いっぽうのミナミは、1626年に現在の南船場（みなみせんば）周辺から道頓堀川南岸へと芝居小屋や遊郭が移されたのをはじまりとします。幕府公認の遊郭は新町遊郭だけでしたが、道頓堀川付近にも非公認の遊郭が点在。これが「南地五花街」で宗右衛門町（そうえもんちょう）、九郎右衛門町（くろうえもんちょう）、櫓町（やぐらまち）、坂町（さかまち）、難波新地の総称です。

南地五花街に隣接する千日前は、もともと墓地や刑場のある場所でした。明治時代に入って墓地は阿倍野へ移され、刑場が廃止されると、市は「灰処理代」という補助金を出して土地の購入を促します。南地に近いこともあって見世物小屋や飲食店が立ち並び、やがてミナミの仲間入りを果たすのです。

キタとミナミは明治から昭和初期まで活況を示しますが、太平洋戦争の空襲で甚大な被害を受けました。

戦後焼け跡に開かれた闇市（やみいち）をルーツに持つのが京橋（きょうばし）と鶴橋（つるはし）、そして十三です。これらの繁華街に北新地と南地、そして新世界を加えたエリアは、いわば中高年が好む場所といえます。

そんな「おじさんたちのオアシス」に対抗するような形で活況を帯びつつある場所もあります。 そのひとつが裏ナンバ。もともとは倉庫街だった場所に、安い賃料で立ち飲み屋などの飲食店がつくられたのがはじまりです。また、梅田のとなりに位置する福島（ふくしま）も工場や倉庫の多い街だったのが、現在は注目スポットです。

また、見逃せないのは天満（てんま）です。「大坂三郷」と呼ばれた古い町ですが、近年は路地裏に若者をターゲットにした飲食店が増えつつあります。難波新地の旧歌舞伎座裏は「座裏（ざうら）」 と呼ばれ、新しい店が続々オープンしています。

大阪府の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。大阪府の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載！

【見どころ―目次より抜粋】
Part.1：地図で読み解く大阪の大地
大阪の歴史は水を起源とするとされる理由
大阪府の属する関西・近畿・畿内の違い
こんなに違った古代の大阪! 消えた河内湾と河内湖　ほか

Part.2：大阪を駆ける充実の交通網
西国へ、京都へ、熊野へ府下を通る旧街道の痕跡
どの道路が、なぜ混むのか？大阪の道路網の現状
徹底比較! 大阪の私鉄（阪急電鉄と阪神電鉄、京阪電気鉄道、近畿日本鉄道、南海電気鉄道）　ほか

Part.3：大阪の歴史を深読み!
幕府軍が落とせなかった千早赤坂城の秘密
織田信長に恭順して残された富田林寺内町
天下の台所として日本経済を支えた中之島　ほか

Part.4：大阪で生まれた産業や文化
ダイハツ、パナソニック・・企業城下町の今
万博、花博、EXPO2025など国際博覧会の最多開催地・大阪
偉人たちが好んで食したなにわの伝統野菜　ほか

<コラム>
データで分かる74市区町村 人口と所得、観光、工業・農業・漁業
絵図で見る 大阪の川と「八百八橋」
鳥瞰図で見る 100年前がわかる大阪市パノラマ地図
鳥瞰図で見る 吉田初三郎が描いた90年前の大阪府
鳥瞰図で見る 大阪周辺にある歴代天皇・皇族の陵墓
絵図で見る 大坂冬の陣における諸将の配置
一見の価値あり! ヘンチクリンな建築物