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【連載エッセイ・第15回】猫と田舎で暮らしてみた~6匹と僕たちの里山生活~

高橋のら

更新日:2021年2月11日

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【連載エッセイ・第15回】猫と田舎で暮らしてみた~6匹と僕たちの里山生活~

東京生まれ、東京育ち。9年前に奥さんと、大分・国東半島へ移住。

そこで出会った猫たちと、こんどは、自然豊かな伊豆の田舎へ。

ゆっくりと流れる時間のなかで、森や草むらで自由に駆け回る猫たちと、一緒に暮らす日々のあれこれをお伝えしていきます。(毎週火曜日・金曜日に公開)

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この記事の目次

あたる

9年半前の初夏に僕は東京から大分へ引っ越した。大分県民になったその日、覚えているのはとてつもなく広くて青い空と、杉林のどこかから響いてきたホトトギスの声だったな。

夏に向かって日ごとじわじわと気温が上がり始めた頃、2匹の子猫を連れた若い母猫がふらりと庭先へやって来た。気がつくともう1匹、真っ黒で賢そうなお姉さん猫も家族のようだった。

それから毎日、雨が降っても台風が来ても朝晩2回彼らにカリカリを運んだ。

あたる

9年前、庭先へやってきて数日後のくつしたとしましま。鼻水たらしてボロボロ。

近づいてくる寒い冬に向けて彼らの寝ぐらに暖房設備を設え、2匹の子猫が冬を越せるように手を尽くした。臆病者の兄は5か月が過ぎた頃、僕を友達と認めたのかようやっと頭に触らせてくれた。小さな妹を抱き上げるまでには更にもう4か月が必要だった。

冬を越して1歳になったビビり屋の兄は三男、小さな妹は末娘として、先住猫4匹と共にうちの家族になったけど、美人で用心深い母猫はとうとう最後まで心を許してはくれなかった。野良で生まれ、野良で育った彼女にとって、人間を信頼することはできなかったのかも知れない。

出会いから9か月後、初めて体に触らせてくれたしましま。末娘の三女としてうちの家族になりました。

今夜、僕の部屋にあるドアの外へ置いた寒暖計は2.1度。冷たく澄んだ夜空には銀河のような星の群れが瞬いている。これだけきれいに晴れていれば明日の朝は伊豆でも氷点下になるだろうな。

ここいらには野良や半野良の猫もたくさんいる。猫好き犬好きの住人が多いから食事は困っていないけど、大分に残してきた母猫のように人の家へ入るのを拒む猫も少なくない。

こんな星の光も凍るような夜、彼らは少しでも暖を求めて空き家や段ボールを探すのだろう。天城からの風が吹きつけなければ、南国伊豆なら凍死することはないと思う。そしてあとひと月を乗り切ることができたなら、近づいてくる春の足音が聴けると思う。

9歳になった今でも血の繋がったくつしたとしましまは、いつでも必ず一緒に寝ます。

9年前、片手の掌に乗りそうだった小さな妹も今は体重が3キロ半にまで増えた。彼女は時々、僕のひざ掛けに潜り込んできて眠ることがある。この世に生まれ落ちた猫たちの運命を決めるものはなんだろう?

片や氷点下の朝に硬く身を閉じてじっと寒さを堪え、片やストーブと羽根布団のある部屋で兄弟たちと寄り添って暖かく眠る。たとえそれが高額賞金の1等や2等ではなかったとしても、我が家の猫たちは2食昼寝付きの宝くじに当たったようなものなのかな? 僕はもう何年もサッカーくじを買い続けているけれど末等すら当たったことがない。

野良だったこの子を救ったのは僕ではなく、僕がこの子たちに救われたのかも知れないな。

1960年東京生まれ。製本業経営を経て編集プロダクションを設立。
2011年に東京から大分県国東市へ移住し、2014年に国東市から静岡県伊豆半島に転居しました。現在は伊豆の家で編集業を営みながら仕事上のパートナーでもある家内と、国東で出会った6匹の猫たちと共に暮らしています。
国東での猫暮らしを綴った著書「猫にGPSをつけてみた」雷鳥社刊があります。

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