【飛騨高山】こんなトコ!各エリアと基本情報をチェック!
北アルプスなどの険しい山々に囲まれ、季節ごとの美しい自然に包まれる岐阜県飛騨地方。その見どころを代表的なエリアに分けてご紹介。各エリアの特徴をチェックして旅のプランニングに活用しよう。...
更新日: 2021年11月30日
普段何気なく通るトンネルだが、各地の旧道や廃線跡などには、かつて地域交通や産業の重要なルートとなっていた歴史を秘めながら、今は通る人も少なく山中にひっそりと佇んでいるトンネルが多く存在する。
そんな全国のトンネルの中から自治体や事業者に通行を許可され、「安全・安心」に見る・歩くことができるトンネルをその魅力とともに紹介していこう。「トンネルツーリズムのススメ」第2回は鉄道トンネル界東西両横綱の登場だ。
※写真(特記以外):花田欣也
※地図:昭文社編集部
碓氷峠のトンネル群(群馬県安中市、長野県軽井沢町) うすいとうげ
整備された遊歩道に10本のトンネルが残る明治中期開通の“旧線”、長野行新幹線(北陸新幹線)の開通で1997(平成9)年に廃線となった“新線”と2路線のトンネル群が残る。
旧北陸線のトンネル群(福井県敦賀市、南越前町、滋賀県長浜市) きゅうほくりくせん
今も地域の公道として活用されている、長浜から敦賀を経て今庄にかけての旧北陸線トンネル群。厳しい峠越えの歴史が刻まれている。
日本の鉄道トンネルの数は現在約5,000本と言われる。
山岳が国土の大部分を占めるわが国において、明治以来、鉄道網の形成に伴い、実に多くの鉄道トンネルが設けられた。火山が多く、地震や風水害などの自然災害も多い中でのトンネルの工事は、しばしば難儀を極めたが、技術の革新を繰り返しながら、1988(昭和63)年には全長53Kmに及ぶ青函トンネルの開通に至り、日本のトンネル掘削技術は世界でトップレベルとなった。
鉄道廃線トンネルの中で「東西の名横綱」をあえて挙げるとしたら、迷いに迷うが、東は碓氷峠のトンネル群としたい。
明治の開通当時、信越本線横川~軽井沢間の勾配は66.7パーミル。1kmで66.7mも上るという国鉄史上空前の勾配に、ドイツで考案されたラックレールを使用した「アプト式軌道*」により鉄道が開通したのは1893(明治26)年のこと。軽井沢の先には浅間山が聳え、横川から急勾配が延々と続く線形だった。
この区間には、大別して、2世代の廃線トンネル群が現存する。
ひとつは上記の明治中期に開通した“旧線”で、現在「アプトの道」として整備された遊歩道に、10本のトンネルが残る(当時は26本あったが、熊ノ平~軽井沢間のトンネルは閉鎖もしくは新線化されている)。周辺の鉄道施設とともに国の重要文化財に指定されており、特に、途中の碓氷第三橋梁(通称「めがね橋」)の煉瓦の4連アーチ橋は我が国最大のもので、真下から眺めると壮観だ。
「碓氷峠路探訪(アプトの道)」はこちらのサイトから>https://www.city.annaka.lg.jp/
※トップ > 観光スポット > 観光パンフレットダウンロード にガイドMAPあり
もうひとつは、長野行新幹線(北陸新幹線)の開通により1997(平成9)年に廃線となった“新線”のトンネル群。急峻な地形のため、やや離れて敷設された上り線(18本)、下り線(11本)、計29本ものトンネルを、一般社団法人安中市観光機構のイベント「廃線ウォーク」開催時のみガイド付きで通行することができる。締めて計39本のトンネルを現在も通れるわけだが、この峠における激烈とも言える鉄道史とその先駆性を顧みると、永遠に残すべき貴重な鉄道遺産であると思う。
