トップ >  関東・甲信越 > 信州・清里 > 長野・志賀高原・妙高 > 

【長野】白駒池周辺で「コケの回廊」ハイキング 雫が滴るもののけの森を歩く

山と高原地図 編集部

更新日: 2022年2月1日

この記事をシェアしよう!

【長野】白駒池周辺で「コケの回廊」ハイキング 雫が滴るもののけの森を歩く

せっかくのお休みなのに雨模様……。天気が微妙だと、お出かけの計画が立てづらいですよね。梅雨時期ももうすぐやってきますし、ここは雨を味方につけて楽しんでしまいましょう!

雨の時こそオススメしたいのが、鬱蒼とした樹林を歩くハイキングです。木々が雨を遮ってくれるので歩きやすく、しっとりとした風情を味わうことができます。

特に今回ご紹介する長野県の「白駒池」周辺は、樹林帯の中に数百種類のコケが繁茂する神秘的なエリア。霧雨によって緑が潤い、雫が滴る様子はまるでジブリ作品に迷い込んだような世界観を見せてくれます。

白駒池周辺を歩くハイキングコース

白駒池周辺を歩くハイキングコース
麦草峠から入山し、いざコケの森ハイキングへ!

ハイキングの起点となる麦草峠( むぎくさとうげ)は、日本の国道の中で標高第2位を誇る場所(標高2,127m)。北八ヶ岳と南八ヶ岳を分ける峠道で、「メルヘン街道 」の愛称で親しまれています。

東京から麦草峠までは、中央自動車道を通って車で約3時間 。諏訪南ICで降り、国道299号線に接続します。大阪からは6時間ほどかかります

麦草峠は八ヶ岳登山の拠点として重宝され、5月〜11月には多くのハイカーが入山することでも有名です。登山初心者向けのコースが充実しており、コースを選べば誰でも心山歩きが楽しめます。

八ヶ岳のトレードマークの一つ。霧漂う幻想的な「白駒池 」

初心者向けのコースの中でもオススメしたいのは、白駒池周辺をぐるりと巡るコースです。所要時間は平均して4〜5時間。半日程度を見ておくとよいでしょう。

途中に丸山 ・高見石(たかみいし)などの山頂を踏み、幻想的なコケの森、眺望の開ける白駒の奥庭など、変化に富んだ景観も魅力です。今回は麦草峠を起点に、ぐるりと反時計回りに一周するコースをご紹介していきます。

■コース概要
麦草峠駐車場→(5分)→麦草ヒュッテ→(30分)→丸山の森→(15分)→丸山→(30分)→高見石小屋→(5分)→高見石→(5分)→高見石小屋→(20分)→高見の森→(10分)→白駒池→(10分)→もののけの森→(5分)→青苔荘→(10分)→白駒の奥庭→(5分)→黒曜の森→(10分)→麦草ヒュッテ→(5分)→麦草峠駐車場

白駒池キャンプ指定地

住所
長野県南佐久郡佐久穂町畑3220-46
交通
中部横断自動車道八千穂高原ICから国道299号を麦草峠方面へ、峠の手前右手に駐車場、八千穂高原ICから25km
営業期間
通年(10~翌4月は要連絡)
営業時間
イン8:00~17:00、アウト10:00
休業日
不定休
料金
サイト使用料=大人800円、小学生650円、トイレ使用料1人100円/

登山者が少ない「丸山の森 」でコケの森を独り占め

登山者が少ない「丸山の森 」でコケの森を独り占め
コケの林床を眺めながら、丸山の森・丸山を目指す

それでは、麦草峠からハイキングのスタートです。途中に麦草ヒュッテ を経由し、5分も歩けば分岐が現れるので、標識に従って丸山方面へ進みましょう。スタートポイントである麦草峠からの道のりは標高差が少ないため、良い足慣らしになりますよ。

分岐から5分もすると、周囲には針葉樹のコメツガ やシラビソ などが覆いかぶさり、針葉樹林の原生林へと入ります。 林床には緑鮮やかなコケがびっしり。雨に濡れて青々としている様子を楽しみながら進みましょう。

スタートから35分ほどで第一ポイントの「丸山の森」へ到着です。

コケでびっしり覆われる「丸山の森」。八ヶ岳山麓に根付く太古の自然

丸山の森を含むこの八ヶ岳山麓は、日本に生えるコケの4分の1以上が生息していることで知られています。その種類は実に485種類!2008年には日本蘚苔類学会( にほんせんたいるいがっかい)より「日本の貴重なコケの森」 として選定され、保護されているエリアです。

