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「和同開珎」鋳造へ~日本初の流通貨幣~

秩父で発見された和銅は、708(慶雲(けいうん)5)年1月11日、朝廷に献上されました。すると元明天皇は和銅採掘を祝し、元号を「慶雲」から「和銅」へと改元。同年8月には、秩父産の和銅を原料として「和同開珎(わどうかいちん)」が鋳造されることになりました。

和同開珎は、日本で最初の流通貨幣とされており、そのため秩父市黒谷が「日本通貨発祥の地」と称されているわけです。

和同開珎とは?

和同開珎の直径は約24㎜で、大きさは現在の500円玉硬貨と同程度。中央に正方形の穴が開いた円形方孔のコインで、表面には「和・同・開・珎」の4文字が時計回りに刻印されています。これは、唐で流通していた開元通宝(かいげんつうほう)を元にしたデザインです。

和同開珎以前にも貨幣が鋳造されていた?

じつのところ、これに先立つ698(文武2)年、因幡国(いなばのくに)(鳥取県)で銅鉱石が産出し、朝廷に献上した前例が残っています。

また、貨幣に関しても、平安京より古い時代(694〜710年)に都が置かれた藤原京跡(奈良県橿原市(かしはらし))から富本銭(ふほんせん)という銭貨が見つかっており、和同開珎よりも前に硬貨が存在した可能性は高そうです。

1999(平成11)年に飛鳥池(あすかいけ)遺跡(奈良県明日香村)から33枚もの富本銭が見つかった際には、その鋳造が700年以前であることが確認され、富本銭こそが「日本最初の貨幣」ではないか、ともいわれました。

しかし、富本銭の流通量と流通地域が限定的であったことから、現在でも和同開珎は「日本最初の流通貨幣」と称されています。鉱山からの銅の安定供給があって初めて、貨幣を広い範囲で流通させることが可能になったのでしょう。和同開珎を、あくまでも「流通貨幣」という言い方をしているのは、そのような理由からなのです。

和同開珎と日本貨幣経済のスタート

元明天皇がわざわざ改元までして和銅産出を祝したのは、貨幣経済への移行を広く喧伝する狙いがあったのではないかとも考えられています。それまで物々交換が主流だった日本の経済は、和同開珎の鋳造以降、貨幣経済へとシフトしていきました。

そして奈良〜平安時代の律令政府は、和同開珎のあとにもさまざまな貨幣を鋳造していき、958(天徳2)年の乾元(けんげん)大宝まで合計12種類の貨幣がつくられています。これを皇朝十二銭(こうちょうじゅうにせん)と呼びます。なお、富本銭は皇朝十二銭には含まれません。

2008(平成20)年、和銅遺跡への最寄り駅は、かつての「黒谷駅」から「和銅黒谷駅」へ改称されています。これは、和銅奉献1300年を記念してのことでした。

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