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トンネル探究家花田欣也「トンネルツーリズム」のススメ・第3回~爽快!トンネルを走る!!乗る!?

花田欣也(はなだきんや)

更新日:2021年12月7日

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トンネル探究家花田欣也「トンネルツーリズム」のススメ・第3回~爽快!トンネルを走る!!乗る!?

各地の鉄道トンネルは山岳を貫くものが多いため、必然的にその周辺には豊かな自然が展開する。
明治以降、国鉄の鉄道トンネルにおいて特に顕著で、峡谷の渓流や、そびえ立つ山々、崖沿いから見られる大海原など、中には「名車窓」とうたわれた区間も、大抵トンネルが設けられている。

そんな素敵な景勝を、廃線後にも楽しめるユニークなエリアを紹介する。
※冬期は運行休止となる場合もありますので、ホームページなどで確認の上訪問してください。

※写真(特記以外):花田欣也
※地図調製:昭文社編集部

今回の「おすすめトンネル」はこの3か所

旧神岡鉄道跡「レールマウンテンバイクGattan Go!!(ガッタンゴー)」(岐阜県飛騨市)
廃線となった第3セクター神岡鉄道の線路をレールマウンテンバイクで走り、トンネルを抜ける。

鉱山のトンネルを抜けてホテルから露天風呂へ!湯ノ口温泉(三重県熊野市)
かつて鉱石を運搬した鉱山鉄道のトンネルを蓄電器式の機関車が牽くトロッコ客車に乗って。

吾妻線の旧線でトンネルを抜けて八ツ場ダムの直下へ!「吾妻峡レールバイク アガッタン」(群馬県東吾妻町)
「日本一短い鉄道トンネル」として知られた樽沢トンネルなどをレールバイクで走る。

旧神岡鉄道跡で峡谷の大自然を体感!「レールマウンテンバイクGattan Go!!(ガッタンゴー)」(岐阜県飛騨市)

旧神岡鉄道跡で峡谷の大自然を体感!「レールマウンテンバイクGattan Go!!(ガッタンゴー)」(岐阜県飛騨市)
レールマウンテンバイクにオプションでチャイルドシートも!

国鉄時代から神岡鉱山の貨物輸送を主に運行されていた第3セクターの神岡鉄道は、2006(平成18)年に廃止されたが、その後、NPO神岡・町づくりネットワークが飛騨市と連携し、「レールマウンテンバイクGattan Go!!」を運行している(要予約。注:冬期間は運行中止、詳しくはHP参照)。

旧神岡鉄道跡で峡谷の大自然を体感!「レールマウンテンバイクGattan Go!!(ガッタンゴー)」(岐阜県飛騨市)

高山本線猪谷駅から分岐していた旧神岡鉄道跡を利用/出典:地理院地図Vectorを加工

高い山々に囲まれた峡谷を通る渓谷コース(漆山駅~二ッ屋駅)

高い山々に囲まれた峡谷を通る渓谷コース(漆山駅~二ッ屋駅)
溪谷コースを走るとシェッドのトンネルが見えた!

廃線跡の一部に、溪谷コース、まちなかコースと名付けた2区間があり、タンデムの電動機付き自転車(2台が台車でつながれたシンプルな仕組み)で走る。渓谷コースは漆山駅~二ッ屋駅間の片道3.3km。両側を高い山々に囲まれた峡谷を通る単線のレール上を漕ぐのだが、とにかく周囲は大自然そのもの!前の自転車と間隔が空くと、聞こえるのは風の音と、“タタン、タタン“というレールの継ぎ目を通過するときの音、だけ。途中、橋を通ると、眼下に高原川の清流が見えている。思わず唸るほど綺麗だ。

そして、お待ちかねのトンネルは2本。まず、漆山第1トンネル。豪雪地域ならではの青いシェッド(落雪覆い)で、台形のような形をしたポータル(入口)から入る。430mの長い闇の中を“電チャリ”で走る。

鉄道ファンなら、運転席後ろの“かぶりつき”で前面を眺めたことがあるだろう。それと同じような光景が眼前に広がる中、自分の体を“トンネル風”にさらしながら、トンネル出口の小さな光を目がけて走るのだ。

トンネルを抜けると、赤の鮮やかなトラス橋を渡り、漆山第2トンネル(285m)へ突入する。この、目まぐるしいスペクタクルな展開!興奮のうちに折り返し地点の二ッ屋に着く。なお、渓谷コースは2人からの利用となる。

高い山々に囲まれた峡谷を通る渓谷コース(漆山駅~二ッ屋駅)

溪谷コース トンネルから赤い鉄橋、さらにトンネル!

