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まっぷるマガジン編集部

更新日:2020年4月13日

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ヴェネツィアの中心、海の玄関口 サン・マルコ広場周辺

宗教上のみならず、国の中心として機能したサン・マルコ寺院からカナル・グランデ沿いに歩いて、ため息の橋へ。再び広場に戻り、コッレール美術館、そしてフェニーチェ劇場を訪ねる。



オリエントの薫り漂う都最大の広場

ヴェネツィアにPiazza(広場)と名のつく場所は、サン・マルコ広場のみ。そのほかの広場はカンポと呼ばれ、規模もずっと小さい。千年続いた共和国の唯一の広場は、国の中心であり、ヴェネツィアの運命のすべてを担っていた。政治の面での中心はドゥカーレ宮殿、宗教と生活の中心はサン・マルコ寺院だった。本土(テッラ・フェルマ)から蛮族に追われてたどり着いた潟に、ヴェネツィア人の精神のよりどころとして築かれたこの寺院は、度々の増改築によりいくつもの様式が複雑にからむことになった。しかし、重なり合うクーポラやファサードのモザイクからはビザンチンの影響が強烈に感じられ、東と西を結ぶ要所の名残を見ずにはいられない。バラ色に彩られたドゥカーレ宮殿を左に見ながら、大運河に向かう。海運共和国時代の正面玄関には、聖マルコの象徴である有翼の獅子、聖テオドロスの像をいただいた2本の円柱が門のように構える。運河沿いに左に向かうと眼前の橋の上に人だかりが見える。彼らは一様に海とは反対側のため息の橋を見ている。ドゥカーレ宮殿で裁かれた罪人が牢獄に向かう途中、一瞬外を見ることができ、そこでため息をついたことから、この名がついたという。



ヴェネツィアの歴史がすべてわかる博物館

サン・マルコ広場に戻り、サン・マルコ寺院の正面にあるコの字を描く建物の真ん中、ナポレオン翼の入口から大理石造りの壮麗な大階段を上り、コッレール博物館へ。18世紀から19世紀にかけて生きた裕福な貴族テオドーロ・コッレールが収集したものを彼の死後、ヴェネツィアに寄贈したのが始まり。ヴェネツィアの貴族の暮らしぶりを伝える家具や調度品のほか、地図や刀剣などこの街の歴史を伝えるさまざまな所蔵品を見ることができる。広場をあとにしてサン・モイゼ通りを行く。高級ホテルやブランドショップを眺めながら、フェニーチェ劇場へ。砂糖菓子のようと讃えられる瀟洒な劇場は、間違いなくヴェネツィアの花である。



交通(ヴァポレット)

1,2,7,14,20,4.1,4.2,5.1,5.2,N,B サン・マルコ-サン・ザッカリーア (S. Marco-S. Zaccaria)

2,10,A,B,R サン・マルコ・ジャルディネッティ (S. Marco Giardinetti)

1,2,N サン・マルコ・ヴァッラレッソ (S. Marco Vallaresso)



街歩きコース

サン・マルコ寺院→4分→ため息の橋→5分→コッレール博物館→5分→フェニーチェ劇場 移動時間約15分

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サン・マルコ寺院 (Basilica di San Marco)
守護聖人聖マルコを祀るため、9世紀に建てられたロマネスク=ビザンチン様式の荘厳で優美な聖堂。

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ため息の橋 (Ponte dei Sospiri)
大理石の装飾も美しい、ドゥカーレ宮殿から牢獄へと続く渡り廊下。

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コッレール博物館 (Museo Correr)
陶器や地図、衣装や家具などといった多岐にわたる展示物は見応えがある。ヴェネツィア絵画も多数所蔵している。

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フェニーチェ劇場 (Teatro la Fenice)
1792年に誕生したオペラ劇場。『椿姫』などの名作の初演が上演された劇場でもある。

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壮麗なサン・マルコ寺院をはじめ、広場には観光スポットが集中している

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すべてを順番に見てまわりたい

サン・マルコ広場 Piazza San Marco

千年共和国の繁栄と華やぎが薫る水の都ヴェネツィアの玄関口
9〜18世紀の1000年間にわたって栄えたヴェネツィア共和国の行政、宗教、文化の中心となった大広場。行政府がリアルト橋近くにあった11世紀までは小さな運河と広場だけだったが、12世紀にヴェネツィアでローマ教皇と神聖ローマ帝国皇帝の会見が行なわれたのを機に埋め立てられた。ヴェネツィアが地中海の覇権を握った14〜16世紀には、東方貿易による莫大な富が広場の整備のために使われた。広場を囲むサン・マルコ寺院、ドゥカーレ宮殿、行政長官府、柱廊、鐘楼、時計塔、小広場などの増築と絢爛豪華な装飾は、この時代に誕生したものだ。なかでも16世紀にヴェネツィアで活躍した建築家サンソヴィーノと、その後を継いだスカモッツィの功績が大きい。その後、ナポレオンがヴェネツィアを支配した19世紀初頭に再整備が行なわれ、現在の広場の姿がほぼ完成した。

