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懐かしの鉄道情景 ~夜行列車~ 昭和・平成に思いを馳せる旅

まっぷるトラベルガイド編集部

更新日: 2021年4月24日

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懐かしの鉄道情景 ~夜行列車~ 昭和・平成に思いを馳せる旅

なかなかぶらりと列車に乗って「旅」に出ることが難しい昨今ですが、ここではちょっとひと昔、昭和の終わりから平成のはじめあたりの、少し懐かしい「夜行列車」の情景を振り返ってみましょう。
曇った窓を過ぎゆく街灯り、規則正しくレールを刻む音に交錯する踏切の赤い光と警報音。
夜行列車で眠れない夜を過ごした思い出を持つ方も多いことでしょう。

今回のテーマは「夜行列車」です。

いまはほとんど無くなってしまいましたが、昭和から平成時代は、まだ全国各地に「夜行列車」が走っていました。
飛行機や新幹線より安い料金で、夜のうちに移動できる列車はそれなりに人気がありました。寝台特急はそれなりのお値段がしたのでどちらかというと特別なときや、限られた人が乗る列車であり、普段の旅は自由席がメインの急行列車や普通列車。夏休みや年末年始などの多客期は早い時間からホームに並んだものでした。

それでは早速、懐かしい「夜行列車」にまつわる情景を見ていきましょう。

夜行列車の情景.1 青春18きっぷと大垣夜行 スマホも携帯もない待ち時間

夜行列車の情景.1 青春18きっぷと大垣夜行 スマホも携帯もない待ち時間

1980年から90年代にかけて、首都圏からの旅行者、特に若い世代に最も親しまれた夜行列車は「大垣夜行」かもしれません。東京駅を23時過ぎに発車し、静岡、浜松、名古屋を経て岐阜県の大垣には翌朝7時前の到着です。大垣から乗り継ぐと9時過ぎには京都・大阪へ。国鉄時代から続く普通列車乗り放題の「青春18きっぷ」が大活用できる定番列車でした。

その後特急車両に替わって全席指定の「ムーンライトながら」となり、希少な夜行普通(快速)列車として学生の春夏冬休みを中心に運行されてきましたが、2020年の春を最後に新型コロナ感染拡大の影響で運転休止となったまま2021年3月のダイヤ改正をもって、国鉄時代の伝統を受け継いだ列車はひっそりと消えていきました。

当時の「大垣夜行」はグリーン車も含めて「全席自由席」です。つまり先着順。「青春18きっぷ」の利用客が加わる夏休みや年末年始などの混雑期は、座席を確保するために発車のかなり前からホームに並ばなければなりません。

写真は1989(平成元)年のある夏の日の東京駅です。ホームに停まっているのは寝台特急「あさかぜ」博多行。臨時列車なので「20系」と呼ばれるちょっと古い車両が使われていました。

旧式車両とはいえ寝台で眠って行ける「あさかぜ」の乗客を横目(後ろ目?)に、ホームに座っている人が「大垣行」の乗客です。いまの時刻は19時過ぎなので発車まであと4時間あまり、もう数人以上並んでいるので、先頭の人は何時から待っていたのでしょうか。

この時代、スマホや携帯はありません。携帯ゲームもありません。漫画や雑誌を繰り返し読みながら時間を潰すしかありませんでしたが、座って行くための大事な「修行」の時間であり、これから始まる旅に想いを馳せる時間でもありました。


編成の前のほうにはグリーン車が2両連結されていました。こちらは「18きっぷ」ではグリーン券を買っても乗れないこともあって普通車ほど混雑はしませんでしたが、それでも周遊券や普通乗車券の長距離客に人気で、シーズンには早くから並ばないとせっかくグリーン券を買ったのに座れないということもありました。

やがて21時、22時と時が経つにつれてどんどん列が長くなった「大垣行」は、通路やデッキまで立ち客をぎっしり詰め込んで23:25に発車していきました。

夜行列車の情景.2 上野発の夜行列車 故郷・出稼ぎ・ワンカップ

夜行列車の情景.2 上野発の夜行列車 故郷・出稼ぎ・ワンカップ

演歌の一節ではありませんが、昭和から平成の時代、上野駅からは東北や上信越、北陸地方へ向かう夜行列車が何本も走っていました。東京駅とはかなり違う「故郷」の雰囲気いっぱいのホームに似合っていたのは「寝台特急」より座席車がメインの「夜行急行」でしょう。

