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おすすめのノンフィクション映画3. スポットライト 世紀のスクープ

おすすめのノンフィクション映画3. スポットライト 世紀のスクープ
画像:楽天市場

慎重な「事実確認」の徹底に、プロフェッショナルを感じる

2002年1月、衝撃の記事が「ボストン・グローブ」紙の一面に掲載されました。ボストンの神父たち数十名が、数え切れないほどの児童に性的虐待を行なっていたこと。そしてその事実をカトリック教会が組織ぐるみで長年隠蔽してきたこと。

実話にもとづく本作は、ボストン・グローブ紙の精鋭記者チーム「スポットライト」班が、このショッキングかつセンシティブな事件を紙面に載せるまでの半年間ほどを描いています。報道はピューリッツァー賞を受賞、映画はアカデミー賞で作品賞に輝きました。

報道に関わった人たちはもちろん立派です。ジャーナリズムかくあるべきという話です。と同時に、この事件、かつてのグローブ紙が「興味を示さなかった」案件でもあることが徐々に見えてきます。もっと早く虐待を止められたのかもしれないのです。しかし、重い空気が流れるなかグローブ紙の新任編集局長はこう言います。

——「私達は毎日 闇の中を手探りで歩いている。そこに光が射して初めて 間違った道だと分かる」

ペンを武器に闘うジャーナリストたちの物語は、ウォーターゲート事件を暴いた1976年の名作『大統領の陰謀』、その前日譚に当たるスピルバーグ監督の『ペンタゴン・ペーパーズ』など見応えのある作品が多数。ぜひ併せてご覧ください。

また、近いところでは、#MeToo運動の発端「ワインスタイン報道」に尽力した記者たちのノンフィクション本『その名を暴け―#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘い―』もおすすめしたい一冊です。

 

映画の詳細データ
公開年 2015年
製作国 アメリカ
監督 トム・マッカーシー
出演者 マーク・ラファロ/マイケル・キートン/レイチェル・マクアダムス ほか
時間 129分

おすすめのノンフィクション映画4. 15時17分、パリ行き

おすすめのノンフィクション映画4. 15時17分、パリ行き
画像:Amazon

お決まりの「本人映像」で不思議な気持ちになること必至

「実話にもとづく作品」の名匠といえばクリント・イーストウッド監督。近年においても『ハドソン川の奇跡』『運び屋』『リチャード・ジュエル』など優れた作品を次々と生み出していますが、今回は少し地味かもしれない映画『15時17分、パリ行き』をご紹介します。

ベースとなっているのは、2015年8月にヨーロッパの高速列車タリス車内で発生した銃乱射事件です。この「パリ行き」の列車には554人が乗っていたものの、死者は出ませんでした。旅行中の乗客たちが勇敢にも立ち向かい、全身武装の犯人を取り押さえたのです。

映画は列車内の緊迫した空気を密室スリラー的に見せていく——のかと思いきや、それは劇中の1割程度に過ぎません。

乗客たちのうち、本作でスポットが当たるのは3人の若者。事件とはまるで関係なく、幼馴染である彼らの「生い立ち」から「その日その時まで」を青春群像劇のごとくじっくり描いていきます。なんならヨーロッパ周遊旅行の映画としてよくできています(まっぷるトラベルガイド的おすすめポイントです)。

終盤の事件シーンが取って付けたように感じる方もいるでしょう。しかし結果的にヒーローとなる彼らは、あくまで「無差別テロの被害者」。事件へと至る「日常」に、事件への伏線などはあるわけがありません。そう思うと、劇中9割を占める日常シーンの見え方も少し変わってくるかも。

ちなみに一番大きなトピックとして、本作に出演している若者3人は「本人」です。それどころか「被弾して負傷した客」すらも本人が演じています。テロ被害者の当事者キャスティングという異色の作品、ぜひご覧ください。

 

映画の詳細データ
公開年 2018年
製作国 アメリカ
監督 クリント・イーストウッド
出演者 スペンサー・ストーン/アンソニー・サドラー/アレク・スカラトス ほか
時間 94分
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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

筆者
353

ただの雑食な映画好き。
「観た映画は必ず感想を書く」というマイルールのもと、2018年から映画ブログ『353log』を日々更新中です。
まだまだ不勉強なことばかりですが、皆様に「観たい!」と思っていただけるようなご紹介ができるよう努めます。
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