関東と信州をつないだ碓氷峠のトンネル群/出典:地理院地図Vectorを加工
アプト式時代の信越本線碓氷峠/1937(昭和12)年頃
“旧線”「アプトの道」では、現存中最長の第6トンネル(546m)をぜひ歩いてほしい。66.7パーミルの勾配を足に直感するほどの傾斜が続く内部は、S字にカーブしている。明治の開通後、蒸気機関車が勾配を上る時速はわずか8km程度で、単線の狭いトンネル内で乗務員は煤煙に巻かれ、窒息のリスクと戦っていた。また乗客も、あまりの煙に我慢できずに降りて歩き出す人もいたという。
旧線6号トンネル内の横坑
旧線6号トンネルの急カーブ
そのため、トンネル内に複数の横坑、天井部には円形の排気溝も設けられ、さらにはトンネルの片側に「隧道幕」と呼ばれる布製の幕を設置し、「隧道番」が常駐して列車が入るや否や巨大な幕を下ろし、トンネル内に流入する煤煙を防いだという。
それら労苦の跡は、煉瓦の側壁にこびりついた真っ黒い煤から感じられる。このトンネルから横川方面へ出ると碓氷第三橋梁(めがね橋)を渡るが、その先の第5トンネルまでの間は、紅葉の秋はもちろん、峠を取り巻く山々を見渡せて気持ちのいいスポットだ。ちなみに、めがね橋の煉瓦は約200万個を使ったと言われ、遠く埼玉県の深谷などから良質な煉瓦を貨車で運び、横川からは現在の国道18号線に馬車鉄道を敷設して輸送された。
旧線碓氷第三橋梁(めがね橋)
“新線”のトンネルは、“旧線”とは時代が異なるので、その素材も煉瓦や石から近代的なコンクリートに変わっている。一部のトンネルでは1Kmを超える闇が続き、目をつぶると「碓氷の“地山”(じやま)の中にいる自分」を実感できる。
新線「廃線ウオーク」で場内信号機が点灯
「廃線ウォーク」では、鉄道やトンネルファン以外でも楽しめるよう、道中さまざまな工夫が凝らされており、例えば、長大なトンネル内で場内信号機が点灯したり、参加者が当時の鉄道電話を手にした撮影タイムが取られたり、さらに新型コロナウイルスのステイホーム期間中には自宅でも楽しめるよう、VRによるワイドな展望画像とAIキャラクターを活用したyou-tube動画を公開して人気を呼び、昨年度「ふるさとイベント大賞」(主催:一般財団法人地域活性化センター)の優秀賞も受賞している。
新線「廃線ウォーク」峠の釜めしと廃線路
昼食はお馴染みの「峠の釜めし」を線路の上などで頂くが、「廃線ウォーク」オリジナルの掛け紙付き。撮影スポットも多く、トンネル内から外を眺めると、まるでトンネルの逆U字型の断面が額縁のように見える風景写真が撮れ、樹々が色づいた秋のシーズンはとりわけ美しい。
新線のトンネル。シルエットは筆者
新線「廃線ウオーク」途中の眺望、旧線の碓氷第三橋梁(めがね橋)も見える。
そうしたシーンの細やかな案内があるのでありがたいが、実は、春・夏の草刈りから始まり、企画・運営も一貫して安中市観光機構の皆さんが尽力を重ねられ、そのおかげで安全に楽しめる。
企画担当でガイドもされる上原将太さんの祖父は、碓氷峠専用の電気機関車ED42形を運転されていた。地域の人たちが、稀代の鉄道遺産を大切にし、幅広い世代に楽しんでもらおうという地域活性化の取組は素晴らしいことだ。
◆碓氷峠「廃線ウォーク」(一般社団法人安中市観光機構)はこちらのサイトから
※写真提供(一部)…一般社団法人安中市観光機構
東が碓氷峠なら、西の鉄道廃線トンネルの横綱には、旧北陸線トンネル群を挙げたい。
敦賀の港は古くから北前船による交易の拠点だったが、陸路は急峻な峠道と冬期の豪雪に阻まれ、かつて上杉謙信も上洛を果たせなかったという。明治に入り、関西から北陸へ通じる鉄道ルートの開通は国家プロジェクトとして進められた。