通常、登山やハイキングは晴れている日に行くことが多いですが、ここではむしろ、霧が出ており、少し雨が降っている日のほうがコケの風情を楽しむことができます。

雨に洗われて潤いに満ち、緑が溢れる林床は、いつまで眺めていても飽きない極上の癒し空間なのです。

いたるところに見られる、コケと倒木が作る神秘的なワンシーン

中でもこの「丸山の森」はハイキングコースの一番外れにあるため、ハイカーが少なく、手付かずの自然を独り占めすることができます。雫滴る瞬間や、朽木に添えられるコケ、数種類のコケが織りなす絨毯など、コケのミクロな世界に引き込まれることでしょう。

丸山の森を登りきった場所が、丸山山頂です。ここからあとは下り基調。眺望はほとんどないため、サクッと通過しましょう!

岩峰・高見石の山頂を経て、霧雨で輝く「高見の森」 へ

岩峰・高見石の山頂を経て、霧雨で輝く「高見の森」 へ
入山から1時間20分、ハイキングコースの中継地点・高見石小屋に到着

美しい原生林とコケが織りなす景色を楽しみながら、丸山より30分ほど進んでいくと、二つ目の山頂「高見石」周辺に到着します。赤い屋根の高見石小屋が目印です。

写真からもわかるように、登山道は岩の上を歩く道となっており、雨の日は特に滑りやすいので注意が必要です。石の上より、できるだけ雨で固まった砂の上を歩く方が滑りづらくなりますよ。

幻想的に浮かび上がる「白駒池」。高見石山頂より

高見石はその名の通り、樹林帯より少し高台に位置する展望岩。眼下に見える白駒池をはじめ、八ヶ岳の眺望、北アルプスなどが広がり、北八ヶ岳随一の展望台として親しまれています。

霧が出ているときには、白駒池が浮かび上がる幻想的な風景も楽しめます。山頂で天候が悪いとがっかりしてしまいますが、太古の自然が根付く八ヶ岳では、天候が悪いときでも味わい深い景色が見られます。

雨に洗われた「高見の森」は言葉に例えられない美しさ

高見石の山頂を辿り着いたら、白駒池まで降りていきましょう。この区間は徒歩30分ほどです。

途中、「高見の森」というポイントを通るのですが、ここが本当に絶景!角度のついた道には、視野いっぱいに美しい樹林とコケの緑が広がります。霧雨に洗われた後、一層鮮やかとなった風景を前に、思わず立ち尽くしてしまうでしょう。

随所に見られる倒木も、この原生林の中ではまるで一つのオブジェのようで絵になります。

白駒池の畔を歩き、八ヶ岳が誇る「もののけの森」に出会う

白駒池の畔を歩き、八ヶ岳が誇る「もののけの森」に出会う
八ヶ岳の火山活動の証。標高2,000m以上で国内最大規模を誇る「白駒池」

高見の森から10分ほど下り切ったところで、白駒池畔を歩くハイキングコースと合流。
この「白駒池」は、背後にある白駒峰が噴火してできた堰止湖(せきとめこ) で、標高2,000m以上にある池としては国内最大規模を誇ります。池畔の道からのぞく、対岸の原生林の風景が印象的です。

白駒池北東部の通称「もののけの森」。まるでジブリの世界観

合流地点から400m、10分ほど歩くと池の北東部にたどりつきます。そこから少し池畔をそれて、再び樹林帯へ入っていきましょう 。 ここは「もののけの森 」と呼ばれる、白駒池を代表する景勝地 。ゴツゴツした溶岩の地面や、原生林の根を覆うように、コケがびっしり繁茂しています。

まるで神々が住んでいそうなこのスポットは、どこまでも静かで神秘的。太古から根付いている自然の力強さと美しさが感じられます。ひとたび深呼吸をすれば、自然のパワーが体に流れ込んでくるような気持になりますよ。

多くのハイカーに愛される「青苔荘」でホッと一息。

もののけの森から道なりに進んで行くと、高見石小屋に続いて、二つ目の山荘「青苔荘(せいたいそう) 」に到着です 。この山荘は、多くのハイカーに長年愛されている八ヶ岳登山の憩いの場。その証拠に、山小屋の中にはハイカーたちの写真がずらり!

