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まっぷるマガジン編集部

更新日:2020年4月13日

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【上海の建築物】レンガ造りから超高層ビルまで

上海の街には古今東西の建築様式が入り交じって共存している。街を散策しながら、貴重な文化遺産を眺めたい。

里弄に見る租界時代の上海市民

オーソドックスな庶民の住宅。伝統的な集合住宅のイメージ。都市開発で取り壊しが続いているが、今も多くの上海人が生活している。

上海人のための集合住宅

里弄(リーロン)とはおもに路地のことを指すが、路地が続く区域の住宅全体をいうこともある。造られ始めたのは1870年代、フランスやイギリスが上海に租界を築き始めた時期だ。当時中国人は外国租界に入れなかったため、上海人たちは現在の豫園周辺に居住区を設けた。里弄が豫園周辺に多く残っているのはこのためだ。建材はおもに木の柱とレンガで、間取りは伝統的な江南建築をベースにしている。里弄の中を網の目のようにつなぐ路地は、道路というより集合住宅内の廊下といったほうがよいのかもしれない。その路地では、今も住人たちが料理をしたり洗濯物を干したりする姿を見ることができる。

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レトロモダンな石庫門建築

味のあるレンガ造りの石庫門は、まさに上海らしい建築物といえる。新天地や田子坊など、リノベーションスポットにも多く見られる。

意匠の凝らされた石造りの家

石庫門(シークーメン)とは上海独特の建築様式で、1900年代初めに造られた住宅の多くがこの様式を用いている。石庫門住宅が続く路地を「里弄」「里」「坊」などと呼ぶこともある。グレーとオレンジ色のレンガを組み合わせた門、2階建ての長屋風の外観、屋根に突き出した出窓「老虎窓」などが特徴だ。ファサードには西洋建築に見られるような彫刻が施されているものもあり、外国租界に建てられた建造物からの影響も感じることができる。当時、上海人の約4割がこの石庫門住宅に住んでいたそう。50〜60代以上の上海人に、石庫門住宅で暮らした懐かしい子供時代の話を聞いてみるのもよい。

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租界に由来する上海の洋風建築

上海には、租界時代に欧米人が建てた建築物が数多く現存している。世界各国の様式を持つ建築物は、今も上海の街を華やかに彩っている。

上海市内の洋風建築

旧フランス租界エリアを歩いていると、塀や路地の奥に思わず見とれてしまうような美しい西洋建築を発見することがある。多くが1900年代初めに造られたもので、租界時代にはフランス人をはじめとする欧米各国からの商人が、中華民国建国以降は国家級の要人が住居として使っていた。どの建築にも住人たちに関するストーリーが隠されているのも魅力だ。住宅街の洋館は一般に「老房子」「老洋房」などと呼ばれ、アール・デコ様式の瀟洒な建築が多い。内部は木造のらせん階段を中心に居間、寝室などが配置されている。アーチ型の窓、切り妻屋根、小さなバルコニーなど、様式にとらわれない遊び心を感じるデザインの住宅も。現在はレストラン、プチホテルなどにリノベーションされているものが多いが、武康路、思南路、復興西路などには今も集合住宅として使われている洋館が多数残っている。散策時は洋館の門に取り付けられている「優秀歴史建築」のプレートに注目してみたい。建築様式や竣工年、鑑賞ポイントが紹介されている。

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孫中山故居
孫文が上海で活動していた頃に住居とした老房子。瀟洒な建物の内部には当時の資料が展示されている。

孫中山故居

現地名:
孙中山故居
住所:
香山路7号
アクセス:
地下鉄十号線新天地駅から徒歩10分
TEL:
021-6437-2954
営業時間:
9:00~16:00
定休日:
無休 