柳ヶ瀬トンネルに掲げられた「萬世永頼」の扁額(上部に嵌められたプレート)は当時の伊藤博文首相自らの揮毫(きごう)によるもので、現在長浜鉄道スクエアに展示されている。その後の北陸本線の開通により日本海沿いの鉄道ルートが確保され、特に物資輸送力は飛躍的に高まった。そして今、北陸新幹線の敦賀延伸工事が進められており、開通後には明治、昭和、令和の3世代の北陸トンネルを通れることになる。
日本遺産認定ストーリー「海を越えた鉄道~世界へつながる鉄路のキセキ~」の構成文化財でもある旧北陸線トンネル群には、敦賀から今庄にかけて、現在の北陸トンネル開通後の旧線(廃線)跡に11本のトンネルがあり、今も地域の公道として活用されている。
北陸旧線のトンネル群/出典:地理院地図Vectorを加工
北陸本線(長浜~敦賀間旧線)の峠越え区間/1932(昭和7)年頃
長浜から敦賀にかけては柳ヶ瀬、小刀根両トンネルが現存し、柳ヶ瀬トンネルは公道である。
小刀根トンネルは1881(明治14)年に建造され、現存する鉄道トンネルで日本最古。ポータルのアーチ環のトップ部分にある要石に、「明治14年」と刻まれているのは当時の貴重な遺構だ。この区間の鉄道開通により、敦賀港からウラジオストックまで船で渡り、シベリア鉄道でヨーロッパで通じる「欧亜国際連絡列車」が走ることになった。
これらのトンネル群も、建設時の苦労はもとより、開通後も最大25パーミルの峠越えがあり、さらに豪雪地でもあったため、蒸気機関車の運行は命がけだった。碓氷峠と違って特殊な軌道を使用せず、当時の鉄道の勾配限界とも言われた。
残念なことに蒸気機関車の空転事故も起きたが、その後「敦賀式」と称される集煙装置を煙突に取り付けた蒸気機関車が考案され、この装置は全国のトンネルの多い急勾配路線でも採用されることになった。
北陸本線(敦賀~今庄間旧線)の”山中越え”区間/1932(昭和7)年頃
敦賀から今庄にかけての“山中越え”のトンネル訪問のアクセス方法は、並行する二次交通が少ないため、敦賀駅などにある「つるがシェアサイクル」の電動機付き自転車を借りることが考えられる。タクシー利用は無難だが、マイカーの場合、トンネル周辺に駐車スペースが少ないので注意を要する。また冬期に訪問する際は降雪に注意してほしい。
この区間に1893(明治26)年~1896(明治29)年に開通した旧線トンネル群が連続するが、シェアサイクルの乗り捨てが出来ないため、その日の天候次第で適宜折り返すといいだろう。
見どころはまず、最初の樫曲(かしまがり)トンネル(87m)。短いトンネルだが、総煉瓦造りのポータルは威厳に溢れ、「これから峠越えが始まる」関所のようにも感じる。内部ではカンテラ風の橙色の照明が点灯し、思わず写真を撮りたくなる。
葉原築堤
その後、しばらく走ると鉄道ファンの撮影地として有名だった葉原築堤を通り、やがて979mの長い葉原トンネルが見えてくる。このトンネルも含め、単線のトンネルであったため車の交互通行が出来ないので、トンネル前には珍しい待ち時間表示付きの信号も見られる。対向車が来ないタイミングがわかるので、入口付近を撮影するのにも便利だ。
写真:葉原トンネル PIXTA
旧線当時、夕陽の美しい“名車窓”としても知られた杉津(すいづ)を通り、今も敦賀湾が一望できるスポットがある。現在の北陸自動車道・杉津PAのあたりに杉津駅があったという。その先はトンネルに次ぐトンネルが展開し、筆者の好きな“トンネルinトンネルinトンネル”の好スポットも現れる。
杉津の景観
トンネルinトンネルinトンネル。
