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廃線シリーズ 【西日本編】 武田尾廃線跡ウォーキング  週末のプチ冒険へ

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廃線シリーズ 【西日本編】 武田尾廃線跡ウォーキング  週末のプチ冒険へ

全国各地に点在する廃線を紹介する「廃線シリーズ」の西日本編。
今回は、阪神間の近郊にある「武田尾廃線跡」を紹介します。

西宮市・生瀬から宝塚市・武田尾まで、約5kmにわたる荒々しい武庫川渓谷に沿って延びる武田尾廃線跡では、かつて蒸気機関車が煙を上げて走っていました。
現在では、ハイキングコースとして整備され、行楽シーズンにはたくさんのハイカーで賑わう人気スポットになっています。

コース内には、6つのトンネルや3つの鉄橋などが現役当時のまま残されており、雰囲気満点の線路歩きが楽しめます。
今回は、JR生瀬駅を出発してJR武田尾駅を目指しながらコースをご紹介。
京阪神からアクセスもしやすいので、ファミリーで友だち同士で、週末のプチ冒険に出かけてみましょう!!

武田尾廃線跡とJR福知山線のヒストリー

武田尾廃線跡とJR福知山線のヒストリー
渓谷に沿って残る武田尾廃線跡。かつて蒸気機関車が走っていた!

JR福知山線の歴史

JR福知山線は、兵庫県の尼崎駅から宝塚駅、三田駅、篠山口駅などを経て、京都府の福知山駅に至る約106㎞の路線です。1907(明治40)年、鉄道国有法により当時の阪鶴鉄道の路線を国有化したのがJR福知山線の原型となりました。

大阪と山陰を結ぶ重要路線でありながら、長らく線路の複線化や電化などが進まなかったため、蒸気機関車やディーゼル車が客車をけん引して走る姿が1980年代頃まで見ることができました。

1970年代以降には、京阪神のベッドタウンとして、沿線の北摂三田ニュータウンの開発が盛んとなり、1987年~1996年までの10年間、人口増加率が全国1位を記録するほどでした。そのため、非電化区間であった宝塚駅~三田駅間の電化と複線化による輸送力強化は急務でした。しかし、その区間のうち、生瀬駅~三田駅間の山間部は、急峻な武庫川渓谷に沿って線路が敷設されていて、複線化が困難であったため、山間部を貫くトンネルを新設することで路線の近代化を図ることとなり、1986(昭和61)年に新線に切り替えられました。

ハイキングコースの整備

1986年にJR福知山線が新線に切り替わって以降、長らく、渓谷沿いの旧線はそのまま撤去されることなく残置され、一般立ち入り禁止となっていました。その後、地元市民の意向もあり、ハイキングコースとして整備され、2016年に自己責任を原則として一般開放されることになりました。
アクセスの良さや、平たんな道のり、程よい距離、そして1年を通じて自然美が楽しめるとあって、関西近郊のハイキングコースとして人気となっています。

武田尾廃線跡とJR福知山線のヒストリー

廃線跡の面影を残しつつ、歩きやすいハイキングコースとして整備されている

武田尾廃線跡の歩き方

武田尾廃線跡の歩き方
真っ暗闇が待ち構えるトンネル

●服装について

山間部の渓谷を歩きますが、特に厳しいアップダウンがあったり、難所があるわけではないので、動きやすい服装であれば問題ありません。オフロードの道が続くうえに、トンネル内では足元が見えず不安定になりやすいので、歩きやすい靴をおすすめします。もしもの場合に備えて、雨具ウィンドブレーカーがあると安心です。

●持ち物について

武田尾廃線跡にはいくつものトンネルがありますが、明かりは一切ついておらず真っ暗闇の中を歩くため、ライトは必須です。スマホのライトでは足元を照らす程度しか望めないので、ヘッドライト懐中電灯など、しっかりと前方を照らすことのできる光源が望ましいです。

武田尾廃線跡には、一切の自販機やコンビニはありません。また、一度コースに入れば途中エスケープすることができないため、飲み物や食料は持参しましょう。特に夏場はこまめな水分補給が大切なので、多めにドリンクを用意するとよいでしょう。

ライトは必須です

●その他注意事項

武田尾廃線跡はハイキングコースとして整備はされていますが、あくまで自己責任のもとに一般開放されています。上部からの落石や倒木の危険性、真っ暗闇のトンネル内での転倒など、事故やケガの恐れがあるため、安全には十分注意を払って通行しましょう。また険しい渓谷沿いにあるため、コースから外れた場所への立ち入りは厳禁です。