高い山々に囲まれた峡谷を通る渓谷コース(漆山駅~二ッ屋駅)

溪谷コース 高原川を渡る鉄橋

街&トンネル&橋上駅&トンネル! まちなかコース(奥飛騨温泉口駅~神岡鉱山前駅)

まちなかコースは、奥飛騨温泉口駅~神岡鉱山前駅間の片道2.9km。奥飛騨温泉口駅は、神岡鉄道時代の終着駅で、当時のプラットホームやヤード(車両の留置線)がほぼ原形のまま残り、機関車など保存車両も見られる。春はホームに沿うように桜が咲いて美しい。

レールマウンテンバイクで駅を出ると、たしかに“まちなか”の風景が展開し、神岡の住宅の裏手も走る。住宅は道路に面し、鉄道がその裏手を走る風景は、全国の鉄道でよく見られるもので、土地の生活が垣間見えることは鉄道の魅力のひとつでもある。

トンネルは、“まちなか”の風景から唐突に登場する(神岡第2トンネル)。宅地の傾斜地(法面)に設けられたトンネルで、ポータルの断面は右側が斜めにカットされている。352mのトンネルの“闇”は、違う景色へ連れてってくれる。

まちなかコースの神岡第2トンネル 画像提供:NPO神岡・町づくりネットワーク

トンネルを出ると、橋上に設けられた飛騨神岡駅の片側ホームを通り抜ける。「ひだかみおか」と記された縦型の駅名標示灯が残り、国鉄時代からのものだろう。

橋の上にある飛騨神岡駅の先に待つのは神岡第1トンネル 画像提供:NPO神岡・町づくりネットワーク

そして駅を挟んで、またトンネル(神岡第1トンネル)。「おお!トンネル&橋上駅&トンネルだ!!」と、筆者は興奮の極みである。524mの長いトンネルを抜けると、折り返し地点の神岡鉱山前駅に着く。車庫があり、神岡鉄道時代の車両(おくひだ号)が保存されている。広い駅構内に残る多くの線路から、鉱石を積んだ貨物列車が行き交ってきた姿が目に浮かび、飛騨の山深いまち・神岡が鉱山で栄えた歴史を感じた。

レールマウンテンバイクGattan GO!!
公式サイトはこちら https://rail-mtb.com/

紀州の鉱山トロッコでトンネルを抜けてホテルから露天風呂へ! 湯ノ口温泉(三重県熊野市)

紀州の鉱山トロッコでトンネルを抜けてホテルから露天風呂へ! 湯ノ口温泉(三重県熊野市)
紀州鉱山の軌道は紀伊半島の山間に敷設されていた/出典:地理院地図Vectorを加工

紀伊山地の奥深くにあった紀州鉱山は、古くは奈良の大仏建立に際しても銅を供出したという。

最盛期の昭和40年頃には年間産出量が3,000トンを超え、国内屈指の鉱山だった。その産出のため、山中に網の目のように坑道が掘られ、鉱石を運ぶトロッコ用の長いトンネルも数多く設けられた。その一部が現在、全国でもここしかない形で活用されている。

入鹿温泉ホテル瀞流荘から、なんと当時の蓄電器式の機関車がトロッコ客車を牽いて、トンネルを抜け、湯元山荘湯ノ口温泉の露天風呂まで運んでくれるのだ。うれしいことに、タンデムのレールマウンテンバイクも貸し出されているので、トンネルをじっくり観賞したい人にはおすすめだ(レールマウンテンバイクの利用は2人から、要予約)。

紀州の鉱山トロッコでトンネルを抜けてホテルから露天風呂へ! 湯ノ口温泉(三重県熊野市)

トロッコを牽く蓄電器式機関車

まず、ホテル瀞流荘で「湯めぐり手形」を購入する。これがあれば、トロッコ、露天風呂が1日フリーパスになり便利だ。

トロッコの客車に乗ってみると、狭い。しかし、運行当時の周辺住民にとっては、歩けば隣の集落まで山を越えて半日がかりだったという。この、なくてはならないトロッコに、住民は無料で乗れたという。

