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【埼玉の砂丘】河畔砂丘とは?

河川には上流の小石や土砂を運搬するはたらきがあります。小石や土砂は流される過程で、どんどん細かくなり砂粒になります。

平野部は地形の傾斜が緩やかなため、川もゆったりと流れます。そのため砂が堆積しやすいのです。とくに川が蛇行している部分では、蛇行の内側に砂が大量に堆積し、砂洲(さす)と呼ばれる地形が発達します。

砂洲の砂が冬の季節風(北西風)によって吹き集められ、小高い砂山となったものが河畔砂丘です。

【埼玉の砂丘】河畔砂丘の成り立ち

埼玉県内の河畔砂丘のほとんどは、大落古利根川(おおおとしふるとねがわ)や会(あい)の川(かわ)など、かつての利根川の流路に沿って見られます。形成時期は大きく、平安時代、鎌倉時代、室町時代以降の3つに分けられ、いずれも上流の火山噴火にともない、利根川に大量の火山噴出物が流出したのがきっかけとなっているようです。

いっぽうで、県東部では地盤沈下が起こっており、平安時代に形成された河畔砂丘は、春日部以北では地中に埋もれて見られなくなってしまったともいわれます。

【埼玉の砂丘】県内最大の河畔砂丘・志多見砂丘

県内最大の河畔砂丘は、加須市志多見(かぞししだみ)付近にある志多見砂丘です。会の川の南側に沿うようにして延長約2.5㎞、最大幅約300mの細長い形をしています。

最高地点で標高は 20.4m、それ以外の場所でも20m前後となっています。このあたりの平均的な標高は約15mなので、砂丘部分は5〜10mほど周囲より高くなっています。

鎌倉時代に形成されたと推定され、戦後、砂の採掘などにより多くは失われてしまいましたが、一部は加須市指定名勝・志多見砂丘(1956年制定)として保全されています。

【埼玉の砂丘】志多見砂丘以外の河畔砂丘

志多見砂丘以外の河畔砂丘は、土地利用や市街化などの影響を受けた場所が多く、いわれて初めて気づくような場所が多くなっています。それでも砂質土壌であったり、わずかな起伏が見られたりと、ていねいに観察することで多少の面影を感じることができます。

比較的わかりやすいのは、杉戸町上高野(たかの)〜下高野付近の高野砂丘です。これは、大落 古利根川の東側にあり、全長2.8㎞、幅約85m、最高点の標高は14.4m、周辺の低地との高低差は7.2m。鎌倉時代〜室町時代に形成されたものと推定されています。

ほかには、春日部市小渕(こぶち)付近の小渕砂丘でしょうか。こちらは全長2.1㎞で3つの砂丘が並んでいます。東側砂丘列は平安時代、中央の列は鎌倉時代、西側の列は室町時代以降に形成されたと見られます。最高点の標高は18.1mで低地との高低差は9.7mです。

その他、久喜市には西大輪(にしおおわ)砂丘や高柳(たかやなぎ)砂丘、羽生市には新郷(しんごう)砂丘岩瀬(いわせ)砂丘砂山砂丘などが形成されています。

羽生市〜杉戸町に分布するおもな河畔砂丘

羽生市〜杉戸町に分布するおもな河畔砂丘
国土地理院標準地図(タイ ル)上に、産業技術総合研 究所地質調査総合センター 「20万分の1日本シームレ ス地質図V2」にある「砂丘」 情報をプロット

埼玉県東部、かつての利根川の流路付近には河畔砂丘が形成されています。宅地化などの影響で多くは失われていますが、志多見砂丘(加須市)を筆頭にいくつかまだその姿を確認できます。

自然遺産として、後世に残すための整備も求められています。

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