長野【信州】一度は泊まってみたい名宿!
名所めぐりばかりが旅じゃない。一日の疲れを温泉で癒し、極上の料理に舌つづみを打ち、翌日への活力を蓄えることができる、そんな信州の名宿が大集合!...
更新日: 2022年2月1日
標高2,500mを超える高山帯・日本アルプス。9月下旬になると、夏の雰囲気からガラリと雰囲気を変え、紅葉彩る秋のシーズンへ突入します。アルプスの紅葉名所は数々ありますが、その筆頭格と言えるのが、北アルプス・穂高連峰の秘境「涸沢(からさわ)カール」。
約6時間の道のりを進めば、山裾全体を紅葉が埋め尽くす圧巻の絶景が……!早朝、日の出によりで山肌が赤く染まる「モルゲンロート」も、筆舌に尽くしがたい美しさです。
今回は上高地から涸沢カールを目指す、1泊2日の登山コースをご紹介します。
今回紹介する「涸沢カール」が位置しているのは、北アルプスの南部・穂高連峰の中腹 。こう書くと少し分かりにくいかもしれませんが、「上高地のさらに奥」と言えば、少し聞き馴染みがあるでしょうか。
実はこの涸沢カールは、標高3,000m級の穂高連峰からなる日本有数の氷河圏谷で、その雪溶け水が槍沢(やりさわ・槍ヶ岳を水源とする雪溶け水)と合流して梓川となり、上高地へ注ぎ込んでいます。この涸沢カールは、まさに景勝地・上高地の「母なる自然」と言えるでしょう!
夏山の最盛期である6月~9月も素晴らしいのですが、最も人気が高いのは9月下旬~10月上旬の秋の紅葉シーズン!涸沢カール一帯を覆うナナカマドやダケカンバなど、高山帯の木々が一面に彩り、この世の景色とは思えない絶景を作り上げるのです。
山で1泊しなければならないため少しハードルは高いですが、それでも毎年多くの人がこの景色を求めて山へ登ります。紅葉の涸沢カールについて、詳しく紹介していきましょう!
涸沢カールへの登山口は、言わずと知れた景勝地「上高地」。現在はマイカー規制されているため、岐阜県高山・平湯温泉近くの「あかんだな駐車場」もしくは、長野県松本「沢渡駐車場」からバスで行く必要があります。
■高山側:濃飛バス(あかんだな駐車場~上高地 大人往復2,090円)/ 濃飛バス
■松本側:アルピコ(沢渡駐車場~上高地 大人往復2,300円)/ アルピコ交通株式会社
バスに揺られること40分〜50分。
バスが上高地に到着したら、そこから徒歩2~3分の場所にある名所「河童橋」から登山スタートです。登山道の入り口はとてもわかりやすいのでご安心ください。まずは一つ目の中継地・徳沢を目指しましょう!
穂高連峰とその前衛峰となる明神岳、そこから流れてくる梓川の清流が織りなす、上高地の代表的な風景が広がっています。梓川のエメラルド色に目を奪われてしまうはず!
まるで油絵のような、紅葉彩る「北穂高岳 」
スタートから10km程はひたすら梓川に沿って歩く、整備された平坦な道が続きます。
ほとんどが樹林帯で景色変化には乏しいですが、周囲には明神岳 や北穂高岳、屏風岩など迫力ある高山群がひしめいており、秋の時期には紅葉との素晴らしいコラボレーションを鑑賞することが可能です。
道は明瞭で迷う心配はなく、道中には上高地明神館や徳 澤園など、休憩ポイントが多いのも嬉しいところ。道中、登山者同士のコミュニケーションを楽しみながらマイペースで進みましょう。
なお徳沢 名物「コーヒーソフト(400円 税込)」は絶品なので、ぜひ徳 澤園に立ち寄ってみてください!
登山開始から約3時間半、横尾山荘に到着をしたら本格的な登りに入ります。景色もここからが本番!涸沢カールまで続いていく穂高の渓谷美を堪能できます。
見上げれば、地表のコントラストとの対比がとても鮮やかで、体力の消耗を忘れて登山の楽しさに没頭できることでしょう。
横尾ロッジから約2時間、本谷橋を越えて「Sガレ」と呼ばれる上り坂に到着すれば、少しずつ登山道にゴツゴツとした石が転がり、周囲の木々が淡く色づき始めます。これは「涸沢カール」がいよいよ近くなってきたという兆候。そして目の前、紅葉越しに奥穂高岳の山容を望めば、ようやく「涸沢カール」へと到着です。
巨壁のような穂高連峰を彩る紅葉の絨毯!