地中海の文化が交錯する美の大空間 世界の旅人とともにカフェで憩う
遠い地からヴェネツィアに足を運び、サン・マルコ広場の美と華やぎに魅せられた偉人や芸術家は数知れない。ナポレオンは「世界で最も美しい空間」と呼び、詩人ミュッセは「世界の大広間」と讃えた。それらの言葉どおり、広場には今も千年共和国の栄華の名残に満ちている。地中海での貿易で栄えたためビザンチン文化の影響が色濃く残り、多彩な文明がひとつの広場のなかで交錯し、調和しているのも特徴だ。広場に面する寺院や宮殿などを見学したあとは、カフェのテラス席へ。イタリア初のカフェは、17世紀にヴェネツィアで誕生した。コーヒー豆が東方貿易によって、いち早くこの地にもたらされたためだ。

【アクセス】1・2・N番 サン・マルコ・ヴァッラレッソ(S. Marco Vallaresso)から徒歩3分

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共和国時代の檜舞台となった広場は、今も華やぎに満ちている

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多くの観光客が訪れるスポット

サン・マルコ寺院

街の守護聖人・聖マルコを祀る。ヨーロッパの諸様式とビザンチン様式を折衷した建物。

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ドゥカーレ宮殿

ヴェネツィア共和国の総督の館。絢爛豪華な装飾が施され、共和国の栄光を今に伝える。

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中庭にある儀式用の「巨人の階段」

小広場

サン・マルコ広場から続く運河に面した広場。高くそびえる2本の円柱が、街の玄関口の目印。

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円柱上には、街を守る有翼の獅子像

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かつての街の守護聖人、聖テオドーロ像

鐘楼

高さ約97mの塔。16世紀に完成したが、20世紀に倒壊し、再建された。屋上からの眺めが素晴らしい。

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行政長官府

広場を挟んで北側に旧行政長官府、南側に新行政長官府が建つ。建物の一角にはヴェネツィアを代表する老舗カフェがあり、優雅な雰囲気だ。

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コッレール博物館

広場西の建物はナポレオンが建造。現在は街の歴史などを展示する博物館が入る。

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時計塔

街の小路への入口には、15世紀末に建造された時計塔が建つ。屋上のブロンズ製のムーア人像が定刻ごとに鐘をつく。

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サン・マルコ広場

現地名:
Piazza San Marco
住所:
Piazza S. Marco
地図を見る »
アクセス:
ヴァポレット1・2・N番サン・マルコ・ヴァッラレッソから徒歩3分

サン・マルコ寺院 Basilica di San Marco

街の守護聖人・聖マルコを祀る黄金のモザイクに輝く大聖堂
828年、エジプトのアレキサンドリアから運ばれた福音史家・聖マルコの遺骸を安置するために建立。そのときの建物は10世紀後半の火災によって焼失し、11世紀に再建された。その後、12〜17世紀に幾度もの改築と修復を経て、現在の建物が完成した。そのため、ロマネスク、ゴシック、ルネサンスの各時代の様式が混合し、さらに、14〜16世紀にヴェネツィアが東方貿易で栄えたことから、ビザンチン様式の影響も濃い。1つの建物にこれだけ多彩な建築様式が共存し、調和している例はヨーロッパでも極めて稀で、まさに地中海の覇権を手にした共和国ならではの記念碑といえる。とくに、ビザンチン文化の特徴である黄金の装飾と金地のモザイク画が素晴らしい。

中央クーポラのモザイク画が見事 屋上テラスでは広場の眺めを楽しむ
構造はギリシャ十字形の集中式プラン。上部は中央に大クーポラがのり、その周囲を4つの小クーポラが取り囲む5つ屋根の構造をとり、各屋根の上に小さな丸屋根がのる。これはビザンチン様式の教会によく見られるもので、東方の雰囲気が漂う。ファサードは2層式の5連アーチ。尖塔のある屋根装飾はゴシック様式の意匠で、そのアーチの壁面上部を金地のモザイク画が彩る。内部は昼でも薄暗く、それゆえ黄金装飾のきらめきに目を奪われる。なかでも、中央クーポラのキリスト昇天のモザイク画や、主祭壇裏側にある黄金の装飾衝立「パラ・ドーロ」、宝物館などは必見だ。内部の見学を終えたら、寺院階上にあるサン・マルコ博物館を見学したい。十字軍の戦利品として13世紀にヴェネツィアに運ばれたブロンズ像『4頭の馬』などがある。博物館の屋上テラスからは広場の眺めが満喫できる。

