フリーワード検索

トップ > カルチャー >  関東 > 神奈川県 >

二ヶ領用水は川崎市内を潤す南関東最古の農業用水路~神奈川の産業・文化~ 写真:123RF

まっぷるトラベルガイド編集部

更新日:2021年11月10日

この記事をシェアしよう!

二ヶ領用水は川崎市内を潤す南関東最古の農業用水路~神奈川の産業・文化~

農業用水、工業用水、環境用水として400年以上にわたって流域を潤してきた二ヶ領用水。
川崎を縦貫する用水路の歴史と今を見ていきましょう。

二ヶ領用水とは?

多摩川の水を上河 原堰(かみかわらぜき)、宿河原堰(しゅくかわらぜき)の2カ所(いずれも川崎市)から取水し、JR南武線に沿うように川崎市幸区へ至る二ヶ領用水(にかりょうようすい)。これは完成から400年超、全長約32㎞に及ぶ南関東地区最古にして多摩川流域最大の農業用水路で、かつての稲毛領と川崎領を通ることから「二ヶ領」用水と呼ばれます。

上河原堰からの流れを本川とし、宿河原堀と呼ばれる宿河原堰からの流れと落合(JR南武線・久地駅付近)で合流。本川は久地分量樋(くじぶんりょうひ) (現・久地円筒分水(くじえんとうぶんすい))で川崎堀(新川)、久地溝口二子堀(久地村溝口村組合用水)、六ヶ村堀(川辺六ヶ村組合用水)、根方堀(根方拾三ヶ村組合用水)に分流し、江戸期には周辺の60もの村々へ農業用水を供給しました。

二ヶ領用水となる用水開削工事のはじまり

往時、多摩川に接していながら水利事情が不便だった川崎・稲毛領の村々にとって、用水路開削は必須の課題でした。開削のための測量は、関ヶ原合戦前の1597(慶長2)年、川崎領に始まります。

徳川家康から開削を命じられたのは、小泉次大夫吉次(こいずみじだゆうよしつぐ)。彼は、12世紀に駿河国(するがのくに)(静岡県)において、すぐれた水利土木技術を用いて地域開拓に大きく貢献した植松家を先祖とする(出自には諸説あり)、いわば治水事業の専門家でした。家康に召し抱えられた吉次は、江戸開発における治水事業、新田開発の重要性を家康に進言したそうです。

二ヶ領用水エリアでは、遺構の調査から、より古い時代に用水路がある程度発達していたと推測されており、吉次は用水開削工事において、それらの用水路や1590(天正18)年の大洪水によって流路を南から北へ変えていた多摩川の旧河道敷をうまく統合、利用したと考えられています。

二ヶ領用水は時代とともに整備される

1611(慶長16)年に竣工した二ヶ領用水は、時代とともに整備されてきました。小泉次太夫吉次と並び、用水路発展に欠かせない人物が田中休愚(たなかきゅうぐ)です。

完成から100余年、用水周辺の灌かん漑がい面積は約2000ヘクタールに及びましたが、いっぽうで用水は、各所で経年劣化が目立つようになりました。そこで、1724(享保9)年から休愚による大規模な改修工事が行われました。久地分量樋で、本川が川崎堀ほか4つに分水されたのはこの改修工事によるものです。それぞれの堀からは、さらに多くの支流が分かれ、用水は流域を大いに潤しました。

二ヶ領用水の取水口

上河原堰
JR南武線・中野島駅の北に位置する。かつて中野島堰と呼ばれていた。

宿河原堰
近くに「二ヶ領せせらぎ館」があり用水路資料の展示などをしている。

二ヶ領用水(本川)
上河原堰から取水された本川は府中街道に沿うように流れ、中野島、登戸地域などの農地に水を供給している。

落合
本川と宿河原堀が合流する位置。久地の分水地点まで一本の流れとなる。

久地円筒分水
ここで用水を4つの堀に分水している。

宿河原堀
南武線の登戸~宿河原駅間で宿河原堀は南武線のガード下をくぐる。

二ヶ領用水の改良事業

大正末期、川崎市は沿岸部の工業地帯埋立事業を開始。この工業化(工業用水の確保)や水田の増加から二ヶ領用水の水不足が深刻化します。そのため、上河原堰・宿河原堰のコンクリート化などを含む「二ヶ領用水改良事業」が1936(昭和11)年に始まり、日中戦争で難航したものの1949(昭和24)年に工事が完了しました。

二ヶ領用水は工業用水や環境用水としての役目もはたす

同時期、工業地帯では地下水を汲み上げて利用していましたが、その枯渇から新たな水源に二ヶ領用水をあてました。平間浄水場が完成し、1939(昭和14)年には鹿島田で取水を開始したのです(これが日本初の公営工業用水道)。同浄水場は1974(昭和49)年に取水を停止し、生田浄水場がその役割を受け継ぎ工業の発展を支えました。

かつて農村を潤した二ヶ領用水は、現在も川崎北部で農業用水として利用されているほか、工業用水や周辺住民の憩いの場となる環境用水として親しまれています。

『神奈川のトリセツ』好評発売中!

日本の各県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。
第1弾は神奈川県の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!

【注目1】神奈川の地質・地形を徹底分析

巨大カルデラを有する箱根火山のすごさ、三浦半島の最南端&城ケ島でわかる日本列島の魅力、かつて火山島だった丹沢山地、江の島ができる過程、天然の城塞都市・鎌倉の全貌など、神奈川のダイナミックな自然の成り立ちを解説。

【注目2】古代から中世、江戸時代、近現代の神奈川の歴史を一望

相模原にあった日本最古の住居遺跡、なぜ源頼朝は鎌倉に幕府を置いたのか、難攻不落を誇った小田原城と太閤一夜城の攻防、寒村に過ぎなかった横浜が開港の地になった理由、廃藩置県後4県あった神奈川はどうやってまとまったのかなど、神奈川の歴史のポイントがわかる。

【注目3】神奈川を駆け巡る鉄道網をはじめ、神奈川で育まれた文化や産業を紹介

箱根登山鉄道の実力をはじめ、幻の川崎市営地下鉄、小田急・京急・東急他私鉄各線のエピソード、廃線後も現存する横浜市電のトンネルなど、神奈川を走る鉄道網の秘密に迫る。また横須賀に造船所が作られ軍港になった理由や東京湾最大の自然島「猿島」に残る軍事遺産、相模川水系に築かれた3つのダムなど、神奈川を支える文化・産業のパワーを探る。

『神奈川のトリセツ』を購入するならこちら

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!

エリア

トップ > カルチャー >  関東 > 神奈川県 >

この記事に関連するタグ