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静岡で家康ゆかりの地を巡る!東海道歴史ドライブで達人の技も体感

内田晃

更新日: 2025年10月14日

静岡で家康ゆかりの地を巡る!東海道歴史ドライブで達人の技も体感

江戸時代に徳川家康の命で整備された五街道の1つ、東海道。
江戸から京都まで53ある宿場のうち、半分近い22もの宿場があったのが静岡県です。
家康が晩年を過ごした駿府城の城下町をはじめ、歴史情緒あふれる見どころがたくさん!

今回は、家康ゆかりの地を巡りながら、静岡が誇る伝統工芸や名物グルメも楽しめる日帰りドライブコースをご紹介します。
歴史の息吹と職人の技に触れる旅へ出かけてみませんか?

静岡を満喫!日帰り歴史ドライブモデルコース

さっそく東海道歴史ドライブに出発!静岡駅からレンタカーを利用する場合のモデルコースはこちらです。ぜひ参考にしてみてくださいね。

【モデルコース】
静岡駅
↓約5km
駿府城公園(巽櫓)
↓約0.4km
静岡市歴史博物館
↓約10.5km
久能山東照宮
↓約14.1km
丁子屋
↓約0.6km
匠宿
↓約4.6km
宇津ノ峠
↓約10.5km
静岡駅

徳川家康が晩年を過ごした「駿府城」

家康の城らしく威厳ある東御門・巽櫓。二ノ丸堀を一周する「葵舟」も人気です

最初の目的地は、徳川家康が晩年を過ごした駿府城跡を整備した「駿府城公園」。江戸幕府を開いた家康は早々に将軍職を息子の秀忠に譲りますが、大御所として実権を握り天下を采配した場所ですその頃の城は本丸を中心に三重の堀が囲み、本丸の北西には7階建の壮大な天守がそびえていたと言われています。

近年の発掘調査で明らかになった慶長期(江戸初期)の天守台は、基底部が西辺(南北)約69m、北辺(東西)約63mと、なんと江戸城を凌ぐ大きさだったというから驚きです!

発掘現場では、豊臣秀吉政権の時代に築かれた天正期(戦国時代末)の天守台や、今川氏時代(戦国時代)の貴重な遺構も見学できます。駿府城の城下町は東海道の宿場では府中宿と称され、日本橋から数えて19番目の宿場でした。
※発掘調査現場は新たな施設整備工事のため、2025年12月26日をもって一時公開終了予定

自然湧水を貯めた二ノ丸堀に立つ東御門・巽櫓。巽櫓、坤櫓は史料を元に復元されたもの。そのうちの東御門・巽櫓内の展示は2021年にリニューアルされ、最新の調査結果から「駿府城の一生」を楽しく学べるようになりました。

東御門・巽櫓内では天守台跡から発見された金箔瓦、ジオラマなど展示

また、大名庭園の遊び心を取り入れ、富士山、三保の松原などの名所を表現した4つの庭からなる紅葉山庭園の散策もおすすめです。

四季折々の景色を楽しめる紅葉山庭園

紅葉山庭園では抹茶などの呈茶(主菓子付)650円〜も味わえます

【住所】静岡県静岡市葵区駿府城公園
【営業時間】9:00〜16:30(最終入館16:00)
【休館日】月曜休(祝日の場合は開館)、年末年始(12/29~1/3)
【入場料】一般 東御門・巽櫓200円、坤櫓100円、紅葉山庭園150円
(駿府城公園全施設共通券360円)

「静岡市歴史博物館」で戦国時代の道にタイムスリップ

建物は1階がガラス張り。3階展望ラウンジからは駿府城と、天気が良ければ富士山が望めます

駿府城公園の向かいには、静岡市歴史博物館があります。

注目は、1階にある戦国時代末期の道と石垣の遺構。同館の建設前に行った調査で発見されたもので、幅2.7m、長さ33mの全国的にも珍しい道の遺構です。道の両脇にはかつては石垣と長い塀が続いていました。

石垣は自然石を加工せずに積む野面(のづら)積み工法が用いられているので、戦国時代末期のものと予想されます。おそらく、道の両側には広大な敷地をもつ武家屋敷などがあったのでしょう。

2・3階では徳川家康の生い立ちから死後に神格化されるまでの生涯を学べます。今川義元から元服の祝いに贈られた紅糸威腹巻(くれないいとおどしはらまき)と、関ケ原で着用した伊予札黒糸威胴丸具足(いよざねくろいとおどしどうまるぐそく)の2つの甲冑は原材料からすべて当時の方法で復元したもので必見です。

戦国時代末期の道と石垣の遺構から城下町の様子が垣間見えます

【住所】静岡県静岡市葵区追手町4-16
【営業時間】9:00〜18:00(展示室への最終入場17:30)
【休館日】月曜休(祝日の場合は翌平日)
【入場料】1階は無料。基本展示一般600円 ほか

家康が眠る聖地「久能山東照宮」へ

駿府城公園から駿河湾に出て久能山東照宮を訪ねます。

山下石鳥居から本殿までは1159段の石段が待っていました。徳川家康の「人の一生は重荷を負て 遠き道を行くが如し 急ぐべからず」という遺訓が頭をよぎり、苦笑いがこぼれます。

1616年(元和2)に徳川家康が死去すると、遺言により久能山に遺骸を埋葬、2代将軍・秀忠は久能山東照宮を創建しました。現在、徳川家康、織田信長、豊臣秀吉を祀る御社殿は、拝殿と本殿が石の間でつながる権現造りになっていて、日本全国に広まる東照宮のモデルになりました。