【アクセス】1・2・N番 サン・マルコ・ヴァッラレッソ(S. Marco Vallaresso)から徒歩3分

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ビザンチン様式のクーポラとモザイク装飾が印象的な寺院

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ゴシックの尖塔とビザンチンのモザイク画が見事に調和

内部

寺院内部はアーチが連続する構造。上部の壁面とクーポラの天上部は、金地のモザイク画で覆われ、まばゆい輝きを放つ。

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ファサードのモザイク画

アーチ天井の壁面は、聖マルコの遺骸の移送の様子を描いたモザイク画で彩られる。左手2番目は『総督による遺骸の引き取り』。

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4頭の馬

13世紀にコンスタンティノープルから運ばれた4頭の馬の像。これは複製でオリジナルは博物館に所蔵。

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聖マルコ像

ファサードの中央上部には、聖マルコの像がそびえている。聖マルコは『新約聖書』の「マルコによる福音書」の著者。9世紀にヴェネツィアの守護聖人になった。像の下に配された、有翼の獅子像はヴェネツィアの象徴。

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サン・マルコ寺院

現地名:
Basilica di San Marco
住所:
Basilica di S. Marco
地図を見る »
アクセス:
ヴァポレット1・2・N番 San Marco Vallaresso サン・マルコ・ヴァッラレッソから徒歩3分
TEL:
041-2708311
営業時間:
9:30~17:00(日曜・祝日は14:00~)※祝日など変動あり
定休日:
祝日不定休 行事がある場合、入館制限あり
Webサイト:
http://www.basilicasanmarco.it

ドゥカーレ宮殿 Palazzo Ducale

ヴェネツィア共和国の栄華が薫る館 共和国の最高権力者であった総督の宮殿。9世紀に建造され、14〜15世紀にゴシック様式で改築された。内部と中庭は執務の場と住居を兼ねており、各部屋や柱廊には壮麗な装飾が施される。壁や天井を飾る絵画はヴェネツィア派の巨匠たちのものだ。「大評議会の間」には、世界最大級の油絵、ティントレット作『天国』がある。

【アクセス】1・2・N番 サン・マルコ・ヴァッラレッソ(S. Marco Vallaresso)から徒歩3分

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繊細なアーチが並ぶ柱廊はヴェネツィア・ゴシック様式の最高峰

ドゥカーレ宮殿

現地名:
Palazzo Ducale
アクセス:
ヴァポレット1・2・4.1・4.2・5.1・5.2・N番 San Zaccaria サン・ザッカリーアから徒歩2分
TEL:
041-2715911
営業時間:
8:30~18:00(閉館は19:00)、冬季は~16:30(閉館は17:30)
定休日:
無休 
Webサイト:
http://www.museiciviciveneziani.it

牢獄へ続く「ため息の橋 (Ponte dei Sospiri) 」

ドゥカーレ宮殿の裏手とかつての牢獄を結ぶ橋。共和国時代に宮殿での裁判で有罪になった者は、この橋を通って牢獄に送られ、再び外の世界に戻れないことも多かった。

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カサノヴァもこの橋を通ったが、脱出に成功

3月22日通り Calle Larga XX ll Marzo

サン・マルコ広場を西に少し行ったところにある長い通り。ヴェネツィア随一の華やかなブランドショップ・ストリートだ。

【アクセス】サン・マルコ広場から徒歩10分

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水の都でイタリアの旬のモードに触れる

観光情報を観光地ごとに紹介する雑誌スタイルの旅行ガイドブック「まっぷるマガジン」。その取材スタッフや編集者が足で集めた「遊ぶ」「食べる」「買う」「見る」「泊る」のおすすめ情報をご紹介しています。

奥付:
この記事の出展元は「トラベルデイズ イタリア」です。掲載している情報は、2014年10月〜2015年1月の取材・調査によるものです。掲載している情報、商品、料理、宿泊料金などに関しては、取材および調査時のもので、実際に旅行される際には変更されている場合があります。最新の情報は、現地の観光案内所などでご確認ください。

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。