【京都】懐石料理をリーズナブルに食べたい!
京都に来たなら、憧れの懐石料理を食べてみたい!ちょっと敷居が高い懐石料理だけど、リーズナブルに食べれるなら、なおうれしい!そんな願いに応えて、ここでは気兼ねなくリーズナブルに3000円代で楽しめる京懐...
更新日: 2021年5月22日
一度は訪れたい名所旧跡が目白押しの京都。
その京都で定番の朝ごはんといえば、朝がゆです。
この街では見たいもの、行きたい場所が多すぎて早朝から精力的に歩き回ることが多くなりがちですが、その前にまずは旅の気分とともにゆったりと朝ごはんを味わいましょう。
京都ならではの朝がゆを提供する料理屋のなかで、多くの人が憧れ「一度は訪れてみたい!」というのが、老舗料亭の「瓢亭(ひょうてい)」。地元の人に尋ねても、「京都で朝がゆいうたら、そら瓢亭さんやろなぁ」と口をそろえるくらい、絶対的な人気を誇っています。
その伝統の味を楽しむ時間を、ぜひとも京都旅のプランに加えてみてはいかがでしょうか。
ミシュラン三ツ星に何度も輝く「瓢亭」は、京都はもちろんのこと日本料理界を代表する名店。料亭としての創業は天保8(1837)年ですが、前身だった南禅寺の門前茶屋の時代まで遡ると、その歴史はゆうに400年を超えるのだそう。
その朝がゆ誕生には、いかにも京都らしい趣があるエピソードが残っています。
夏のある朝、祇園界隈で夜遊びをしていた旦那衆が芸妓さんを連れ立って訪れ、まだ寝ている主人を起こして「何か食べさせてくれ」と懇願したのだとか。いつも贔屓にしてもらっている旦那衆の来訪とあれば、無下にするわけにもいきません。そこで、ありあわせの材料でこしらえたのが、朝がゆだったというわけ。
炊きたてに料亭ならではの出汁で味付けした朝がゆが、深酒と夜遊びで疲れていた旦那衆の胃袋を癒したことは想像に難くないでしょう。その評判が広まり、正式なメニューとして提供するようになったのだそうです。
京都の老舗料亭と聞くと、初めての人は少々緊張するかもしれません。そのうえ本店で朝がゆを提供しているのは、夏の1カ月間と冬の3カ月間だけ。敷居の高さとともに、タイミングもなかなか難しいのです。
そこでおすすめしたいのが、本店に隣接し、比較的リーズナブルに味わえる「瓢亭 別館」。通年メニューとして朝がゆがあり(冬期間は「鶉がゆ」として提供」)、季節を選ばず味わうことができます。
なお朝がゆをいただくには、前日までに必ず予約が必要。8時、9時、10時からスタート時間を選べますが、朝イチは人気が高く満席になってしまうことが多いため、旅の予定が決まったら早めに予約を入れることをオススメします。
「瓢亭 別館」があるのは、南禅寺前から平安神宮の神宮道へと抜ける小路の途中。「朝かゆ」と書かれた小さな幟がはためいているので、見落とす心配はありません。
店名の由来でもある、ひょうたんが染め抜かれた暖簾をくぐると小川が流れる坪庭が目の前に現れます。
客席は和の趣を残しながらも、カジュアルな椅子席。席に着くと、おしぼりとともに梅湯が運ばれてきます。これを飲んで、食事前の口をさっぱりさせます。
梅湯に続き、八寸と三段重、椀物、おかゆの順に料理が運ばれてきます。
ひょうたんを模したお盆にのせられた八寸のお皿には、山菜が中心の取肴(とりざかな)と半熟具合が絶妙なその名も“瓢亭玉子”が美しく盛り付けられています。
訪れたのは4月中旬。山菜は、旬が短いことから“一瞬の味”といわれるコゴミの胡麻和え、初夏を思わせる空豆の塩茹でに、胡麻を散らした松風が並びました。
桜の葉で包んであるのは、ひと口大の鯛の押し寿司。季節によって内容が変わり、魚は焼き物になることもあります。
八寸の主役は、なんといっても名物の“瓢亭玉子”。朝がゆよりもっと歴史は古く、常連客の「茶菓子以外にも何か出してほしい」との希望から、庭先で飼っていた鶏の卵を茹でて出したのがはじまりとか。
当時はまだ茹で卵を食べる習慣はなかったらしく、この半熟卵が京都以外でも評判を呼んだといいます。
瓢亭玉子は黄身の部分に出汁が振ってあります。箸でつまみ上げると、黄身がトロリと流れ落ちる寸前の絶妙な半熟加減。やや強めの塩味と、ほんの少し醤油を効かせた出汁の風味が濃厚な黄身の旨みとともに舌に絡みます。
その余韻を心ゆくまで味わうには、八寸の最後のお楽しみに食べるのがいいかもしれません。お酒のアテにもよく、アルコールを注文する人がいるのも旅先ならではの解放感でしょう。
ひょうたん型の三段重の中身は筍を中心に、春の京都の味覚を存分に味わえる内容です。
三段重(写真上)の一番下が、筍と蕗、鯛の子の炊き合わせ。出汁の旨みがしっかり浸みた筍のしゃっきりした歯ごたえが爽快で、竹林を思わせる青っぽい匂いと、独特の旨みがあふれ出します。緑色が美しい蕗は、ややえぐみがある早春の味。ぱっと花が咲いたように開いたのが、鯛の子。上品な旨みが口の中でプチプチと弾けます。どれも薄味なのですが出汁が効いていて、素材の旨みがしっかり感じられます。
中段の蒸し物は、春の魚・サワラ。淡白な白身魚の旨みが出汁によって引き出されています。一番上が、鮮やかな緑色で目を引く筍とワラビの木の芽和え。炊き合わせの筍の澄んだ美味しさとはまた異なり、木の芽のほろ苦さが初夏を思わせます。
春から初夏の味覚をギュッと詰め込んだ八寸に舌鼓を打っていると、頃合いを見計らって運ばれてくるのが、豆腐のおつゆの椀もの。
おつゆはごくごく薄い塩味ですが、カツオ出汁の旨みがたっぷり。香ばしい海苔と一緒に、滑らかな舌触りの豆腐を味わいます。
豆腐からは大豆が香り、そこに出汁の味わいと海苔の香りが幾重にもなり、口のなかに広がっていきます。
〆に登場するお粥は、京都では“お粥さん”と親しみを込めて呼ばれています。「お粥さんが炊き上がりましたよ」、のんびりとした京都弁も耳に心地よく、それぞれのお客さんの食べるペースに合わせ運ばれてきます。
木の蓋を開けると、甘くふくよかで、どこか懐かしい香り。炊き立ての白粥は、さらりとして澄んだ味わいながらお米の甘みが引き出されています。
白粥をそのまま味わったら、次はちりめん山椒、昆布の炊いたん、カブの漬物など、お好みの香の物と一緒に。なかでも、ちりめん山椒のすっとした香りと旨みは、お粥との相性がぴったりです。
時間とともにサラサラのお粥が、ねっとりとした食感に変わってくるのもまた、味わい深いもの。炊き立ては米粒がしゃきっとして清々しく、だんだんとふっくらしてくるにつれ粘り気が出て、甘みも増してきます。そこに吉野葛の出汁の餡を絡めると、舌触りがより滑らかになって、出汁の旨みとお粥の上品な甘みがたまりません。
ゆっくり味わって1時間から1時間半。この時間も、京都旅ならではの楽しみです。
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