武田尾廃線跡のコース上にはトイレは一切ありません。それぞれのスタート地点となる駅、もしくはコース入り口にあるトイレを利用しましょう。

駐車場は設けられていません。公共交通機関を利用してアクセスしましょう。

●ルートの概要

コースは明瞭な一本道で全長約5kmのルートです。途中のエスケープルートはないため、JR生瀬駅→JR武田尾駅、あるいはその逆向きに通り抜けることになります。その2駅に加えて、JR名塩駅からもアプローチが可能です。どの駅からも武田尾廃線跡の入り口までは約10~15分です。

武田尾廃線跡の歩き方

武田尾廃線跡MAP

武田尾廃線跡へのアプローチ(JR生瀬駅スタート)

武田尾廃線跡へのアプローチ(JR生瀬駅スタート)
JR生瀬駅をスタート

武田尾廃線跡ウォーキングは、JR生瀬駅スタートとJR武田尾駅スタートの2コースから選ぶことができますが、今回はJR生瀬駅を出発するルートを紹介します。(こちらのルートの方が、ウォーキング後に休憩や足湯が楽しめるのでおすすめです)

JR生瀬駅は普通列車しか停車しません(JR武田尾駅も同じ)。大阪方面からであれば新快速・快速で宝塚駅までアクセスし、普通列車に乗り換えて1駅(JR武田尾駅ならば2駅)です。大阪からは約40~45分、神戸からは約60分ほどのアクセスになります。

JR生瀬駅前には、自販機と小さなコープがあるので、そこで飲み物や食料を購入することが可能です。(これ以降は終点の武田尾まで自販機もありません)

駅前の案内板に従って、武庫川沿いの国道176号線に出ます(西宝橋交差点)。そこを左折し、しばらくは狭い歩道歩きになります。国道はかなりの交通量があり危険なので、必ず歩道を歩きましょう。信号のある大多田橋交差点をそのまま直進します。さらに進むと前方に、中国自動車道の高架が見えてきます。

武田尾廃線跡への道は高速の高架下にありますが、ここには信号が設置されておらず、交通量がかなり激しいため、横断するのは危険です。もう少し進んだところにある木ノ元バス停前の横断歩道には信号があるので、そこまで迂回して横断するようにしましょう。

国道176号を横断して、道を下っていく途中に簡易トイレが設置されています。ここから武田尾まで抜けるまでの間にトイレはありません。

しばらく進むと未舗装のあぜ道にたどり着きます。これがかつて蒸気機関車が走っていた廃線跡になります。いよいよここから線路歩きのスタートです。

武田尾廃線跡へのアプローチ(JR生瀬駅スタート)

国道176号は交通量が多いので歩道を進みます

武田尾廃線跡へのアプローチ(JR生瀬駅スタート)

中国自動車道の高架をくぐり、その先にある木ノ元バス停前の横断歩道へ

武田尾廃線跡へのアプローチ(JR生瀬駅スタート)

この横断歩道は信号がなく、大変危険なので、横断しないこと

武田尾廃線跡へのアプローチ(JR生瀬駅スタート)

国道176号から坂を下ったところに簡易トイレがある

武田尾廃線跡へのアプローチ(JR生瀬駅スタート)

いよいよここから線路歩きがスタート!!

武田尾廃線跡見どころ紹介

武田尾廃線跡見どころ紹介

いよいよ武田尾廃線跡ウォーキングのスタートです。ここからは武田尾廃線跡に点在するコースの見どころをご紹介します。

武田尾廃線跡見どころ紹介

JR生瀬側の廃線跡入り口

廃線跡と数々の鉄道遺産

廃線跡と数々の鉄道遺産
枕木が残る箇所では本格的な線路歩きが味わえる

武田尾廃線跡の最大の魅力といえば、やはりなんといっても現役当時の鉄道遺構がそのまま残されているという点です。線路自体は撤去されていますが、コースの多くの部分にはいまだ枕木が続いており、速度標識や見張り台などが線路脇にひっそりとたたずんでいます。これだけの鉄道遺構がそのまま残され、それらを間近で見ることができる場所は日本各地でもそう多くはありません。

また、廃線という非日常の風景は、SNS映えするフォトジェニックな風景としても大注目です。まるで往年の名作青春映画『スタンド・バイ・ミー』を彷彿させる風景はきっとノスタルジックな思いにさせてくれるでしょう。

廃線跡と数々の鉄道遺産

線路脇には枕木が積み置かれている

廃線跡と数々の鉄道遺産

いくつもの鉄道遺構が当時のまま残されている

武庫川渓谷の自然美

武庫川渓谷の自然美
深い武庫川渓谷を縫って歩く

武田尾廃線跡は、京阪神の市街地からほんの少しだけ奥に入っただけとは思えないような、自然豊かな武庫川の渓谷美の中を進んでいきます。京阪神エリアの主要な河川の1つである武庫川の中流部にあたる武庫川渓谷は、武庫川の流れが山と山の狭い部分を抜けていくために実に荒々しい姿を見せ、目の前で轟々と流れる急流は見ものです。