外灘に並ぶ洋館群

現在残されている建築群が竣工したのは19世紀後半。バロック式、ゴシック式、東インド式など、さまざまな様式の建物が並んでいるため、共同租界として発展を極めた当時は「万国建築博覧群」とも称されていた。その多くは洋行(外国人が経営する会社)、銀行として建てられたものだ。ドイツから鋼材を輸入し、上海初の鉄筋コンクリート建築として建てられた外灘3号、旧日清汽船ビルとしてジョンソン&モリスが建てた5号、毎時「東方紅」の曲を奏でる時計台を設けた13号、パーマー&ターナー事務所が手がけた旧サッスーンハウスの20号などがとくに目立つ存在だ。現在も銀行やホテルとして営業している建物が多い。外観だけでなく、ぜひ内部の装飾も鑑賞してほしい。

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フェアモント・ピース・ホテル(旧サッスーンハウス)
租界時代に名を馳せたユダヤ系財閥サッスーンの本拠として建築された。現在は5ツ星ホテルとして営業中。

フェアモント・ピース・ホテル

現地名:
Fairmont Peace Hotel/和平饭店
住所:
南京東路20号
アクセス:
地下鉄二、十号線南京東路駅から徒歩5分
TEL:
021-6321-6888
Webサイト:
http://www.fairmont.jp/peacehotel

ラズロ・ヒューデック

租界時代を代表する天才建築家
スロバキア系ハンガリー人。第一次世界大戦中にロシア軍の捕虜となり、上海へ逃れてきた。

ブダペストロイヤル学院で建築を学んだラズロ・ヒューデック。彼が上海で才能を開花させたきっかけは、戦乱に巻き込まれてこの地に流れ着いたことだった。上海で仕事をした期間は1922〜1947年。この間、東アジア中の建築界で注目される存在となり、30作品以上の建築物を上海に残すこととなった。代表作は、東京の霞が関ビルディングができるまでアジア一の階層を誇っていた国際飯店だ。外壁に黒花崗石をあしらったアール・デコ様式のビルは、当時どんな建物よりも目立っていたという。現在も同ホテル内には関連の資料が展示されている。ほかに武康大楼、沐恩堂、大光明電影院なども彼の設計。街歩きをしていれば、途中で出会うこともありそう。

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国際飯店(パークホテル)

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国際飯店

現地名:
Park Hotel/国际饭店
住所:
南京西路170号
アクセス:
地下鉄一、二、八号線人民広場駅からすぐ
TEL:
021-6327-5225
Webサイト:
http://www.parkhotel.com.cn

武康大楼(ウーカンダーロウ)

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武康大楼

現地名:
武康大楼
住所:
武康路392弄

世界有数の超高層建築群

アジア最大規模の経済都市へと成長した上海の街に林立する高層ビル群。とくに現在の中国の勢いを象徴するかのような浦東地区の摩天楼は必見。

上海の街を見下ろす巨大ビル

1998年竣工の金茂大厦は、東京ミッドタウンも手がけているアメリカの建築会社SOMによる設計で、仏塔の形をベースにした88階建てのポストモダン建築。101階建ての上海ワールドフィナンシャルセンターは日本の森ビルの出資によるもの。展望台の高さは492mで、橋の床はガラス張りで真下も見える。2015年にオープン予定の上海中心大厦は、さらに高い632m。アメリカのゲンスラー社がデザインしたガラスのカーテンウォールが上海の空に登場するのも間もなく。

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金茂大厦(手前)ペンのような形状が、独特だが洗練されたセンスを感じさせるビル。高さは420.5m。

上海ワールドフィナンシャルセンター(奥)上海の森ビル。その高さは492mと上海最高。100階に世界一の高さにある展望台を持つ。

金茂大厦

現地名:
金茂大厦
住所:
世紀大道88号
アクセス:
地下鉄二号線陸家嘴駅から徒歩10分
営業時間:
8:30~22:00
定休日:
無休 

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奥付:
この記事の出展元は「まっぷる上海 蘇州」です。掲載されている電話番号、営業時間、料金などのデータは2017年6〜8月の取材・調査によるものです。いずれも諸事情により変更されることがありますので、ご利用の際には事前にご確認ください。また、掲載の商品は取材時のもので、現在取り扱っていない可能性があります。

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。