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大雪山系の大自然ど真ん中!然別峡源流の野湯群へ!! NO 野湯 NO LIFE!【vol.03ダム下の湯・メノコの湯・崖下の湯・ペニチカの湯(北海道鹿追町)】

瀬戸圭祐

更新日: 2024年10月2日

大雪山系の大自然ど真ん中!然別峡源流の野湯群へ!! NO 野湯 NO LIFE!【vol.03ダム下の湯・メノコの湯・崖下の湯・ペニチカの湯(北海道鹿追町)】

広大な自然の宝庫、北海道。そのほぼ真ん中に位置する大雪山国立公園の奥深い山中には、様々な野湯が湧いている。

その中でも然別(しかりべつ)峡の上流部には、数百メートル程度の範囲内にいくつもの趣の異なった野湯が点在している。

今回は、日本屈指の野湯群といっても過言ではない、然別峡源流の個性豊かな野湯の魅力について紹介しよう。

日本で最も寒い温泉宿が起点

然別峡源流の野湯群に入るには、まず然別峡かんの温泉向かうこととなる。

然別峡かんの温泉は、大雪山系の山奥深くにある。明治時代、人知れず山奥に湧いていた源泉が入植者に発見されたそうだ。

最低気温はマイナス20度ほどになるが、驚くべきことに冬季も営業している。おそらく日本最寒地の温泉地であろう。

とはいえ、冬に然別峡源流の野湯群を訪れるのは現実的ではない。氷点下十数度の世界で深い雪をかき分けながら進むことになるからだ。一方で、ニセコの小湯沼や五色温泉源泉、登別温泉の近くの大湯沼川など、積雪期の入湯がおすすめの場所もあることは書き添えておきたい。

少し話が逸れてしまったが、然別峡源流の野湯群のことは、この然別峡かんの温泉に宿泊すれば宿の人が詳しく教えてくれる。

然別峡かんの温泉は厳冬期でも営業している(PHOTO:photoAC)

まずは、然別峡かんの温泉から然別峡野営場に歩みを進める。

然別峡野営場は、川沿いの天然露天風呂「鹿の湯」が人気を博すキャンプ場だが、我々の目当ては別にある。

然別峡かんの温泉から然別峡野営場に向かって数百メートル進むと分岐(分岐A)があるので、そこを右側の未舗装道に入って行く。このユトルクシュナイ林道は一般車両通行禁止であるが、土砂崩れなどで閉鎖されていない限り、徒歩での通行は可能だ。

※国土地理院(電子国土 Web)の地図にスポットとルートを追記

ユトルクシュナイ林道は一般車両通行禁止になっている

林道歩きでは途中で橋を2回渡る

小道を抜け砂防ダム横の「ダム下の湯」へ

開放的な草原の野湯で癒される

シイシカリベツ川沿いの林道を遡って20分ほど進むと、右側の脇道の先にかつての駐車スペースのような場所があった。林道が一般車両進入禁止になって久しいからか、かなり草が生えていた。そのスペースの右奥に延びる小道に入っていくと砂防ダムが見える。

階段状になった珍しい砂防ダム

※国土地理院(電子国土 Web)の地図にスポットとルートを追記

ダム下右岸は開けた草原になっており、周りを石で組まれた湯船が湯けむりを上げていた。数人が入れそうな大きさだ。この野湯は、通称「ダム下の湯」という。

かつての駐車スペース跡から奥に少し進むと湯船が見えてくる

ウグイス色の湯面には、藻や虫の死骸などが浮いていた。しかし、その横にはすくい出すための網が置いてあったので、これ幸いとさっそく掃除し入湯する。

かなり熱めだ。ダムから流れ落ちる滝音が、心地よく響く。大雪山系の大自然に囲まれながら、明るく開放的な草原での湯浴みを楽しんだ。

かつては車でアクセスできマニアが湯船周りを整備していた

女の子を意味する野湯「メノコの湯」

眺望の良い崖の上の湯

「ダム下の湯」から小道を戻り分岐(分岐B)を右に行き数10m進むと、川の段丘岩盤上に青白い湯を湛えた小さめの湯船があった。これが通称「メノコの湯」と呼ばれている硫黄泉だ。

メノコとはアイヌの言葉で女の子を意味する。昔はその名の通り、木枠で囲まれた女の子サイズの小さくてかわいい湯船があったらしいが、訪問時は岩で組んだ一人用の湯船になっていた。