青苔荘ではお菓子や飲み物を購入できるほか、食事をすることもできます。特に、ゴロゴロとした野菜がたっぷりと入った濃厚なカレーが絶品です!

「白駒の森」でコケの回廊の情緒を味わい、奥庭・黒曜の森へ

「白駒の森」でコケの回廊の情緒を味わい、奥庭・黒曜の森へ
巨木とコケが織りなす、美しい回廊「白駒の森」

青苔荘で一息ついたら「白駒の森 」を通過する木道を歩いていきます。麦草峠 でもっとも人通りが多い道とあって、とても整備されているのがポイント!

整備されているとはいえ、原生林やコケの見応えは損なわれていません。むしろ、木道と周囲の景色の調和が素晴らしく、巨木の樹肌が見えなくなるまで繁茂するコケの群生が神秘的です。

樹林帯で唯一開けた「白駒の奥庭」。壮大な原生林を一望できる

木道に沿って歩いて行くと、一区間だけ、雰囲気の異なるポイントが現れます。ここは「白駒の奥庭」と呼ばれるスポットで、森林限界* を彷彿させる低いマツや、シャクナゲが群生しているのが特徴です。

鬱蒼とした森だけに開放感が引き立ち、「秘密の場所」という言葉がぴったり。美しい原生林が絵画のように広がっています。

*森林限界:高い木々が生えなくなる限界となる標高(高度)のこと

キラキラとした光沢がある黒曜石。かつて石器の材料として使われていた

そして麦草峠へ戻るまでのラスト区間、「黒曜の森 」へ進みます。こちらもコケの風景が楽しめる場所ではありますが、面白いのは「黒曜石」がたくさん落ちているということ。
黒曜石とは、旧石器時代や縄文時代に石器の素材として使われた石のこと。雨によって洗われると石の光沢が分かりやすく、すぐに見つけることができますよ!

黒曜の森を抜けたら、麦草峠の駐車場に到着。これにてハイキングは終了です。

白駒池は雨中ハイキングがオススメ!

白駒池は雨中ハイキングがオススメ!
潤いで満たされるコケの風景に見入ってしまう。

晴れている日には、高見石からアルプスの絶景や木漏れ日の原生林が楽しめます。そして雨の日には、潤いに満ちたコケの林床を味わいつつ、神秘的な日本の美を感じられることでしょう。

八ヶ岳・白駒池周辺のハイキングなら、普段歩き慣れていない人でもしっかり準備をすれば大丈夫。今回ご紹介したハイキングコースの中継ポイントは、そのほとんどがGoogleマップに登録されていますので、安心して計画が立てられますね!

天候や密の心配なく楽しめるハイキング。ぜひお試しください!

※備考
・あらかじめ記載した登山届を登山口のポストに提出しましょう。
・トイレは駐車場のトイレで済ませておくと安心です。途中の山荘でもトイレが利用できます(有料)。
・歩きやすい服装と、スニーカー以上の靴で臨んでください。
・降水確率が30%以上の場合は、レインウェアの持参をお勧めします。
・食料や水分は途中の山小屋でしか買えないので、十分に持参しておいてください。

取材・文・写真:土庄雄平

あのロングセラー登山地図「山と高原地図」がアプリに!山と高原地図アプリ

あのロングセラー登山地図「山と高原地図」がアプリに!山と高原地図アプリ

『山と高原地図』シリーズは、1965年より毎年発行、登山を楽しむ方に長く親しまれ続けているロングセラー登山地図です。谷や尾根、等高線や登山道を綿密に描き、実踏調査に基づいた登山ルート・コースタイムなどを掲載、全国の名山約1,500を紹介したもので、ラインアップは全61点にのぼります。

『山と高原地図』アプリは、この慣れ親しんでいる地図をお手持ちのスマートフォンでも見られるだけでなく、GPSを使って地図上で現在地を確認したり、自分が登ったルートの記録をする、といった機能により 登山・ハイキングがますます楽しくなるアプリになっています。記録したルートをメールで送信して、PCで登山記録を管理したり、登山コミュニティサイトに投稿して記録を共有することもできるので、活用方法は無限に広がります。地図データは全てスマートフォン本体に格納しますので、携帯電話の電波が届かない山中でも安心して使用することができます。

>>「使ってみよう!山と高原地図」はこちら
>>各商品の収録範囲はこちら

山と高原地図[地図単品購入版]

山と高原地図ホーダイ[サブスク版(月額版)]

信州・清里の新着記事

【大人編】長野市の遊ぶところ2024 とっておきスポット9選!

