フリーワード検索

ジャンルから探す

トップ > カルチャー >  関東 > 神奈川県 >

田名向原遺跡(相模原)は日本最古の住居状遺構~神奈川県の歴史~ 画像:PIXTA

まっぷるトラベルガイド編集部

更新日:2021年11月10日

この記事をシェアしよう!

田名向原遺跡(相模原)は日本最古の住居状遺構~神奈川県の歴史~

相模原市にある田名向原遺跡は、学術的にどのような価値があるのでしょうか。
また、そこで古代の人々のどのような生活が浮き彫りになるのか、確認していきましょう。

田名向原遺跡は人類定住化の歴史を語る国内最古の住居状遺構

相模原市中央区にある田名向原遺跡は、今から約2万~1万8000年前(後期旧石器時代末)の遺跡です。

一般的に、日本列島で定住生活が始まるのは縄文時代(1万8000年前~前4世紀)とされており、それまでは移動しながら狩猟採集生活を営んでいた人々が、石器時代の終わりから縄文時代にかけて、徐々に定住生活へと移行していきました。

国内では1946(昭和21)年に岩宿(いわじゅく)遺跡(群馬県みどり市)が発見されて以来、おもに関東平野を中心に旧石器時代の遺跡が発見されるようになりましたが、住居跡はまだ発見されておらず、田名向原遺跡の住居状遺構(住居跡と考えられる遺構)は国内最古のものと考えられています。

すなわち、田名向原遺跡は、日本列島に暮らした古代の人々が移動生活から定住生活に切り替わる過渡期を象徴するような遺跡なのです。

田名向原遺跡の形状と出土した石器からみる役割

田名向原遺跡の住居状遺構は、直径約10mの円形をなしています。円形の外周を270点ほどの丸い礫で環状に囲っており、その範囲内の平面形が居住スペースであったことがうかがえます。この環に沿って10基、円形の内部に2基と合計12基の柱穴があり、この柱穴は縄文時代の竪穴式住居ほど深く掘り込まれていないものの、かなり丈夫なつくりであったと推測されます。

なお、この居住スペース内には2カ所の炉跡(焚き火跡)が確認されています。

また、住居状遺構からは多数の石器も出土。槍先に使用した尖頭器(せんとうき)やナイフ形石器といった狩猟具が多く、加工具(スクレイパーなど)も多数見つかっていることから、石材を石器に加工していた工房的な役割も担っていたのではないかと推測されます。

材質は黒曜石がもっとも多く、産地の長野県蓼科(たてしな)地方や静岡県伊豆地方など遠隔地 との交流があったことを示唆しています。

田名向原遺跡の形状と出土した石器からみる役割
画像:PIXTA

「史跡田名向原遺跡公園」にある後期旧石器時代の住居状遺構(復元)。直径10mほどの外周を巡らした範囲で2か所の炉跡や12本の柱穴の跡が発見された。この地下1.5mに本物の遺構が眠っている

田名向原遺跡の立地

ところで、田名向原遺跡は、相模川河岸の標高約56mの河岸段丘(陽原面(みなはらめん))上にあります。これは、段丘面が離水して間もなく、当地へ人々が集まってきたことを示しています。往時の人々は、きっと相模川を遡上してくるサケやマスなどの魚を捕獲していたに違いありません。

ここは、気候が変動して自然環境が変化するなか、人々が低地へ進出していった時代の先駆的な場所なのです。

田名向原遺跡の周辺

田名向原遺跡の周辺
国土地理院色別標高図を元に作成

遺跡は相模川がつくった段丘上にあるのがわかります。「田名しおだ区画整理事業」にともなう発掘調査は3地区で行われ、全体を「田名塩田遺跡群」といいます。そのなかで見つかった後期旧石器時代の住居状遺構は、国の史跡指定を受ける際、小字名である「向原」をとり「田名向原遺跡」と命名されました。

また当地には、旧石器だけでなく縄文、古墳、奈良、平安から中世までの遺跡が分布しています。

田名向原遺跡は世界最大規模の住居状遺構でもある

後期旧石器時代の住居状遺構は、ロシアやヨーロッパでも多数確認されています。しかし、田名向原遺跡のように直径が10m級の遺構は世界的に例がありません。つまり田名向原遺跡は、国内最古にして、世界的に見ても最大規模の住居状遺構なのです。

田名向原遺跡は世界最大規模の住居状遺構でもある
画像:PIXTA

谷原古墳群は、当麻谷原田名塩田にかけた河岸段丘上につくられた相模川上流部最大の古墳群。古代時代後期~終末期につくられた14基の円墳が確認されている。そのうち小型の12号墳(写真)は「史跡田名向原遺跡公園」に移築・復元されている

『神奈川のトリセツ』好評発売中!

日本の各県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。
第1弾は神奈川県の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!

【注目1】神奈川の地質・地形を徹底分析

巨大カルデラを有する箱根火山のすごさ、三浦半島の最南端&城ケ島でわかる日本列島の魅力、かつて火山島だった丹沢山地、江の島ができる過程、天然の城塞都市・鎌倉の全貌など、神奈川のダイナミックな自然の成り立ちを解説。

【注目2】古代から中世、江戸時代、近現代の神奈川の歴史を一望

相模原にあった日本最古の住居遺跡、なぜ源頼朝は鎌倉に幕府を置いたのか、難攻不落を誇った小田原城と太閤一夜城の攻防、寒村に過ぎなかった横浜が開港の地になった理由、廃藩置県後4県あった神奈川はどうやってまとまったのかなど、神奈川の歴史のポイントがわかる。

【注目3】神奈川を駆け巡る鉄道網をはじめ、神奈川で育まれた文化や産業を紹介

箱根登山鉄道の実力をはじめ、幻の川崎市営地下鉄、小田急・京急・東急他私鉄各線のエピソード、廃線後も現存する横浜市電のトンネルなど、神奈川を走る鉄道網の秘密に迫る。また横須賀に造船所が作られ軍港になった理由や東京湾最大の自然島「猿島」に残る軍事遺産、相模川水系に築かれた3つのダムなど、神奈川を支える文化・産業のパワーを探る。

『神奈川のトリセツ』を購入するならこちら

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!

エリア

トップ > カルチャー >  関東 > 神奈川県 >

この記事に関連するタグ