涸沢ヒュッテのデッキへと上がると、そこに広がっているのは氷河地形に発達した紅葉の絨毯!赤・オレンジ・黄色の三色が織り込まれ、ハイマツや岩稜とのコントラストが、他に類を見ない絶景を作り上げます。
見れば見るほど引き込まれていく絵画のような風景は、多くのアルピニストを魅了して止みません!
北アルプスの初秋は紅葉VSテントの色彩対決
涸沢カール登山の定番は、この紅葉を見上げる「涸沢テント場」で宿泊する山旅スタイル。
涸沢ヒュッテや涸沢小屋に予約して泊まることも可能ですが、毎年競争率が高く断念することも。テント場は予約なしで利用できます。ヒュッテ内のトイレも利用できます。
受付を済ませてテントを設営したら、あとはのんびりと過ごしましょう。
時間がある方は、涸沢カールより少し高いところにある「ザイテングラード(奥穂高岳・涸沢岳まで行く尾根道)」の手前くらいまで歩いてみても良いでしょう。北アルプスの常念岳(じょうねんだけ) や蝶ヶ岳までを見渡す、大パノラマを楽しむことができます。
日中の鮮やかな紅葉が素晴らしい「涸沢カール」ですが、実はそれ以外にも様々な魅力を有しています。ポイントは「ここに泊まる人しか出会えない非日常」。
1日の終わりに向かって雲が動き、明暗を作り上げる日没前後、宝石のように輝く星空が広がり始めます。紅葉シーズン中には1,000張にもなるという「テント夜景」など、数々の感動的な景色に出会えるでしょう。
アルピニストが一度は憧れる「涸沢カール」の燃える絶景
中でも一番の醍醐味と言える景色が「穂高連峰のモルゲンロート」。モルゲンロートとは登山用語で「朝焼け」を指し、山に宿泊する際に見逃せない光景の一つです。
涸沢カールからは日の出を望むことはできませんが、奥穂高岳と涸沢岳に日が当たり、オレンジ色の美しい山容へと染め上がります。
下部の紅葉、中央の朝焼け、上部の岩稜と三段構成からなる幻想的な風景は、息を呑む絶景です。完全に明るくなるまで、高山ならではの景色変化を思いっきり堪能しましょう!
多くの登山者が利用するコースだから下山も安心
下山の際は、1日目に往路で使ったルート以外にも、「屏風(びょうぶ)のコル」という地点を通過して上高地に戻るルートもあります。しかし、地震による崩落個所が散見され、2020年は開通するか未定です。よって、必ず往路で使ったルートを戻るようにしてください。
下りも急な箇所は少なく、後半は林道歩きになるため、距離は長いですが初心者でも安心して歩きことができます。
上高地から「あかんだな駐車場」or「沢渡駐車場」へ向かうバスの最終便はともに17時半。
上高地〜あかんだな駐車場は、大人往復2090円。上高地〜沢渡駐車場は大人往復2300円です。
※バスの時間は変更になることがあります。最新情報は以下のWebサイトからご確認ください。
上高地まで行った経験のある方は多いと思いますが、その奥の「涸沢カール」まで行ったことのある方は少ないのではないでしょうか?
涸沢カールに行く場合は日帰りすることができません。テントや食糧・水分を大型のザックに詰め、15km歩かなければならない時点で初心者にとってハードルが高いのも事実です。
しかしながら、その労力をかけてでも見てほしい、感動的な景色がそこに広がっています。ぜひ準備を入念にし、紅葉の時期と天気を見計らいながら、登山計画を立ててみてください。きっと、一度見たら忘れられない絶景が待っていることでしょう!
■涸沢カール
住所:長野県松本市安曇上高地
電話番号:090-9002-2534(涸沢ヒュッテ)
アクセス:上高地から徒歩で往復10時間~12時間(涸沢ヒュッテorテント場で一泊することが必要)
上高地バスターミナル→(50分)→明神→(1時間)→徳沢→(1時間10分)→横尾→(1時間)→本谷橋→(2時間)→涸沢カール ※片道約6時間
<チェックリスト>
取材・写真・文章:土庄雄平
『山と高原地図』シリーズは、1965年より毎年発行、登山を楽しむ方に長く親しまれ続けているロングセラー登山地図です。谷や尾根、等高線や登山道を綿密に描き、実踏調査に基づいた登山ルート・コースタイムなどを掲載、全国の名山約1,500を紹介したもので、ラインアップは全61点にのぼります。
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