善光寺をはじめとする歴史情緒あふれる史跡が多いことで知られる長野市。そんな長野市で大人の旅を楽しんでみたいと思いませんか? 今回は長野市の大人向けおすすめスポットを9選ご紹介します。絶対に食べて...

【長野 松本・ディナー】松本で夜を楽しめるとっておきのお店10選!松本でディナーをするならどこがいい?

仕事や観光の帰りに長野の松本で夜ごはんを食べたいけど、いたるところに飲食店があるから迷ってしまった経験はありませんか? そこで今回は、松本でおすすめのディナーのお店をご紹介いたします。 昭和初...

長野の神社・お寺ランキングTOP30【2024年】人気の神社・お寺を発表!

今回は、長野県の神社とお寺をランキング形式でご紹介します。 神社とお寺の順位は、地図&ガイドブックの昭文社・公式アプリ「まっぷるリンク」の利用状況から決定。 みんなが調べた“本当に行きたい神社...

【松本市・日帰り温泉】絶景露天風呂や泉質自慢、設備充実!松本市で人気の日帰り温泉12選をご紹介

今回は松本市で人気の日帰り温泉をご紹介します。 白樺林に囲まれた森の中にある「乗鞍高原 湯けむり館」や新緑や紅葉の季節には美しい景色を眺めながら入れる「白骨温泉公共野天風呂」など泉質はもちろんで...

【長野県・紅葉】例年の見頃時期やイベント、ライトアップなど情報満載!長野のおすすめ紅葉スポット9件

2023年の長野県のおすすめの紅葉スポットをご紹介します。 見頃時期や開催されるイベント、ライトアップ情報などから、お好みの紅葉スポットを探すことができます。 写真や営業時間、アクセス情報など...

【無料のWEBマガジン】月刊まっぷる9月号:特集は「全国ご当地麺選手権」「今どき最旬ソウル」「ばってん少女隊 博多推しガイド」

国内・海外の旅行情報を紹介する、雑誌スタイルの旅行ガイドシリーズ『まっぷる』から、月刊WEBマガジンが登場!...

【無料のWEBマガジン】月刊まっぷる8月号:特集は「台北グルメ旅」「信州で避暑の旅」「HAPPYキャンプ」

国内・海外の旅行情報を紹介する、雑誌スタイルの旅行ガイドシリーズ『まっぷる』から、月刊WEBマガジンが登場!...

【長野・安曇野のそば】穂高・豊科・明科中川手の旨いそば屋さん7軒!郷土料理も味わうべし

そば王国・信州は安曇野。美味しいそば屋さんが数多くある中からおすすめをご案内します。 「そば処上條」では信州産の玄そばを石臼で挽き、安曇野の天然水を加えて打つそばが絶品。「一休庵」では「なごり雪...

茅野観光のキーワードは「縄文」! 建築ラバー必見の高過庵や縄文のビーナスに出会う旅

茅野市の観光といえばビーナスラインドライブをまず思い浮かべる人も多いですが、じつは「縄文観光スポット」の宝庫! 信州を代表するリゾートエリアにお出かけする前に、歴史がもっと好きになる、とっておきのス...

浅間山の麓の町、御代田の新スポットMMoPへ こだわりのショップをナビゲート!

浅間山の麓でのんびりとした雰囲気が魅力の御代田町。 軽井沢からも近く、2018年から開催されているアートフォトの祭典「浅間国際フォトフェスティバル」では、2万人を超えるほど多くの人が来場することで話...
もっと見る

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

『山と高原地図』シリーズは、1965年より毎年発行、登山を楽しむ方に長く親しまれ続けているロングセラー登山地図。
谷や尾根、等高線や登山道を綿密に描き、実踏調査に基づいた登山ルート・コースタイムなどを掲載、全国の名山約1,500を紹介したもので、ラインアップは全61点にのぼります。
まっぷるトラベルガイドでは、登山、トレッキング、ハイキングに関する情報や、おすすめの登山ギアについて紹介していきます!