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筆者撮影

Maki

更新日:2018年12月31日

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湖水地方の小さな宝石 コモ湖の邸宅美術館カルロッタ邸

イタリアのロンバルディア州ミラノから北に50kmほど行った所に、湖水地方の中でも一番人気を誇るコモ湖があります。ちょうどアルファベットの「Y」字を逆にしたような形の湖で(日本では漢字の『人』の形をしてるという人が多いかも?)、別名ラリオ湖とも言われますが、こちらの名前のほうはあまり知名度がありません。最も深いところで410メートルほどあり、イタリアにある湖の中では一番深い湖としても知られています。

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筆者撮影

コモ湖畔は風光明媚な景色が広がり、古くから北イタリアに住む貴族たちの避暑地でした。そのため上品で瀟洒なヴィラが立ち並び、18、19世紀には貴族の別荘地だったところが、今では高級ホテルやレストランなどになっています。ミラノから電車や車で約1時間。日帰りで観光ができる気軽さから、世界中から観光客が訪れるようになりました。

数あるヴィラの中でも特に有名なのが湖畔の町Tremezzo(トレメッツォ)にある「カルロッタ邸」です。ここはいわゆる邸宅・庭園美術館になっていて、毎年だいたい春の兆しが見える3月末頃から開館し、冬の訪れの前の11月半ば頃に閉館します。開館中は常設展と企画展、そして8ヘクタールに及ぶ美しい庭園を楽しむことができます。

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筆者撮影

白いファザードの、19世紀にイタリアで流行したエクレッティカ様式(色々な様式の折衷)の建物が印象的なカルロッタ邸。入口はこの左側にあり、そこで入館料10ユーロ(2018年6月現在)を払います。

この邸宅は17世紀の終わり頃、ジョルジョ・クラリチ侯爵が建設しました。当時はバロック様式だったようです。その後いろいろな人が所有し、少しずつ手を加えていき、1843年にオランダ王女マリアンナが購入。王女の娘カルロッタが1850年に結婚するとき、母マリアンナが娘へ結婚祝いとしてこの邸宅をプレゼントしました。それでここは「カルロッタ邸」と呼ばれるようになり、今に至ります。ただカルロッタは4人目の子供を出産した後、23歳という若さで亡くなります。そしてイタリア統一後にこの邸宅は国の所有となり、当時の雰囲気をしのぶことの出来る邸宅美術館となったのです。

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筆者撮影

入ってすぐの広間は「大理石の間」と呼ばれ、18世紀末に活躍していた彫刻家ルイージ・アクイスティの「ヴィーナスとマルス」が展示されています。ヴィーナスは美、マルスは勇猛の象徴であるローマの神々です。優美で洗練された新古典主義様式の彫刻と壁の深い青とのコンビネーションが美しい広間です。晴れていると外からの光が差し込み、さらに白い大理石が輝いて本当に綺麗。

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筆者撮影

こちらは非常に有名な彫刻「アモルの接吻で蘇るプシュケ」なので、写真などで、また実際にご覧になった方も多いのではないでしょうか。アモルは愛するプシュケを優しく抱き上げ、彼女の顔に自分の顔を近づける、その瞬間をとらえた、とてもロマンティックな雰囲気が漂う作品です。19世紀を代表する彫刻家カノーヴァがつくったものですが、このカルロッタ邸にあるのは彼の弟子だったアダモ・タドリーニが師の作品をコピーしたものだそうです。師カノーヴァの作品はルーヴル美術館に展示されています。

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筆者撮影

もう一つ、見逃せない作品は、イタリアのロマン主義を代表する画家フランチェスコ・アイエツが1823年に描いた「ロミオとジュリエットの最後の接吻」です。

ロミオとジュリエットのお話はあまりにも有名。19世紀初めのロマン主義まっさかりの頃には、こうしたロマンティックな主題が好まれ、多くの画家たちがこの悲恋を題材にしています。アイエツのこの絵は、彼らの最期を知っているだけに、見ているだけでなんとも切ない気分になります。

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筆者撮影

邸宅の中は古い調度品が残っていたりして、当時の優雅な貴族の暮らしを垣間見れる空間になっています。この天井なども美しい装飾が施されており、またシャンデリアやテーブルなども素敵で、ここの主たちだった人の趣味の良さがうかがえます。

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筆者撮影

2階へ上がると、1階とは少し違った雰囲気の部屋が並んでいます。1727年頃にブリュッセルで織らせた豪華なタペストリーが印象的な部屋。照明が効果的に使われて、タペストリーがさらに映えるようです。ここにルネサンス期の画家ペルジーノとその工房作の小さな「聖母子」画があります。

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筆者撮影

ペルジーノはヴァチカンのシスティーナ礼拝堂の装飾も手がけていた、当時一流の画家の一人。柔和で優美な画風が見る人の心を和ませるようです。また色使いがとても美しいのが印象的。

そして2階の窓から眺めるコモ湖の眺望!緑と空や湖の青のコントラストに、思わず感嘆の声をあげてしまうほどです。

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筆者撮影

2階部分の見学が終わったら、下に降りて庭園のほうへ進みます。この庭園はやはり春から夏にかけてが一番オススメで、150種類以上のツツジが見ごろの時期は本当に見事なのだとか。

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筆者撮影
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筆者撮影

8ヘクタールもある庭園なので、全てを一気に見るのは無理だと思いますが、入口で庭園マップをもらえますので、それを見ながら、ご自分の好きなお花が咲いているゾーンを目指してブラブラと散歩することをオススメします。ちょっと日本風(?)の竹林ゾーンもありますので、そこも楽しんでみてください。

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筆者撮影

本当に広い庭園(というよりも植物園と言った趣き)ですので、歩き疲れたら、庭園の一角に元温室だったところを改装した小さなカフェがあります。適度に休憩や水分補給をしながら散歩してくださいね。庭園散策が終わったら、出口付近に小さなブックショップ兼お土産屋さんもあります。コモ湖やカルロッタ邸の思い出に是非立ち寄ってみてください。

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筆者撮影

カルロッタ邸/ Villa Carlotta
Via Regina, 2 – 22016 Tremezzina – Loc. Tremezzo, Como
tel. (+39) 0344 40405
fax (+39) 0344 43689
http://www.villacarlotta.it/page.php?pag_id=2&sez_id=9&lang_id=1

筆者
Maki

ミラノ在。イタリアと関わって20年以上が過ぎました。国内旅行も好きですが、パリや南仏を旅するのも大好きです。西洋美術を勉強中なので、絵画や美術館などイタリア文化情報をお届けできればと思います。

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。