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武甲山は巨大な石灰岩体として成り立つ

武甲山は巨大な石灰岩体として成り立つ
上部の白い部分は石灰岩の採掘場。採掘が進んだ結果、標高は1336mから約1295mに低くなった

ではなぜ、巨大な石灰岩体が秩父の地に現れたのでしょうか。石灰岩の主成分は、炭酸カルシウム(CaCO₃)です。このもとになったのは、約2億3000万年前に南洋の火山島に形成されたサンゴ礁(サンゴや海洋生物の骨などが堆積したもの)なのです。

地球表面には、何枚もの厚くて固いプレート(地殻と上部マントル)が載っています。海洋プレートの海洋地殻は、海嶺(海底火山)で生まれ、やがて移動して大陸プレートに衝突するとプレート境界で海溝へと沈み込みます。ここを沈み込み帯と呼び、火山や造山活動、地震などの地学現象が引き起こされます。

秩父の石灰岩のもとになったサンゴ礁は、北上する海洋プレートに載って北へ移動。海洋プレートが海溝で大陸プレートの下へ沈み込むときに、沈み込めない火山島やサンゴ礁は、はぎとられるように日本列島のもとになった陸側に押し付けられていきました(付加体(ふかたい))。これが次々と付加する地層に押されて隆起し、サンゴ礁由来の石灰岩体が秩父の山奥に移動してきたのです。

武甲山資料館

住所
埼玉県秩父市大宮6176羊山公園内
交通
西武秩父線西武秩父駅から徒歩15分
料金
大人200円、小・中学生100円(25名以上の団体は大人100円、小・中学生50円、障がい者半額)

武甲山の成り立ちを目撃できる橋立堂

武甲山の石灰岩の山の南側には、火山噴出物でできた玄武岩が分布しています。このことからも、武甲山は南の暖かい海に浮かぶ火山島であったと推察できるのです。

その成り立ちを目撃できる場所が、武甲山西端に位置する秩父札所28番「橋立堂」にあります。ここでは、そそり立つ石灰岩の白い大岩壁と、黒っぽい玄武岩の境目を見ることができます。まず玄武岩の火山島ができ、そこにサンゴ礁が成長し石灰岩体になった過程を目の当たりにできるわけです。

石龍山橋立堂(札所28番)

住所
埼玉県秩父市上影森675
交通
秩父鉄道浦山口駅から徒歩15分

武甲山以外の石灰岩の山々

じつは秩父山地では、武甲山以外にも、 石灰岩が西北西〜東南東方向に断続的に露出しています。とくに武甲山から西北西方向には白石山、二子山、叶山と石灰岩体の突出したピークが連なります。

このように直線状に並んでいるのは、武甲山と同じように、海洋プレートの沈み込み帯で付加したためと考えられます。

石灰鉱山が開かれた白石山と叶山

このうち白石山と叶山では石灰鉱山が開かれ、叶山鉱山は現在も稼働中です。ここでは地下に通されたベルトコンベアで、何と約23㎞先のセメント工場まで石灰岩を搬送しています。

白石山(和名倉山)

住所
埼玉県秩父市大滝
交通
秩父鉄道三峰口駅から西武観光バス三峯神社行きで25分、秩父湖下車、徒歩6時間
料金
情報なし

石灰岩が険しい地形をつくる二子山

石灰岩は、橋立堂の大岩壁のように、険しい地形をつくることも多いのですが、二子山はその典型です。山名のとおり、西岳(1166m)と東岳(1122m)の2峰からなり、高さ100m以上の石灰岩の岩壁が立ち上がっています。登山道は難所が続く上級者向けで、ロッククライミングも盛んです。

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