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吉本ばなな『なんくるない』 を片手に巡る沖縄旅 竹富島の民家の琉球赤瓦 <写真提供:沖縄観光コンベンションビューロー>

まっぷるトラベルガイド編集部

更新日: 2022年3月24日

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吉本ばなな『なんくるない』 を片手に巡る沖縄旅

今すぐにでも旅に出たい!ステイホーム期間がこうも続くと、旅に焦がれる気持ちがますますつのりますよね。こんな時は、旅気分が味わえる本を手にとってみてはいかがでしょう。

吉本ばななの短編集『なんくるない』は、沖縄を訪れる旅人たちの4つの物語が書かれています。眩しい陽光、青い空と海、湿度の高い空気、色鮮やかな南国の花。沖縄の情景が目に浮かび、ゆるやかな空気感まで匂いたつようです。

ちょっと疲れていたり、傷ついていたりする旅人たちが、沖縄のエネルギーを浴びて力を取り戻していく。そんな物語から元気をもらいつつ、沖縄妄想旅を楽しんでみてください!

吉本ばなな短編小説『なんくるない』について

吉本ばなな短編小説『なんくるない』について
沖縄の守り神シーサー <写真提供:沖縄観光コンベンションビューロー>

この記事では、『なんくるない』に収められている4編のうち、『なんくるない』(表題と同じ)と『ちんぬくジューシー』をとりあげます。

「なんくるない」は沖縄の方言で、「どうにかなるさ、大丈夫」という意味。あとがきには、この作品への著者の想いが次のように綴られています。
『沖縄を愛する全ての人……深くても軽くてもなんでも、あの土地に魅せられた人全てと、沖縄への感謝の気持ちを共有できたら、それ以上の喜びはないと思う。』
(『なんくるない』単行本版236ページ)

『ちんぬくジューシー』の主人公「私」は、少女時代最後の家族旅行として沖縄に出かけます。『なんくるない』の主人公はイラストレーターの桃子。離婚後のモヤモヤから抜け出すために沖縄旅へ。

沖縄の食べ物が沢山登場し、旅人たちが元気を取り戻す様子が描かれています。
沖縄そば、サーターアンダギー、海ぶどうなどの定番料理はもちろん、地魚のマース煮やたらし揚げといったちょっと珍しい料理や、もずくとゴーヤーとごま油のパスタなどという、独創的な一品も。

『なんくるない』の内容をご紹介しながら、沖縄旅へとご案内します!

画像:楽天ブックス

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那覇空港の食堂で沖縄そばを食べる

那覇空港の食堂で沖縄そばを食べる
空からみた沖縄 <写真提供:沖縄観光コンベンションビューロー>

目的地に向かうその道のりも、すでに旅の始まり。

『飛行機でちょっと眠ったり、雑誌を読んだりしていたら、やがて島の形や湾や珊瑚礁が、真っ青な海の中、強い光にさらされているのが見えてきた』
『時間が急に蜜みたいにとろりと流れ出して、ゆるやかになり、ふわっと自分がその中に漂っていた』
(『なんくるない』単行本版121ページ)

上記は『なんくるない』で桃子が那覇に向かう飛行機内の場面。早くも沖縄旅への高揚感を感じさせてくれます。

沖縄に近づくにつれて機内に差し込む陽射しが強くなり、飛行機の外に一歩出た途端、むわっと湿度の高い空気に包まれる、あの感覚。空港内のお土産物屋さんに南国の果物やちんすこうなどがずらりと並び、「沖縄に来たんだなあ」と実感する幸せな瞬間です。

小説では、桃子が空港のベンチで靴下を脱いで裸足になり、食堂に入って沖縄そばを食べる場面が出てきます。
東京ではいつも周りに合わせようとして、食べるペースがゆっくりであることを気にしてしまう桃子。しかし、沖縄なら気兼ねなく、自分のペースで食べることができるのです。

仕事に、プライベートにと忙しい日常生活を送る私たちは、のんびりとした時間を持つことに罪悪感すら持ってしまうこともあります。しかし、沖縄の空気の中なら、誰に気を使うこともなく、堂々とゆったり時間を楽しめることでしょう。

沖縄に着くなり裸足になってしまうという描写からも、桃子の気持ちがほぐれ、リラックスできている感じが伝わってくるようです。

海を眺めながら亀せんべいと黒糖をかじる

海を眺めながら亀せんべいと黒糖をかじる
美しい沖縄の海

せっかく沖縄に来たら、心ゆくまで美しい海を堪能したいもの。海水浴シーズンなら海で泳いだり、マリンスポーツを楽しんだりもよいですが、ただただ海を眺めながら静かな時間を味わうのも、贅沢な楽しみ方です

『海は青と緑にきれいに分かれて続いていき、どこまでも透明だった。白い砂に風が紋様をつくって、透けた水にずっと伝わっていた。波音は静かに絶え間なく続き、浜辺の砂を洗い続けた』(『ちんぬくジューシー』単行本版18〜19ページ)

目を閉じると沖縄の海がす〜っと浮かんでくるよう。この景色の中に身を浸す自分を想像すると、波音まで聴こえてきそうですよね。

『ちんぬくジューシー』では、家族旅行で沖縄を訪れた「私」と両親の3人が、浜辺でのんびり、「亀せんべい」と黒糖をつまむ場面もでてきます。亀せんべいとは、沖縄の海を泳ぐ海亀の形を模した、地元では定番の駄菓子。沖縄のスーパーやコンビニエンスストアならどこでも手に入ります。次に沖縄を訪れるときには、ぜひ探してみてくださいね !