油膜が浮いて藻だらけで少しコールタール臭もする。それらを綺麗に除去し、いざ入湯。少し熱めだが、横に置いてあるバケツで川の水を汲み、湯温の調節ができた。しかし最近では、バケツは置かれていないようだ。

メノコの湯はタール状の油膜が浮いていた

ここは川面からは数メートルの小高い崖上にあり、渓流の眺めが良い。一般的に川沿いにある野湯は豪雨など増水の度に壊されることがあるが、ここは高所なので川の流れに洗われることなく、ずっと残っている。

湯船を清掃して入湯。ややタール臭のする熱めのお湯(PHOTO:木下滋雄)

「崖下の湯」は珍しい2階建ての野湯

硫化水素臭で満ちた洞窟には要注意

「メノコの湯」の崖の真下には、数人が入れる立派な湯船がある。滝や渓流では 2 段や 3 段になっている湯船はあるが、過去百十数湯の野湯を制覇してきた私から見ても、岩盤の上下で2階建てになっている野湯は多分ここだけだろう。

通称「崖下の湯」として知られているが、崖の上にある「メノコの湯」とは全く異なる無色透明の湯で、この至近距離で異なる泉質の温泉が湧出しているとは驚きだ。湯船は適温で広くお湯もきれいで、然別峡の野湯群源流の中では一番快適だった。

メノコの湯の直下にあるが泉質は異なる。濁りのない澄んだお湯

湯船の崖面には奥行き1m弱の洞窟があり、そこからお湯が湧出していた。侵入を試みたが、硫化水素臭で満ちた洞窟内は、もうもうとして息苦しく、また源泉は熱すぎたため直ぐに脱出した。

退散を余儀なくされたものの、洞窟内からこんこんと湧き続ける源泉の凄さや、目の前を流れるシイシカリベツ川のせせらぎに癒されて、大自然への畏敬の念が沸き起こってくる。

崖下の洞窟は中で繋がっており、熱くてガスが充満している(PHOTO:木下滋雄)

湯気が上がる「ペニチカの湯」で湯船作り

激熱源泉と川水で温度調整

「崖下の湯」の十数メートル上流に、湯気がもうもうと上がっていた。川岸の岩の間から激熱の源泉が湧出しており、そのまま川に流れ込んで湯溜まりを形成している。通称「ペニチカの湯」だ。

熱湯のペニチカの湯は、もうもうと湯気を上げている

ペニチカとはアイヌ語で川鳥という意味である。ここは熱すぎて入湯するには堰を作って湯船工事を行い、川の水を引き込んで温度調節をしなければならない。しかし川の流れに近く、川の中にせり出した場所に湯船を作らねばならないため、豪雨などの増水の度に流されているようで、何度も工事をし直した形跡が見られた。

ありがたくも先人が工事した湯船跡を補修工事することで簡単に湯船ができた。さっそく透明な湯に身を浸す。すぐ近くの「崖下の湯」とも、「メノコの湯」とも、「ダム下の湯」とも異なった泉質だ。

川の水を引き込んで湯船を作るが湯温調節が難しい

然別挟の野湯群は、泉質だけでなく雰囲気も景色も様々で、さながら野湯の専門店街のようだった。北の地で濃厚な湯めぐりを楽しみ、心も身体も満足感で満たされた。

<DATA>

※国土地理院(電子国土 Web)の地図にスポットとルートを追記

※国土地理院(電子国土 Web)の地図にスポットとルートを追記

■ダム下の湯・メノコの湯・崖下の湯・ペニチカの湯
■住所: 北海道鹿追町北瓜幕
■然別峡かんの温泉までのアクセス:十勝清水ICから国道274号道道1088号経由で車で約1時間

 

TEXT:瀬戸圭祐
PHOTO:瀬戸圭祐(特記以外)

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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

【筆者】瀬戸圭祐

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    アウトドアアドバイザー、野湯マニア。NPO法人・自転車活用推進研究会理事。自動車メーカー勤務の傍ら、自転車・アウトドア関連の連載、講座などを数多く行っている。著書に、全国各地の野湯を訪ね歩いた冒険譚『命知らずの湯』(三才ブックス)、『快適自転車ライフ宣言』(三栄)、『雪上ハイキングスノーシューの楽しみ方』(JTBパブリッシング)などがある。2024年5月現在、足を運んだ野湯はトータルで約110湯。
    >>ウィキペディア(Wikipedia)

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