上野駅の大きな改札口の上には列車毎に発車時刻と行き先が書かれた木製の「札」が掲げられ、駅員が順番に掛け変える姿が見られました。ホームにも列車名を記した「札」が吊り下げられ、自由席の乗客はその下に何時間も並んで列車を待ちました。

青森や北海道への旅には青森行の急行「八甲田」が便利でした。4人掛けの座席車で自由席が大半なこともあり「予約なし」で気軽に乗れますが、混雑期にはこちらも「早いモノ勝ち」。出稼ぎのおじさんが帰省する盆暮れなどは、昼過ぎからホームに並んで新聞敷いてワンカップ、という光景も見られたものです。

上野駅は「故郷」とつながっている、「故郷」の空気を乗せた列車がいる、そんな駅でした。東北本線伝統の夜行急行「八甲田」は上野発の夜行列車群の先陣を切って19:10に発車です。

冬、上野駅から北に向かう夜行列車は独特の趣がありました。熱すぎるほど効いた暖房に蒸せられてカップ酒やさきイカの匂いが漂う車内には「お国言葉」が行き交い、網棚に吊るされたスキーが揺れています。

4人掛けのボックス席では、故郷に帰るおばさんからみかんやりんごをもらったり、都会に暮らす家族の話を聞いたり・・・。やがて関東平野からみちのくへ進むと、いつしか暗い窓の外は雪模様になっていました。曇った窓を拭いて覗くと、小さな駅の灯りが夜の中を過ぎ去っていきます。

夜行列車の情景.3 青森駅は雪の中 青函連絡船が待つ港

夜行列車の情景.3 青森駅は雪の中 青函連絡船が待つ港

大雪警報の北上山地を越え夜通し走って11時間、急行「八甲田」は朝6時過ぎに終着青森駅に着きます。この日は文字通り雪の中でした。

津軽海峡からの風雪が吹き付けるホームに降り立つと、北海道へ渡る青函連絡船には北風に向かって長いホームを歩かなければなりません。「北へ帰る人・・・は誰も無口で」となるのは必然でした。ホームの端にある階段を上ると、広く暖かい青函連絡船の待合室です。次の出航は23便の羊蹄丸。乗船名簿を用意して待ちましょう。

夜行列車の情景.4 昭和の”夜汽車”ノスタルジー 缶コーヒーの活用法

夜行列車の情景.4 昭和の”夜汽車”ノスタルジー 缶コーヒーの活用法

「夜行列車」より更にノスタルジーなイメージをもつ「夜汽車」の世界。青森から津軽海峡を渡って北海道の「夜行列車」に乗ってみましょう。

時代は1985(昭和60)年頃、40年近く前、さすが北海道、「夜汽車」というフレーズにぴったりの列車が走っていました。急行「八甲田」の車両よりひと昔前、手動ドアの”旧型客車”と呼ばれた客車が使われた函館~札幌間の夜行鈍行列車です。客車はたったの2両ですが、内地から青函連絡船で運ばれた荷物車や郵便車を何両も連結する荷物輸送上重要な列車でした。

固くて狭い直角座席で眠るには「苦労」や「工夫」が必要で、座席の下に缶コーヒーを挟んで斜めにし、肘掛けを枕代わりにするテクニックは古くからの汽車旅の「伝承作法」です。時折列車の衝撃で「ガチャン!」と大音響とともに座席もろとも床に倒壊しひんしゅくを買っていたのも”夜汽車”の懐かしいひとコマでした。

「ムーンライトながら」廃止で消えゆく夜行列車

「ムーンライトながら」廃止で消えゆく夜行列車

夜行列車」にまつわる情景はいかがでしたでしょうか。

「ムーンライトながら」の廃止により、JRの路線を定期的に走る夜行列車は、東京と出雲市・高松間を結ぶ寝台特急「サンライズ出雲・瀬戸」の1系統だけになってしまいました。

かつて稚内から鹿児島まで全国の幹線をほぼ網羅し、都会と地方、故郷と街を夜を徹して結んでいた夜行列車は、いま、人々の懐かしい記憶とともに夜の彼方に走り去ろうとしています。

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