市場でドラゴンフルーツ、サーターアンダギー、海ぶどう入りの味噌を買い込む

市場でドラゴンフルーツ、サーターアンダギー、海ぶどう入りの味噌を買い込む
第一牧志公設市場 <写真提供:沖縄観光コンベンションビューロー>

旅先でのお楽しみといえば、市場の散策は欠かせません。その土地特有の珍しい食材に出会えることはもちろん、市場の活気や地元の方々とのふれあいも楽しいもの。沖縄の「おばぁ」たちの朗らかな笑顔にも出会えますよね!

『ちんぬくジューシー』では、「私」と父親がふたりで市場と商店街を歩きまわり、ちょこちょこ味見をしながらどっさりとおやつを買い込むシーンが出てきます。

ドラゴンフルーツ、マンゴー、パパイヤ。小説内では『海の中の魚のように色とりどりの果物の甘い味』と詩的な表現がされ、南国の果物ならではの鮮やかな色合いが想像され、その甘い匂いも漂ってくるよう。

ほかにも、サーターアンダギー、ひとくちサイズの揚げたかまぼこ「たらし揚げ」や亀せんべい。海ぶどうやかつおの入った味噌など、沖縄ならではの食べ物が次々に登場します。 (『なんくるない』単行本版25〜26ページ)

小説内には具体的な市場名は出てきませんが、「那覇市の中心地にある第一牧志公設市場かな?それともそのすぐ近くにある栄町市場あたりなのかなあ? 」などと想像しながら読みすすめるのも、この本の醍醐味です。

安里の小料理屋さんで泡盛と魚のマース煮を味わう

安里の小料理屋さんで泡盛と魚のマース煮を味わう
沖縄の伝統料理 <写真提供:沖縄観光コンベンションビューロー>

旅先での食事は旅のハイライト。慣れない土地で偶然いいお店にめぐりあえると、とっても幸せな気持ちになりますよね。『なんくるない』にも、印象的な食事の場面が沢山登場します。

上述の「栄町市場」は、那覇中心部の国際通りから徒歩約10分の「安里(あさと)」という場所にあります。日中は市場として機能していますが、夜になるとノスタルジックな飲み屋街に変身。沖縄の初日、桃子はこのエリア にある小料理屋さんを訪れます。

『大味な魚なのに、夢のように繊細な味がした。塩と昆布だけで煮ているのに、甘くてふっくらしていた。私は骨をしゃぶりつくして、汁もみんな飲んだ』
(『なんくるない』単行本版126ページ)

桃子が食べているのは、沖縄の伝統料理「魚のマース煮」。「マース」は沖縄でとれる塩のことで、白身魚を泡盛と塩で煮る調理法から名付けられたそうです(昆布をいれる場合もある)。シンプルな味付けだけに、素材の味が伝わる優しい味わいが楽しめそうですね。

旅先で感じのよい小料理屋さんに入り、偶然居合わせた地元の方や旅人とおしゃべりをしながら、美味しい泡盛とマース煮を楽しむ。ほろ酔い気分になったら、琉球音楽や沖縄民謡を聴けるお店にハシゴして、カチャーシー* を踊ってみるのもいいですね。最高の夜になりそうです。

*カチューシー:「かき混ぜる」という意味の言葉が語源で、両手を頭上に掲げて左右に振る、沖縄で親しまれている踊りのこと。

がじゅまるの樹の下にあるイタリアンでもずくとゴーヤーとごま油のパスタを楽しむ

がじゅまるの樹の下にあるイタリアンでもずくとゴーヤーとごま油のパスタを楽しむ
沖縄本島南部にあるガンガラーの谷 <写真提供:沖縄観光コンベンションビューロー>

正統派の伝統料理を堪能したら、次はちょっとアレンジされた創作料理に挑戦してみるのも楽しいでしょう。

『なんくるない』では、夕食後に散歩をしていた桃子が、大きながじゅまるの樹に埋もれているようなお店を発見します。イタリアを愛するチャキチャキした女性たちが営むお店。のちに恋人のような関係になる男性トラと、桃子はここで出会います。

桃子が食べたのは、メニューにはないトラの試作品「もずくとゴーヤーとごま油のパスタ」。

「クーブ(昆布)イリチー」という伝統料理(昆布と豚肉をだしで炒め煮したもの)にヒントを得て考案した、オリジナル料理として説明されています。

『なんだか黒くてぬるっとしたものがいっぱいからんだパスタ』
『もずくが熱く溶けていて、ゴーヤーの苦味が油っこさを消していて、ほんとうにおいしかったのだ』
(『なんくるない』単行本版195〜6ページ)

本書の中で『見た目が汚い』とからかわれていますが、なんともいえない美味しそうな表現に、今すぐ沖縄に飛びたくなる気持ちが駆り立てられます。意図せず偶然に素敵なお店を発見したり、予想もしていなかった料理に出会ったり。そういう嬉しい遭遇や驚きも、旅の楽しみ。ますます旅が恋しくなります。

『なんくるない』と沖縄のお酒と料理で、沖縄旅行気分に浸る

『なんくるない』と沖縄のお酒と料理で、沖縄旅行気分に浸る
石垣島にある玉取崎展望台 <写真提供:沖縄観光コンベンションビューロー>

今回は沖縄旅行気分に浸れる短編集、『なんくるない』をご紹介しました。

読書のお供に沖縄らしいおやつや料理を用意してみれば、より一層、旅気分に浸れますよ!沖縄の特産品をお取り寄せしてみるもよし、小説に出てくる沖縄料理のレシピを探して作るもよし。泡盛と一緒に味わってみるのもいいかもしれません。

『なんくるない』を読めば、沖縄に漂うやさしさやおおらかさを感じ、心身ともにゆるりとほぐされるような気がします。自粛期間があけた暁には、沖縄旅に出かけましょう!その時はぜひ、『なんくるない』を旅のお供にしてくださいね。

画像:楽天ブックス

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