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奈良の都としての繁栄は大和川があったから

その昔、奈良で都が栄えたのは、大和川があったからといっても過言ではありません。

大和川が運んだ土砂は農業に適し、大陸から稲作が伝わった時代以来、流域では多くの水田が開かれ、集落ができました。漁師は大和川を通って大阪湾まで漁に出るなど、交通路としても利用されました。

また、物資だけでなく海外からの知識や文化も、大和川を通ってもたらされたのです。

奈良の都としての繁栄と仏教伝来

『日本書紀』によれば、日本に仏教が伝わったのは欽明(きんめい)13(552)年のこととされます。場所は三輪山南西部、現在の桜井市金屋(かなや)地区の大和川(初瀬川)流域で、百済(くだら)の聖明王(せいめいおう)の使者が大和川を上り、釈迦仏の仏像や経典をもたらしたといいます。

仏教普及のために奈良の都へ降り立った聖明王の使者

聖明王の使者は、なぜ大阪湾から離れた内陸の地まで来なければならなかったのでしょうか。

『日本書紀』には、欽明元(540)年に「都を磯城郡の磯城嶋(しきしま)に遷し、磯城嶋金刺宮(しきしまのかなさしのみや)とした」とあります。つまり、当時欽明天皇がこの地に住み、使者は仏教普及の許可を得るために、天皇に直接拝謁する必要があったのです。

現在、この流域は公園として整備されており、「仏教伝来之地」や「磯城嶋金刺宮跡伝承地」の碑も建っています。

奈良の都に入った海外からの使者

推古16(608)年には、遣隋使の小野妹子(おののいもこ)とともにやって来た隋の官人の裴世清(はいせいせい)も、大和川を上って飛鳥宮(あすかきゅう)に来たと伝えられています。このように、中国や朝鮮の使者は、瀬戸内海を通って大阪湾に入り、ことごとく大和川をさかのぼって都に入ったのです。

この頃、当地には日本最古の市といわれる「海石榴市(つばいち)」もありました。海石榴市には「山の辺の道」などの街道も交わっており、人も物資も多数往来し、大変なにぎわいを見せていました。

遣隋使の航路

遣隋使の航路

仏教が伝来した頃、外交使節は大阪湾にあった港、難波津で川船に乗り換え、大和川を遡上して奈良の都に入りました。

また小野妹子ら遣隋使が帰国した際には、朝廷が75頭もの飾り馬とともに盛大に迎えたと『日本書紀』に記されています。

奈良の都の繁栄は大和川流域とともに

隋の使者をはじめとした大陸から来た使節は、一定期間、海石榴市などの衢(ちまた)(分かれ道、交差点の意味)にとどまることが定められていました。これには、日本には悪霊を衢で食い止めるという思想があり、海外から穢(けがれ)を都に持ち込ませないための禊(みそぎ)をさせる意味があったと考えられます。

このことは同時に、大和川流域の市場の繁栄を使者に見せることで、日本の国力をアピールする目的もあったのでしょう。大和川は外交の要衝としての役割も果たしていたのです。

江戸時代の大和川

江戸時代に入ってからも、大和川の舟運は栄えました。

元和6(1620)年と寛永10(1633)年の大洪水で付近は大きな被害を受けましたが、その復興のために、大阪の志紀郡の代官・末吉孫左衛門長方(すえよしまござえもんながかた)が、柏原から京橋まで貨物を運ぶ船を運航させました。

この柏原船は40隻で始めたものが、その4年後には70隻まで増える大成功を収め、経済の発展に貢献しました。

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<コラム>
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