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成田線や京成線と行商人~かつての名残が残るホーム~ 写真:123RF

まっぷるトラベルガイド編集部

更新日:2021年12月7日

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成田線や京成線と行商人~かつての名残が残るホーム~

かつて、とれたて野菜などが詰まったカゴを担ぎ、東京行き列車に乗り込んだ行商人。
そんな昭和の名残が、成田線や京成線の駅ホームにあります。

成田線や京成線に残る行商台

JR成田線や京成電鉄には、ホームに荷物台が残された駅があります。成田線の我孫子(あびこ)支線では湖北、布佐(ふさ)、小林、安食(あじき)駅。京成本線では京成臼井、京成佐倉、京成成田駅など。いずれも上りホームに限られています。

これらは、風呂敷包みの大きなカゴを担ぎ、東京に向け列車で行商を行っていた時代に設けられた、行商人たちのカゴを載せる台です。

成田線の我孫子~成田間(我孫子支線)路線図

成田線の我孫子~成田間(我孫子支線)路線図

成田線の我孫子支線(我孫子~成田間)には、湖北、布佐、小林、安食駅などに、行商人が利用する荷物台が現存(2019年9月現在)。

沿線は水運にも恵まれ、かねてより農業が盛んな地域です。

成田線や京成線で見られた多くの行商人

昭和の時代、都内では行商(野菜行商)の姿をよく見かけました。姉さんかぶりに着物姿のおばちゃんが、採れたての野菜や卵、米などを大きなカゴに詰め、千葉県や茨城県などからやってきたものですが、そうした姿も近年、ほとんど見られなくなりました。

諸説ありますが、東京への行商は千葉県行徳地域の男性が1908(明治41)年に始めたのが発祥といわれ、当時は徒歩で売り歩いていました。鉄道が開通するにしたがって、大正時代から列車による行商が行われるようになり、京成線では海神(かいじん)、幕張、津田沼、谷津(やつ)地域、成田線では大森町(現・印西市)、湖北地域などから利用が始まり、この頃から女性による行商も盛んになったのです。

成田線・京成線の行商人の急増

のちの第一次世界大戦、昭和恐慌では農村不況に陥り、いっぽうで東京では都市化が加速。食料需要が急増したことなどから、農家は行商に活路を見い出し大当たり。収入が格段に増え、行商人も急増。駅や列車は行商人でいっぱいになりました。

しかし、列車やホームにあふれんばかりの行商人は通勤客には迷惑で、京成線では1935(昭和10)年から行商専用の「嵩高(かさだか)荷物専用列車」の運行を開始。京成線よりも圧倒的に行商人が多い鉄道省(現・JR)では、同年に「行商人取締規定」が制定され、荷物の大きさや重量を制限。日暮里駅での乗り換えを禁止し上野駅に。さらに、朝のラッシュ時間帯の乗り換えを規制し、行商人が一定時間、上野駅で足止めされた時代もありました。

のちにガソリン統制によるトラック輸送力の低下もあり、行商人は常磐線、成田線、京成線のみならず、房総東線、房総西線、総武本線(千葉以東)を使ってやってくるようになりました。

成田線・京成線の行商人の減少

隆盛をきわめた行商でしたが、戦後は昭和30年頃をピークに減少へ転じます。流通機構の整備、女性の副業の多様化、都内の住宅事情の変化などが原因だといわれています。

京成線では嵩高荷物専用列車を1982(昭和57)年3月に廃止。以降は、朝の上り列車の最後部1両を専用車に当てた行商専用車両を運行してきましたが、これも2013(平成25)年3月に廃止されました。

成田線と京成線では現役の行商人が健在!

2019年現在、行商人は成田線、京成線にまだ数名が健在といわれています。驚くなかれ、冒頭の荷物台の一部は現役なのです。

総重量80㎏という重い荷物を担ぐのは重労働で、高齢化も進み後継者もいません。「おばちゃんの野菜がおいしい」「みんなが待っていてくれる」そんな期待に応えるため、わずかに残る列車での行商。やがては消えてしまう存在かもしれませんが、多くの行商人の苦楽がにじんだホームの荷物台を眺めると、ただ畏敬の念を抱くばかりです。

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