瀞流荘駅を出ると、すぐ3号トンネル(272m)に入る。扁平な形のポータルには、複線の線路が残っている。実は、トンネル途中で分岐があり、そこから別のトンネルにもつながっている。この山中には地下鉄さながらの多くのトンネル軌道が通っており、鉱石を運搬するトロッコが頻繁に行き交っていたという。

最初の3号トンネル

この3号トンネルを出ると思いきや、またすぐにトンネルに入る。

このわずかな区間だけ、外に出るのだ。レールマウンテンバイクで来るとわかるのだが、岩盤と岩盤の間の谷あいが、ほんの数メートル空いている。そして、トンネルのポータルの上に積層された岩! “ガツン”という言葉が思い浮かぶような、切り立った岩だ。どうやって積んだんだろう、と思ってしまう。

3号トンネルの空き区間の岩盤

3号トンネルを出ると、かつての鉱石の積み下ろし場・大硲(おおさこ)を通り、すぐ5号トンネルに入る(4号は飛び番)。

これが、長い!735mもあるのだ。紀州鉱山のトロッコ用のトンネルには約3.5kmに及ぶ8号トンネル(立入禁止)もあり、それらの長大な山岳トンネル群を昭和初期に掘削した技術力に驚く。

事実、約90年間を経過してなおこのトンネルは使用されて続けており、当時それだけのマンパワーをかけるだけの経済的な価値が、紀州鉱山にあったのだと思う。

5号トンネルでトロッコがやってきた【特別許可を得て撮影】

5号トンネルの前で筆者

瀞流荘駅からトロッコで約10分。5号トンネルを抜けると、湯ノ口温泉駅に着く。いい駅名だ。そこには杉の樹林に囲まれた、気持ちのいい露天風呂が待っていた。あー、極楽!

温泉露天風呂 画像提供:入鹿温泉ホテル瀞流荘

湯ノ口温泉には食事施設がないので、ホテル靜流荘に宿泊するのがおすすめ。JR熊野市駅から無料送迎サービスもある(要予約)。トンネルで露天風呂へ行った後は、熊野の海・山の幸を存分に味わえる靜流荘で、ゆったりとした時間を過ごしたい。

入鹿温泉ホテル靜流荘の公式サイトはこちら:https://seiryusou.com/

吾妻線の旧線でトンネルを抜けて八ツ場ダムの直下へ!「吾妻峡レールバイク アガッタン」(群馬県東吾妻町)

吾妻線の旧線でトンネルを抜けて八ツ場ダムの直下へ!「吾妻峡レールバイク アガッタン」(群馬県東吾妻町)
八ッ場ダムとも合わせて訪問できる旧吾妻線のトンネル/出典:地理院地図Vectorを加工

自転車型トロッコで、なんと、トンネルを抜けて、巨大なダムの直下まで行けるのだ。

JR吾妻線の岩島~長野原草津口間は八ッ場ダムの建設により2014(平成26)年に路線の付け替えが行われたが、ダム手前の廃線区間の一部をレールバイク「アガッタン」で走れる。レールバイクの仕組みは旧神岡鉄道跡の「レールマウンテンバイクGattan GO!!」とほぼ同様のタンデムの電動機付き自転車だ。

樽沢トンネル。かつての「日本一短い鉄道トンネル」 画像:東吾妻町

渓谷コース(片道2.4km)、田園コース(片道0,8km)の2コースがあるが、渓谷コースの方には「日本一短い鉄道トンネル」として知られた樽沢トンネルほか、計3本のトンネルがある。

鉄道ファンなら、全国でもここだけと言われる「半斜ちょう式架線方式」が見られるので嬉しいところだが、昔懐かしい遮断機のない無人踏切や、石組みの橋りょうなど、自分のペースで走りながら眺める沿線風景はノスタルジックで、誰しもどこか心を惹かれるものがあるだろう。

紅葉の吾妻峡 画像:東吾妻町

最大の見どころは終盤にやってくる。今年延線され復活した道陸神(どうろくじん)トンネル(432m)だ。入口から出口は見えず、内部で大きくカーブを描く。トンネルの壁面は最初の素掘りから鋼製の支保に変わり、時代を超えるようなムードさえ感じる。

