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乗り換え続きで疲れた体に糖分チャージ


 

4本目 東北本線
郡山駅  16:30発

普通列車(新白河行)

新白河駅 17:09着

 

郡山駅から新幹線に乗れば、1時間もせずに仙台まで行けると思うと少し惜しい気もするけれど、今回のテーマは日帰り旅。来たときとは違うルートを辿って、ここから南へ折り返します。
旅の終着地となる上野駅までは東北本線を乗り継ぎ。まず郡山駅を16時30分に発車、終点の新白河駅までは41.3キロ。約40分の乗車です。
入線を待つ間、ホームの足元には薄く残る「あがの4号 自由席」の文字。かつて新潟と上野を郡山経由で結んでいた急行列車の名残に、この駅の歴史を感じました。



日が傾いて、西日がキラキラと田んぼを照らすのを見ながら、郡山駅の売店で買った福島名物「柏屋の薄皮饅頭」をいただきます。2個入りの少量パックがあり、こしあんと粒あんの2種類を購入。食べ比べを楽しみました。甘いものを食べると、疲れが和らぐ気がします。

 

5本目 東北本線
新白河駅 17:14発

普通列車(黒磯行)

黒磯駅  17:37着

 

17時09分、新白河駅到着。乗り換え時間はわずか5分、着いたホームの前方に停まっている17時14分発の黒磯行きに乗り換えます。夕方で乗客数が増える時間帯、席を確保しようとホームを足早に歩く人の波で忙しない雰囲気。要領を得ない筆者は、置いて行かれないよう、人の流れに付いて行くのに必死でした。

 

6本目 東北本線
黒磯駅  17:43発

普通列車(宇都宮行)

宇都宮駅 18:35着

 



新白河から22.1キロ、23分間の乗車で、黒磯駅17時37分着。大勢の乗り継ぎ客とともに、今度は跨線橋を小走りに渡って、17時43分発の宇都宮行きに乗り換え。この先の小一時間はロングシートに座って移動します。
黒磯から宇都宮までは53.8キロ、乗車時間は52分。一駅ごとに乗客が増え、車窓は夜景にかわりました。短い時間で乗り換えを繰り返していると、もはや「旅」というより、普段の通勤の延長のよう。旅の高揚感が少し薄らいで、日常が戻ってきたような寂しさを感じます。

旅の締めくくりは2階建てグリーン車で駅弁を満喫

18時35分、宇都宮駅着。5分後に発車する快速は見送って、その次の普通列車に乗り換えることにしました。それなら発車まで25分間あるので、駅弁屋さんをチェックすることができます。
駅弁、まだ残ってるかな……。駅構内に出店する「松廼家(まつのや)」さんの営業時間は7時30分~19時30分。急いで駅弁屋さんへ向かったけれど、待っていたのは「完売」の札でした。あぁ、残念。今回は事前予約を見送っていたので、完売とあっては仕方ありません。


一説に“駅弁発祥の地”といわれる宇都宮駅。松廼家には、JR東日本の「駅弁味の陣2020」で「駅弁副将軍」(準グランプリ)を受賞した『きぶなカレー ブラックシーフード』や、ニジマスの改良種を使った『プレミアム ヤシオマス弁当』など、気になる名物駅弁がたくさんあるので、また次の楽しみにしたいと思います。

 

7本目 東北本線
宇都宮駅 19:00発

普通列車(平塚行)

上野駅  20:45着

 

最後に乗るのは、宇都宮駅19時ちょうど発の普通列車平塚行き。宇都宮から上野までは、105.9キロの旅です。乗車前に、改札脇の券売機で、「グリーン券」を買っておきました(SuicaやPASMOに「グリーン券情報」を書き込み)。土曜・休日の「事前購入料金」は、乗車距離51キロ以上で800円。乗ってから、車内で購入すると260円高くなるので要注意です。

……ふぅぅ。2階建てグリーン車に乗り込み、がら空きの車内でリクライニングシートに身を沈めると、急に疲労を感じて体が座席と一体化。当初は、『青春18きっぷ』1回分が2,410円なのに800円の別料金を払うのはもったいないかな、とも思いましたが、上野駅までは2時間弱の長丁場。旅の終わりを受け止める贅沢として十分な価値がありました。軟らかい座席、やや薄暗い照明、静かな車内が、車窓を流れる夜景を惹きたててくれます。

さて。軽い眠気が襲うのを振り払って、本日最後の駅弁タイム。郡山で買った駅弁の出番です。戦利品を前に、今日の行程を振り返り、しばし味わう達成感。

『会津を紡ぐ わっぱめし』1,100円は、会津地域の地域観光活性化を目的とした「会津若松エリアプロジェクト」の一環として、JR東日本東北支社と「福豆屋」(郡山市)が共同開発。2020年(令和2年)10月に発売されました。郡山から会津若松まで、快速列車で毎日運ばれています。
商品名をごく小さく配し、会津の伝統工芸「会津木綿」の魅力を前面に押し出したデザインした掛け紙は、お弁当箱を包む布のような温かみを感じさせます。細い掛け紐を解く楽しみがあるのも、駅弁好きにはたまりません。手に持つと持ちかさりがするので、ボリュームもありそうです。

掛け紙を裏返すと、駅弁の献立と、調製元のこだわりポイント、掛け紙に使われた「会津木綿」の歴史などが紹介されていました。掛け紙は、調製元から購入者へ届くお手紙のようなもの。ふむふむ、と読みながら理解を深めます。見た目のデザインばかりでなく、作り手が届けたい思いが熱心に書いてあると、嬉しいし、味わいも増すように思います。

