フリーワード検索

トップ > カルチャー >  関東 > 千葉県 >

坂東太郎の流れを変えた徳川家康の利根川東遷事業による利益と不利益 写真:123RF

まっぷるトラベルガイド編集部

更新日:2021年12月8日

この記事をシェアしよう!

坂東太郎の流れを変えた徳川家康の利根川東遷事業による利益と不利益

暴れ川「坂東太郎」といわれる利根川の東遷事業は、江戸時代における国家的プロジェクトでした。
江戸に多大な経済効果をもたらした半面、千葉県域は不利益を被ることに…。

「坂東太郎」の異名を持つ利根川は徳川家康にとって悩みのタネだった!

関東に移封された徳川家康の頭を悩ませたのは利根川でした。なにしろ利根川は「坂東太郎」の異名を持つ日本最大級の河川であり、「日本三大暴れ川」のひとつにも数えられるほど氾濫が多いことでも知られています。

利根川の水源である大水上山は、新潟県魚沼市、新潟県南魚沼市、群馬県利根郡みなかみ町の境目に位置し、そこから関東各地を通過し、江戸川で分岐して、東京湾と銚子(銚子市)から太平洋へと注いでいきます。しかし、家康移封の当時は、埼玉県東部から古利根川筋を南下して東京湾(江戸湾)にのみ注いでおり、氾濫するたびに関東平野を水浸しにしていました。江戸に安定した都市を築くには、この坂東太郎の治水が急務とされたのです。

利根川周辺域の移り変わり

利根川周辺域の移り変わり
国土交通省および千葉県(HP)の資料を元に作成

約5000年前(上部の地図)は現在より海水準が高かった縄文時代(縄文海進)のようす。 房総半島は不完全で、外線は関東の内陸部にまで及んでいました。

約1000年前(下部の地図)は千葉県と茨城県の県境付近に、広大な香取海という内海が広がっていました。この時代、利根川は当然、江戸湾へ流れていました。

「坂東太郎」の流れを変える利根川東遷は徳川家康が始めた一大プロジェクト

家康による利根川東遷事業は、利根川の流れを関東平野の東端である銚子へと移し替える一大プロジェクトでした。工事を担当したのは、関東代官の伊奈忠次です。

1594年、新郷(埼玉県羽生市)で会の川を締め切った工事に端を発し、利根川東遷事業は開始されました。この事業で重要度の高かったのが赤堀川(茨城県古河市~猿島郡境町)の開削です。まずは1621年に新川通(埼玉県加須市佐波~久喜市栗橋地区)が開削され、次に赤堀川が開削され、そして1654年までかけて利根川本流が赤堀川を通って常陸川に流入するようになりました。かくして利根川は常陸川を通過し、銚子河口から太平洋へとつながったのです。

この事業は忠次1代では完遂せず、親子3代・60年かけて伊奈氏は従事することになりました。そして、伊奈氏の土木事業の方式は「伊奈流」と呼ばれ、幕府の治水事業のあたらしいスタンダードになります。

「坂東太郎」の流れを変えた利根川東遷で江戸にもたらされた利益

利根川東遷事業によって江戸と東北諸藩の物流は飛躍的に向上しました。従来は房総半島を大回りして江戸湾に入っていましたが、銚子から利根川を遡行し、関宿(野田市)を経て江戸川に入るルートが確立されたのです。東北諸藩の交易品や年貢は安全に江戸へと運ばれるようになり、江戸を中心とした水運が形成され、河岸がもうけられた流域に商業的な発展をもたらしました。

また、治水事業によってあたらしい耕作地が開かれたことにより、新田開発が進められ、生産力が向上した地域もあります。

利根川東遷による周辺河川の変化

利根川東遷による周辺河川の変化
国土交通省の資料を元に作成

元荒川や中川への流路を絶たれた利根川は、新たに開削された赤堀川を経由して常陸川に至り、やがて銚子から太平洋に流れ出るルートに変わりました。また、上流から権現堂川を経由して南下するのは江戸川(太日川)です。

「坂東太郎」の流れを変えた利根川東遷で千葉県域が被った不利益

他方で利根川を東遷することで、あらたに利根川の水を引き受けることになった千葉県域には不利益が生じていました。江戸への氾濫被害を減らしたいっぽうで、千葉県域の利根川下流域には水害が引き起こされるようになったのです。

利根川東遷以降の300年間において、印旛沼や手賀沼の付近では120回以上の洪水が記録されています。口さがない言い方が許されるなら、「東京(江戸)の被害を千葉が肩代わりしてやった」わけです。

『千葉のトリセツ』好評発売中!

日本の各県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。本書では千葉県の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!

●収録エリア:千葉県全域

【注目1】千葉の地質・地形を徹底分析

・市原市を流れる養老川河岸の露頭に約77万年前の地層チバニアン発見!
・恐竜時代の岩石がむき出しの見て楽しい銚子のジオ巡り
・火山がない県なのに鴨川に海底火山が流出?
・繰り返される巨大地震の爪痕・南房総に発達する海岸段丘
・鋸山の絶景をつくった「房州石」とはどんな石?

・・・などなど、千葉のダイナミックな自然の成り立ちを解説。

【注目2】古代から中世、江戸時代、近現代の千葉の歴史を一望

・ふたつの大型環状貝塚からなる巨大な加曾利貝塚の謎
・32基もの古墳がつくられた富津の内裏塚古墳群とは?
・鴨川市小湊がゆかりの地、高僧・日蓮の波乱に満ちた生涯
・坂東太郎の流れを変えた徳川家康の利根川東遷
・日本地図を完成させた佐原村の名主・伊能忠敬の素顔
・廃藩置県で26県もあった千葉県域をどうやって統一?

・・・などなど、千葉の歴史のポイントがわかる。

【注目3】千葉を駆け巡る鉄道網をはじめ、千葉で育まれた文化や産業を紹介

・民鉄最高速160キロでスカイライナーが走れる理由
・成田空港線の高架橋は成田新幹線の遺構だった
・登山鉄道も計画された小湊を目指した小湊鉄道
・かつて千葉市の中心駅は京成千葉駅だった!?

・・・などなど、千葉を走る鉄道網の秘密に迫る。

また、銚子港が水揚げ量日本一を誇る理由や明治期最先端の土木技術が光る海の要塞・第二海堡とは?、皐月賞や有馬記念の舞台として知られるJRA中山競馬場の誕生秘話・・・など、千葉県にまつわる文化・産業の面白話もたっぷりと紹介します。

『千葉のトリセツ』を購入するならこちら

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!

エリア

トップ > カルチャー >  関東 > 千葉県 >

この記事に関連するタグ