農業県だった千葉県が工業化へとシフトするのは、第二次世界大戦後のこと。1950（昭和25）年、千葉市と市原市は５年間の事業税および固定資産税の免除などを条件に、川崎製鉄（現・JFEスチール）の千葉工場誘致に成功。川崎製鉄は163億円の巨費を投じ、戦時中に日立航空機が使用していた市有地（埋立地）に、高炉を備えた大工場を建設しました。

この川崎製鉄の千葉進出を契機に、千葉県臨海部の工業化に拍車がかかります。

1954（昭和29）年には首都圏全体の電力不足を補うために、東京電力が火力発電所の建設用地を千葉県に求めました。東京電力の計画は、出力60万キロワットという、東洋一の火力発電所を建設するというもの。このために、川崎製鉄南側の海面12万坪を埋め立てることになります。

川崎製鉄や東京電力以降、千葉の臨海部への進出を希望する企業が続き、市原・五井（ごい）地区で埋立事業が進められていくことになります。

当初は埋立事業費と漁業補償費を進出企業に払ってもらう「千葉方式」を採用していましたが、のちに三井不動産を中心とする民間デベロッパーが介入し、埋立事業費を不動産会社と県とで負担し、造成された土地の売却代金を出資比率に応じて不動産会社と県で分ける「出洲方式」を採用。

巨額の埋立費用を確保できたことにより、浦安から富津に至る約76㎞の海岸線（約1万2000ha）が埋め立てられ、そこに700社以上の企業が工場を建設しました。

かくして、千葉市から市原・袖ヶ浦市の一帯は化学、鉄鋼、石油など日本最大級の素材・エネルギーの供給地となり、京葉工業地帯が形成されていったのです。

現在、千葉県全体の「製造品出荷額等」は約12兆824億円（2017年、従業員4人以上の事業所が対象）で全国８位。このうち京葉臨海地域（約７兆3709億円）が占める割合は61％にもおよびます。

その内訳を見ると、石油・石炭、化学、鉄鋼の分野が中心で、これらが京葉臨海地域の製造品出荷額の８割ほどを占めています。また、石油化学コンビナートは国内最大規模を誇ります。千葉県は日本の戦後復興を支え、今後も日本経済の屋台骨となっていくでしょう。

日本の各県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。本書では千葉県の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載！

●収録エリア：千葉県全域