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おとぎ電車は発電所建設のために敷かれた線路

天ヶ瀬ダムの完成は1964年。遊園地について述べるためには、大正時代までさかのぼらねばなりません。

1924年、現在の天ヶ瀬ダムのおよそ1㎞下流に志津川発電所が建設されました。建設に先立ち、その約3.6㎞上流に大峰堰堤(おおみねえんてい)が造られました。同時に工事資材の運搬用として、現在のJR奈良線沿いまで約9.6㎞の線路が敷設されます
このうち、志津川発電所〜大峰堰堤間の線路は堰堤完成後も残され、電力会社社員や資材がトロッコで運ばれていました。

トロッコの走る路線は、とにかく見晴らしがよかったのです。緑豊かな渓谷を宇治川に沿って走るのだから当然です。
1950年、これに目をつけた京阪電車が線路を借り受け、遊覧用鉄道として「おとぎ電車」を運行。沿線に宇治川遊園地を整備しました

おとぎ電車の人気と活躍ぶり

おとぎ電車は大人気で、1958年の年間乗客数は16万人を数えたという記録もあります。この年10月の宇治市の人口が約4万6000人ですから、その人気ぶりには驚かされます。
カラフルにペイントされた電気機関車が7両の客車を引くという編成で、平日には地元の人の足としても活躍したといいます。

ちなみに当時、塔の島〜志津川発電所間には、同じ京阪電鉄によってプロペラ船が運航されていました。
また、大峰堰堤〜大津市外畑間にも遊覧船が走っており、そこからさらに石山までバスで移動するという一大観光ルートが形成されていました。

天ヶ瀬ダムの築造とおとぎ電車のその後

その後はどうなったでしょうか。

プロペラ船は就航した1953年8月に南山城水害によって運航停止。おとぎ電車も、翌月の台風13号の豪雨によって運行できなくなりました

地元の強い要望もあり、おとぎ電車は翌年4月に運航を再開しました。ですが、先の台風13号の被害を受けて天ヶ瀬ダムの建設が計画されると、おとぎ電車の線路はほぼ水没することが決定

1960年5月31日に運行が終了し、1964年にダムが築造されると、すべてが底に沈んでしまったのです。

天ヶ瀬ダムにかけられた吊橋は京都府産のヒノキでリニューアル

観光振興を目的に、1942年に現在の天ヶ瀬ダムの下流に架けられた天ヶ瀬吊橋。95年に修繕工事が行われたものの、耐用年数を超過し、2020年の年明けより改修工事が行われました。

新しい橋は4月に完成し、すでに一般の通行も可能。もとのワイヤーロープを活用し、木材部分をすべて天然木で更新しました。とくに、踏板や高欄部分には京都府産のヒノキ材が使われており、さながら高級家具のようなピカピカの橋が悠久の風景に映えています。

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・観光のメッカ東山の地形(地獄の入り口六道珍皇寺)
・失われた巨椋池/天橋立はなぜあのような地形になったのか
・舞鶴が重要港湾となった地形的な秘密
・霧のまち亀岡(亀岡盆地)

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・日本初の一般営業用電車が通った京都市電
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・古代日本を支えた渡来人と京都の関係
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・南北朝動乱の始まり 笠置山の戦い
・信長、光秀、秀吉…みんな京都で死んだ
・幕末の騒乱の舞台となった京都
・近代化にいち早く着手!日本初の博覧会は京都の寺で開かれた

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Part.4 京都で育まれた産業や文化

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・学問の都・京都の大学
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