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【連載エッセイ・第33回】猫と田舎で暮らしてみた~6匹と僕たちの里山生活~

高橋のら

更新日: 2021年5月6日

【連載エッセイ・第33回】猫と田舎で暮らしてみた~6匹と僕たちの里山生活~

東京生まれ、東京育ち。9年前に奥さんと、大分・国東半島へ移住。

そこで出会った猫たちと、こんどは、自然豊かな伊豆の田舎へ。

ゆっくりと流れる時間のなかで、森や草むらで自由に駆け回る猫たちと、一緒に暮らす日々のあれこれをお伝えしていきます。

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猫と桜と季節を過ごす

毎年うちの周辺では3月の中旬にソメイヨシノの桜並木が開花し始める。伊豆ではそこそこ有名な桜の大並木だから見応えもあるんだろうけれど、そこに住んで今年で7年になる我が家は買い物の行き帰りに通るくらいで花見に行ったことはない。

というのも我が家の庭には樹齢40数年のしだれ桜があって、お花見をするなら庭で十分だったりするからなのです。だって家でなら猫たちも一緒にお花見ができるじゃないか。

猫と桜と季節を過ごす

家の中から見ると窓全部が桜色に染まる満開のとき

猫と桜と季節を過ごす

桜の下でちーも冬毛が抜け始めて春の装いです

初夏から夏の間は大きな木陰を作ってくれる桜の木

その年の秋に6匹の猫たちを連れて引っ越してきて、翌年の春に見事な花をつけたしだれ桜を前に、「ああ、この家を手に入れて良かったなあ」としみじみ思った。

都会を離れて山好きの人がアルプスの麓に住んだり、釣りやサーフィンの好きな人が海の見えるところへ住むように、僕はここへも幾度となく書いたと思うけれど、春には校庭を囲んで桜が咲く、どこか山奥にある木造校舎の小さな分校みたいな家に住むのが夢だった。そして桜の木の周りには猫たちが走り回れる庭が広がっている。

この子たちにとって桜は天然のキャットタワー

桜の下には猫たちの運動場が広がっております

桜吹雪のあとはまるで雪原のように庭一面が真っ白

枯れ枝に小さな蕾がつき、それはやがて赤く膨らんで花開く。花が落ちて庭一面を雪のように白く染めたあとは、若葉があっという間に木全体を覆ってしまう。その緑の洪水は夏の間僕たちに心地よい日陰を作ってくれる。

秋が来ると葉は黄色く色づき、ハラハラと落ちて秋色の絨毯を庭に敷き詰める。猫たちがその落ち葉の上を歩くカサコソという乾いた音が僕は大好きだ。そしてすべての葉が落ちたら桜は春までじっと眠りにつく。そうして大きな桜を中心に一年が過ぎていく。

 

夏の木陰を作っていた葉が落ちると秋色の絨毯になります

我が家はこの桜と共に一年を過ごしているのです

僕は冷めてしまったコーヒーを手に傍らの猫たちに言う。
「また来年もここで一緒に桜の花を見ような」
猫たちは春風に揺れるしだれの枝を見上げながら、
「そうだね」と答えている。
ほら、少しずつ春が世界を染めていく。(文・写真:高橋のら)

>>次回予定は後日お知らせします。

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■6匹の猫を動画で紹介!

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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

【筆者】高橋のら

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1960年東京生まれ。製本業経営を経て編集プロダクションを設立。
2011年に東京から大分県国東市へ移住し、2014年に国東市から静岡県伊豆半島に転居しました。現在は伊豆の家で編集業を営みながら仕事上のパートナーでもある家内と、国東で出会った6匹の猫たちと共に暮らしています。
国東での猫暮らしを綴った著書「猫にGPSをつけてみた」雷鳥社刊があります。