道陸神トンネル 画像提供:東吾妻町

そして、トンネルを出るとまもなくダムの直下・吾妻峡八ッ場駅に着く。エレベーターでダムを上がることが出来、ダムマニアにも人気だとか。トンネルをレールバイクで走ると、ダム!というマッチングは、全国でもここしかない!その迫力を、体験してみたい。

八ッ場ダムの直下まで行ける 画像提供:東吾妻町

吾妻峡レールバイク「アガッタン」(予約制)の公式サイトはこちら:https://agattan.com/

鉄道廃線のトンネルを観光に利活用するこれらの取組は、今後わが国で人口が減少し、鉄道の廃線もある程度予見される中で、「今あるものを最大限生かす」という素晴らしい活用方に思う。

何より、それらの取組を支える地域の人たちの“汗”があるからこそ、素敵なアトラクションとして安心して楽しめる。そして、鉄道廃線トンネルにとって、誇らしい第二の人生が始まっている。機会があったらぜひ、訪問して楽しんでほしい。


<HANADA’s NOTE>
・本連載記事では便宜上「隧道」と呼称されているものも「トンネル」に統一している。
・トンネルは現地状況(工事など)により通行できない場合もある。また、冬期は通行できないトンネルもある。
・現地に行かれる場合の装備について…靴はトレッキングシューズ、両手のあくショルダーバックなどが望ましい。自動販売機のない所もあるので飲料水(夏期は電解質のものがベスト)の持参を。懐中電灯はディテールの観察にも活用できる。
・山間部は天候の変化が激しく、冬期は急な降雪もあるので防寒具や手袋も忘れずに。

 

参考書籍
・鉄道構造物探見(JTBキャンブックス 小野田滋 著 JTBパブリッシング)
・鉄道廃線跡を歩く 各巻(JTBキャンブックス 宮脇俊三 編著 JTBパブリッシング)

トンネル探究家「花田欣也」のプロフィール

花田欣也(はなだ・きんや)
・総務省 地域力創造アドバイザー
・一般社団法人 日本トンネル専門工事業協会アドバイザー
・トンネルツーリズムプランナー

旅行会社に勤務しながら30歳でJRを全線乗車した鉄道ファンの一方、ライフワークとして全国の旧道等に残るトンネルを歩き、全国でも例のない現道のみの”トンネルツアー”の講師を、各地の自治体や事業者などと連携して務めている。
「マツコの知らない世界」などテレビ、ラジオ、新聞等メディアにも数多く登場し、日本の貴重な土木産業遺産の魅力を発信。地域観光の活性化に繋げる講演やゼミ、執筆活動も精力的に行っている。著書に『旅するトンネル』(一般社団法人 本の研究社刊)、2021年10月発行の『鉄道廃線トンネルの世界 トンネル探究家厳選 歩ける通れる110』(天夢人・旅鉄BOOKSより)がある。

鉄道の廃線トンネルを知るためのおすすめ本

「鉄道廃線トンネルの世界 トンネル探究家厳選 歩ける通れる110」

「鉄道廃線トンネルの世界 トンネル探究家厳選 歩ける通れる110」
画像:楽天ブックスより

著者(花田欣也)新刊
「鉄道廃線トンネルの世界 トンネル探究家厳選 歩ける通れる110」
(天夢人刊・旅鉄BOOKS/2021年10月14日新刊)

鉄道廃線のトンネルに絞った史上初のガイド本。
公道、遊歩道から観光利活用されたトンネルまで、さまざまな形で残り、訪問できるトンネルを110本紹介した保存版。

廃線の軌跡をたどる地図「レールウェイマップル」

廃線の軌跡をたどる地図「レールウェイマップル」

昭文社刊「レールウェイ マップル 全国鉄道地図帳」には、全国の鉄道路線・駅に加えて昭和20(1945)年の終戦以降に廃止となった鉄道路線や駅も地図上に表示。戦後日本の発展を支え、廃線となった多くの鉄道路線が描き込まれている。

旅行会社に勤務しながら30歳でJRを全線乗車した鉄道ファン。ライフワークとして全国の旧道等に残るトンネルを歩き、全国でも例のない現道のみの”トンネルツアー”の講師をはじめ、各地の自治体や事業者などと連携して日本の貴重な土木産業遺産の魅力を発信。地域観光の活性化に繋げる講演や執筆活動も精力的に行っています。

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