では、美味しくいただきましょう。フタを開けると、わぁ!と思わず声が出る、華やかな盛り付け。まるで花が咲いたようです。「福豆屋」さんの駅弁は、どれを買っても盛り付けが美しいのが特徴。期待を裏切らない見た目にワクワクが高まる瞬間です。さぁ、どこから食べましょう? わっぱを手に持ったときの、木の肌触りが何とも言えず、いい感じ。
お米は会津産のコシヒカリ。会津地鶏と玉子を使ったそぼろ、だし巻き玉子。身欠きニシンとイカの天ぷら、ぜんまい煮、どっさりきのこ煮、アスパラ焼き、花形にんじん。地域自慢の食材が、地肌(ごはん)が見えないほどみっちり詰まって、山の幸の滋味あふれる駅弁でした。自慢の玉子焼き、最高です。

そして、今回の旅のトリをかざるのは、『福の島 おとなの幕の内』1,100円。わざわざ“おとな”と強調しているのだから、この掛け紙の向こう側に、なにか理由があるのでしょう。「福」という字が、いいことがありそうな期待を持たせます。

……おっ、この区割りは新しい。ふつうは手前半分のブロックを白飯が占拠するのが、幕の内の定石。その比率を思い切って変えてきたところに攻めを感じます。少なめに詰めた白飯の隣には、焼き鮭、かまぼこ、玉子焼き。手前のブロックだけで「幕の内弁当」が何たるやを語りつくしています。蒸気炊きしたごはんの美味しさは格別。

奥側のブロックには、これでもか!と詰め込まれた、たくさんのおかず。茶色のおかずは大抵ごはんに合うものですが、どうしても色彩が寂しくなりがち。そこに色とりどりの仕切り紙を使うことで、おかずの個性を惹きたてているのが「福豆屋」マジック。どのおかずも艶があり、とても美味しそうです。
玉こんにゃく、昆布、にんじん、たけのこなど野菜の煮物。えび磯辺揚げ、つくね、牛肉煮、きんぴらごぼう、菜の花醤油漬け、豆みそ、漬物。どれも、お酒のつまみにぴったりではありませんか。こうなれば、お弁当箱の向きを180度回転させ、おかずエリアを手前にして、まずは日本酒などクイッと……という気分になりますね。
最近は炭水化物を控えている人も多いので、おかず比率高めの構成は、そういう面でも時代を反映しているように思います。確かに、“おとな”に嬉しい幕の内弁当でした。この内容で1,100円は、いまどき安いのでは? 「おなかも心も幸せいっぱい」――旅の締めくくりにふさわしい、極上の駅弁をいただきました。

20時45分、上野駅に到着。帰路は東北本線に乗って折り返し、途中3回の乗り継ぎを経て、郡山~上野間、223.1キロを移動。今回の旅の総移動距離は520.3キロになりました。新幹線と比較すると、おおよそ、東北新幹線なら上野~盛岡間、東海道新幹線なら東京~京都間の距離に匹敵します。合計すれば12時間以上揺られていたので、ホームに降りると体が少しフワフワします。

今回のコースはこちら

国土地理院地図Vectorを加工して作成

1万円の予算で楽しめる「18きっぷ日帰り・3食駅弁旅」

旅のコストは、『青春18きっぷ』1回分が2,410円(発売は5回分12,050円)と、朝昼晩に食べた駅弁4個の総額が4,400円。缶ビールやおやつ代などを足しても、1万円の予算があれば十分楽しめることが分かりました。
通常、旅で利用する交通とは、自宅と目的地を結ぶ手段。新幹線や飛行機は、移動時間を短くして“速さ”をお金で買うのに対して、乗り降り自由な普通列車の旅は、移動する“時間”そのものを楽しむことかもしれません。
『青春18きっぷ』の使い方のコツがつかめたら、次はどこへ行こうかな。日帰りで西へ、東へ、もっと遠くへ。往きは普通列車、帰りは新幹線を使ってショートカットしたり、2回分を連日で使って一泊二日の旅にするのも面白そう。工夫しだいで、『青春18きっぷ』の楽しみ方は無限大です。

そして、これは後日談。旅から戻った翌日は、普段どおりに出勤しましたが、一日中眠くて仕方ありませんでした。ただ列車に乗っているだけでも、新しい刺激をたくさん受けて、脳はフル稼働。体もそれなりに疲労していたのかもしれません。できるなら、日帰り旅の翌日は十分休養できるよう工夫したほうが良さそうです。

でも、駅弁に出合うためなら、失敗だって何のその。皆さんも、オトクなきっぷで新しい旅を。

マルワ

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駅弁大好き歴25年。平成の”Windows95”時代から某IT企業のインストラクターとして全国の官公庁・小中学校へのパソコン導入に携わりながら、各地の駅弁や名産品を食べ続けるうち「うまいもの」「みやげもの」で日本地図が描けるようになりました。これまで全国を旅して食した駅弁は2,000個以上、「駅弁大会」と聞けば連日通って“大人買い”、休日は朝昼夕と駅弁が食卓に並ぶような家庭です。時々ちょっと苦手な食材もありますが、そこはすべて「実食」してのルポがモットー。食味の感想には個人差がありますので、その点はご容赦ください。