敷地を開発し、ショッピングセンターを建設します。2001年に鴻池合資会社と社名を変更しました。

なお、鴻池新田会所敷地は1976年に国の史跡となり、建物、棟札、御札が1980年に国の重要文化財に指定されています。現在も残る鴻池新田会所の入り口跡は、江戸時代中期以来の古建築群と庭園が広がり、鴻池家から寄贈された民具類が展示されています。

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