【連載エッセイ・第30回】猫と田舎で暮らしてみた～6匹と僕たちの里山生活～

そしてあくまで当家比という但し書きが付くけれど、多分ちーは6兄妹の中で一番賢い。人間社会でもそうであるように、賢さは無用な争いを避ける助けになる。
以前に次男のひでじが野良の雄猫と時々すさまじい喧嘩をすると書いたけれど、うちの猫たちはよそ者相手だけでなく兄妹同士でも力の序列を決めるために争いが絶えない。
どうして我が家の猫はこんなに仲が悪いのだろう？　と思うんだが、行動範囲や生活習慣すべてにおいて子猫の時から何一つ我慢をさせず、とにかくストレスフリーだけを心掛けてきたせいで皆の自己主張が激しいのだと思う。
ただ、仲が悪いと言っても人間社会のように複雑や陰険ではなく、単に強いか弱いかの序列を決めるだけ。それでも喧嘩が長引くのは力が拮抗して優劣がつかないからだと思う。

その証にちーは病院で点滴をしてもらい、ほんの2、3日経つと何事もなかったように元気になる。ちょこまか走り回り、大声で僕を呼び、皿に盛ったカリカリをぺろりとたいらげる。
僕はそんな鼻っ柱の強いちーの額を撫でながら、毎日の暮らしに空いた小さな穴が埋まったことに安堵する。そうさ、金で買えないものがここにはあるんだ。今更こんな歯の浮くような言葉を言うのもなんだけれど、猫たちは僕にとっての宝なんだ。（文・写真：高橋のら）

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