また周辺の山々は、春には桜、夏には新緑、秋には紅葉と、四季折々の表情を見せるため、1年を通じて楽しむことができます。

武庫川渓谷の自然美

荒々しい姿を見せる武庫川

トンネル

トンネル

武田尾廃線跡ウォーキングの一番の特徴は、いくつものトンネルを抜けていくことです。トンネルは短いものから数百メートルもの長さのものまで様々ですが、内部には照明が一切設置されていないため、真っ暗闇の中を進んでいかなくてはなりません。ライトの明かりを頼りに、慎重に足を進めているうちに、前後の感覚や時間の感覚が次第におぼろげになって、とても不思議な気分になります。まるで『不思議の国のアリス』や『千と千尋の神隠し』の世界へと迷い込んでしまいそう!!

トンネル内は、夏場でもひんやりとしていて、暑さをしのぐにはもってこいです。ただし、足元は砂利や枕木でデコボコしていたり、水たまりがあったりするので、くれぐれも注意して歩きましょう。

トンネル
トンネル
トンネル

武庫川橋梁

武庫川橋梁

武田尾廃線跡のコースの中のハイライトは、武庫川を渡る真っ赤な鉄橋です。真下を流れる急流の風を感じながらスリリングにわたることができます。またここは随一の撮影スポットにもなっています。

武庫川橋梁

真っ赤な鉄橋をいろいろな角度から撮影してみよう

武庫川橋梁

親水広場と桜の園

親水広場と桜の園
武田尾側はおだやかな水辺の風景が広がる

武庫川橋梁を渡り、ゴールの武田尾が近づく辺りには、親水広場があり、武庫川の水辺まで降りることができます。川の中は危険なので入ることはできませんが、水辺でくつろいだり、お弁当を広げたり休憩ポイントとして利用できます。

また、この辺りは、春には桜、秋には紅葉の名所としても知られており、のんびり風景を楽しむことができます。廃線跡から少し外れて、山を少し登ったところ(往復で約40分)には桜の園と呼ばれるスポットもあります。

親水広場と桜の園

親水広場

線路歩きのあとのお楽しみ

線路歩きのあとのお楽しみ
宝塚の奥座敷、武田尾温泉

無事に約5㎞のコースを歩き終えると、宝塚の奥座敷と呼ばれた武田尾温泉に到着します。JR武田尾駅から帰路につく前に、疲れた体を癒やすおすすめスポットを2つご紹介します。

線路歩きのあとのお楽しみ

廃線跡の終点にある広場

畑熊商店

畑熊商店

廃線跡の終点に位置する広場に面した飲食店が「畑熊商店」です。疲れた体にうれしい丹波黒大豆入りアイスクリームがおすすめです。また、各種定食のほかに、地元の名物のジビエ料理やボタン鍋などを味わうことができます。テラス席ではバーべキューも可能です。

【畑熊商店(はたくましょうてん)】
住所:〒669-1231 兵庫県宝塚市玉瀬字イヅリハ 116
アクセス:JR武田尾駅徒歩10分強
TEL:0797-91-0239
営業時間:10時頃~17時頃(宴会ご予約のみ、夜22時頃まで営業)
定休日:毎週月曜日(祝日は営業)

畑熊商店

丹波黒大豆入り牛乳アイスクリーム(300円)

畑熊商店

歩き終えた後のスイーツは格別!

足湯

足湯
無料の足湯

歩き疲れた足を休めるのにぴったりの無料の足湯(「紅葉舘 別庭あざれ」)があるので、せっかくなら楽しんでいきましょう。

JR武田尾駅の高架を過ぎるとトンネルがあります。このトンネルも少し変わっていて、向こう側の出口は直角に折れ曲がっています(対向車が見えないので要注意!!)。トンネルを出るとY字に道が分岐になっているので、案内板に従って左手(川の方)へ降りていけば、足湯があります。

足湯

JR武田尾駅を過ぎた先にあるトンネル。出口が直角に折れ曲がっている

足湯

トンネル先のY字分岐を左手に進む

足湯

疲れた足を癒やそう

まとめ

まとめ
フォトジェニックなスポットとしても注目

武田尾廃線跡ウォーキングいかがでしたでしょうか。美しい渓谷の自然に、非日常的でノスタルジックな廃線跡のロケーションは、ここでしか味わうことのできない魅力です。

アクセスも比較的容易で、しかも無料で楽しめるとあって、日帰りのおでかけにぴったりのスポットです。ちびっ子のちょっとした度胸試しや、友だちや仲間とのプチ冒険、週末のほどよい運動などにいかがですか。

まとめ

JR武田尾駅

まとめ

巨大なトンネルの中に駅が設置されている

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