平和の尊さや人生訓を説いた彫刻なども随所にあり、足が釘付けになります。最奥にある徳川家康の神廟を詣でたら、のんびりと石段を下ります。

国宝の御社殿は黒色の総漆塗りで極彩色の飾りや彫刻が映えます

家紋の向きが違う逆さ葵。完成は崩壊の始まりと考え、あえて誤りを施し未完成にしています

表参道の石段。脚力に自信がない方は日本平ロープウェイの利用を

【住所】静岡県静岡市駿河区根古屋390
【営業時間】9:00〜17:00
【休業日】無休
【入場料】700円(博物館共通券1200円)

茅葺き屋根の「丁子屋」で名物とろろ汁を味わう

江戸時代の浮世絵と同じ風景が目の前に広がります

再びハンドルを握り、16kmほど走ると茅葺き屋根が印象的な丁子屋に着きます。ここは日本橋から数えて20番目の宿場・鞠子(まりこ)宿があったところで、歌川広重の浮世絵「東海道五十三次」にも描かれています。

名物は地元の提携農家が育てた自然薯を使った“とろろ汁”。麦めしにたっぷりとかけてズルズルと流し込むようにいただきます。

予約制ですが「とろろ道入門所」(6600円)というユニークな体験プログラムも好評です。自然薯を卸金ですり下ろした後、すり鉢でゴリゴリとすりながら、秘伝のだし汁や味噌汁を加えて伸ばしていきます。苦労して自作したとろろ汁の味は格別ですよ。

とろろ道入門所では気さくで明るいスタッフが教えてくれます

とろろ汁と麦めしをよくかき混ぜるとさらに美味しい

【住所】静岡県静岡市駿河区丸子7-10-10
【営業時間】11:00〜14:00 LO(土日曜・祝日は11:00〜15:00 LO、16:30〜19:00LO)
【休業日】木曜休(月末の水・木曜は連休)

「匠宿」で静岡ならではの伝統工芸に挑戦

丁子屋からすぐ近くに日本最大級の伝統工芸体験施設「匠宿」があります。駿河竹千筋細工、染め物、漆工芸、模型製作、陶芸、木工などの工房があり、予約不要で体験できるメニューもたくさん用意されています。

この日はお茶染め抜染・ミニトート(3000円)に挑戦。茶染めは製茶工場で発生した廃棄される茶葉などを染料とした染め物です。仕上がりの色はチャコールグレーで、その上に幾何学模様の柄を抜染するのが特徴です。

体験では茶染めされたトートバックに好きな絵や文字を下書きした後、筆でチタン媒染糊(ばいせんのり)を乗せていきます。チタン媒染糊は布地の色を黄土色に変色させます。その後は職人さんに仕上げを任せ、後日に作品が届きます。上手に出来たかな〜と待つ時間もまた楽しみのひとつです。

言葉を忘れて真剣に筆を走らせてしまいます

茶染め体験の完成品。ちょっと自慢したくなります

【住所】静岡県静岡市駿河区丸子3240-1
【営業時間】10:00〜19:00
【休業日】月曜休(祝日の場合は翌日)

豊臣秀吉も越えた「宇津ノ谷峠」を訪ねる

明治時代以降に鉄道が普及するまで、旅の基本は歩きでした。東海道には箱根峠を筆頭に数々の峠越えがあり、旅人を悩ませました。そんな峠道を味わいたく、最後に静岡市と藤枝市の市境になる宇津ノ谷峠(明治トンネル)を訪ねました。

峠越えの道は古代から何度も付け替えられ、現在は7世紀の律令時代にできたという「蔦の細道」、江戸時代の「東海道」、明治、大正、昭和、平成の各トンネルが残っており、道の変遷を知ることができます。明治トンネルは安倍川の架橋で失業した川越人足(かわごしにんそく)ら延べ15万人が従事し、一度は完成したものの、火災によって修築工事が行われ、現在のトンネルは1904年(明治37)に完成しました。トンネルの内部はレンガ積みで、建設時の苦労が目に浮かびます。

ゆるやかな坂道の両脇に家屋が並ぶ宇津ノ谷集落

明治トンネルを往復して、静岡市側の坂道を下ると宇津ノ谷集落に出ます。江戸時代末期から明治時代にかけての建物が多く残り、江戸時代にタイムスリップしたようです。

建物の玄関には、峠に出る鬼を地蔵が退治した伝説に由来する十団子が

豊臣秀吉の逸話が残る「御羽織屋」

そのうちの1軒「御羽織屋」にはこんな伝説も。小田原攻めに向かう豊臣秀吉が宇津ノ谷峠を越えた後、この家の主人に馬用のわらじを所望しました。すると、主人は死を連想させる4を避け、3足のわらじを差し出して勝利を祈願します。その気遣いに秀吉は喜び、小田原攻めに勝利すると豪華な陣羽織を主人に贈ったそうです。ユニークな伝説を知ることができるのも、歴史ドライブの楽しみですね。現在は「御羽織屋」の建物内部の見学はできませんので、街並みを眺めながら散策を楽しみましょう。

ここから静岡駅までは10kmほど。安全運転で戻りましょう!

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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

【筆者】内田晃

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    自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。街道、古道、巡礼道、路地など歩き取材を得意とする。日本旅行記者クラブ会員