そして、筆者一押しの曲谷(まがりだに)トンネル(260m)は、そのトンネルが連続する区間にある。敦賀側からトンネルに入ってみると、左に急カーブを描いており、照明が煉瓦のトンネル内をグリーンに照らし、これが絶妙。「とこへ行ってしまううんだ ろう感、満載!」のトンネルだ。アニメ「千と千尋の神隠し」の、あのトンネルも思い出してしまう。
曲谷トンネル
圧巻は山中峠の分水嶺(サミット)にある山中トンネル。1,170mもの長いトンネルを明治中期に3年がかりの難工事で開通したが、豪雪地であり、また硬い岩盤のために1日1mも進めないこともあったという。トンネル内は歩いて約20分かかるが、煉瓦の側壁が果てしなく続き、そっと指を触れてみると蒸気機関車の煤が付く。いくつもの待避溝が煉瓦で頑丈に設けられているが、保線員の苦労は並大抵ではなかっただろう。
行き止まりトンネル(山中スイッチバック跡)
山中トンネルを出ると、スイッチバック跡が広がり、その先に後年に設けられたロックシェッド(落石・落雪覆い)が残っている。戦後にかけて貨物の輸送量が増大し、長編成の貨物列車の行き違いに対応するため、トンネルを出て右後方には「行き止まりトンネル」がある。
自転車を漕いだら、さすがにお腹が減る。敦賀へ戻って新鮮な海の幸を堪能したい。秋から冬の時期は真鯛や、運が良ければ「せいこ蟹」も味わえる。お酒にも合うので、泊まってゆっくり愉しむことをおすすめする。
また、今庄駅からタクシーで訪ねる方法もあり、今庄駅には給水塔・給炭台も残る。今庄はかつて蒸気機関車の補機の付け替えが行われた駅で、“鉄道のまち”だった。待ち時間の立ち食いそば「今庄そば」は人気を博し、やがてその名は全国に知れ渡ったが、今庄駅の近くで現在も味わえる。
往復の際には、長浜鉄道スクエア(現存する日本最古の旧長浜駅舎)に保存されたトンネルの扁額や、貴重な鉄道史の資料も見ておきたい。
長浜鉄道スクエア(旧長浜駅舎) 写真:昭文社
※写真提供(一部)…敦賀市、南越前町、長浜市
◆敦賀のグルメ・海の幸はこのサイトから
敦賀観光案内サイト「漫遊敦賀」https://www.turuga.org/category/gourmet/food.html
◆今庄そば(昭文社「まっぷるトラベルガイド」より)
蕎麦 ふる里 の情報はこちら https://www.mapple.net/spot/18000113/
◆長浜鉄道スクエア(旧長浜駅舎)
WEBサイトはこちら https://kitabiwako.jp/tetsudou/
著者(花田欣也)新刊
「鉄道廃線トンネルの世界 トンネル探究家厳選 歩ける通れる110」
(天夢人刊・旅鉄BOOKS/2021年10月14日新刊)
鉄道廃線のトンネルに絞った史上初のガイド本。
公道、遊歩道から観光利活用されたトンネルまで、さまざまな形で残り、訪問できるトンネルを110本紹介した保存版。
昭文社刊「レールウェイ マップル 全国鉄道地図帳」には、全国の鉄道路線・駅に加えて昭和20(1945)年の終戦以降に廃止となった鉄道路線や駅も地図上に表示。戦後日本の発展を支え、廃線となった多くの鉄道路線が描き込まれている。
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旅行会社に勤務しながら30歳でJRを全線乗車した鉄道ファン。ライフワークとして全国の旧道等に残るトンネルを歩き、全国でも例のない現道のみの”トンネルツアー”の講師をはじめ、各地の自治体や事業者などと連携して日本の貴重な土木産業遺産の魅力を発信。地域観光の活性化に繋げる講演や執筆活動も精力的に行っています。