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日蓮の故郷・鴨川で生まれた日蓮宗

なかでも、千葉県とゆかりの深いのは日蓮宗です。開祖の日蓮は、1222(貞応元)年に安房国小湊(鴨川市)に生を受けました。

日蓮は12歳のときに天台宗清澄寺(せいちょうじ)(鴨川市清澄、現在は日蓮宗)に入山し、やがて16歳で道善法師(どうぜんぼうし)を師として出家得度(とくど)。その後、鎌倉(神奈川県鎌倉市)や比叡山延暦寺(滋賀県大津市)などへの遊学を経て、清澄寺へ戻り、清澄山の旭が森山頂で「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」 の題目を唱えて立教開宗に至りました。しかし、他宗派へ対する批判を辞さない日蓮のスタイルは、他宗派から反感を買ってしまいます。

さらに、日蓮は『立正安国論(りっしょうあんこくろん)』を著し、「すべての災害は民衆や幕府の誤った信仰が原因」である旨を幕府に建白。これにより幕府や他宗派からの弾圧が激化し、草庵が焼き討ちにあったり、流罪になったり、襲撃されたり、斬首刑を宣告されたり……と、日蓮は数々の法難に遭うことになります。

日蓮生誕の地・千葉県にある日蓮ゆかりのスポット

ともあれ、日蓮生誕の地である千葉県には日蓮ゆかりのスポットが多くあります。

鴨川市小湊にある日蓮の生家跡には、日蓮の弟子・日家(にけ)が建立した誕生寺があります。また、小松原で地頭の東条景信らに襲撃され(小松原法難)額を斬られたときに日蓮が退避した場所には、日蓮寺(鴨川市内浦)が建てられています。そのとき日蓮が血止めに使った岩砂は「血止めの霊砂」として知られ、現在でも岩砂を求めにくる信徒がいるといいます。

日蓮生誕の地・千葉県にある日蓮ゆかりのスポット

日蓮聖人降誕の地に建立された、日蓮宗の大本山・誕生寺。2021(令和3)年には、日蓮降誕800年を迎える

鴨川市小湊・日蓮ゆかりの地

鴨川市小湊・日蓮ゆかりの地

生家跡の誕生寺、「血止めの霊砂」の日蓮寺、日本最古の聖人(日蓮)立像が安置されている高生寺など、鴨川市小湊地区には日蓮ゆかりの寺社が多くあります。

鴨川市小湊・日蓮ゆかりの地

1264(文永元)年、東条景信らに襲撃され弟子の鏡忍坊、信者の工藤吉隆公が殉死し、日蓮も傷を負った小松原法難の地に、その後開創された鏡忍寺

鏡忍寺

住所
千葉県鴨川市広場1413
交通
JR外房線安房鴨川駅から鴨川日東バス浦の脇行きで6分、鏡忍寺入口下車、徒歩5分
料金
情報なし

誕生寺

住所
千葉県鴨川市小湊183
交通
JR外房線安房小湊駅から鴨川日東バス行川アイランド・興津駅行きで3分、誕生寺入口下車、徒歩5分
料金
堂内拝観料=大人500円、小人100円/宝物館=大人500円、小人100円/

日蓮と中山法華経寺

市川市中山にある中山法華経寺 (なかやまほけきょうじ)は、日蓮が最初に開いた寺で、日蓮宗の六大本山のひとつとされています。国の指定重要文化財に指定されている法華堂は、室町時代末期の創建といいます。日蓮に関係した遺品が多く残されていて、日蓮みずからの筆による『立正安国論』や『観心本尊抄』は、いずれも国宝に指定されています。

なお、境内の五重塔は、江戸時代初期に加賀藩主・前田利光から寄進されたもの。本院の奥には鬼子母神堂があり、江戸時代には子育ての守護神として崇められ、江戸三大鬼子母神のひとつに数えられました。

日蓮と中山法華経寺

国の重要文化財に指定されている大本山法華経寺の五重塔

大本山法華経寺

住所
千葉県市川市中山2丁目10-1
交通
JR総武線下総中山駅から徒歩8分
料金
開帳=3000円~/加持=5000円~/

日蓮宗寺院の密集地域が千葉にある理由

日蓮ゆかりの寺が多いゆえに千葉県内には日蓮宗が多いわけですが、とりわけ茂原市から千葉市緑区誉田町にかけた地域には日蓮宗寺院が集中しています。これは、戦国時代の初頭、上総国土気城(千葉市緑区土気町)の城主・酒井定隆が行った宗教政策に起因します。かつて、定隆が船で東京湾を渡った際、暴風雨に見舞われましたが、同船していた僧が 「南無妙法蓮華経」の題目を唱えたところ、たちどころに風雨が収まったといいます。

この僧は本行寺(千葉市中央区浜野町)の住職・日泰であり、定隆は自分が出世したら領民すべてを日泰の門徒にすると約束したという逸話が残っています。

日蓮宗への一大改宗「上総七里法華」

やがて土気城主になった定隆は、約束どおりに領内の寺院をすべて日蓮宗に改宗させました。領民(や税)を把握するために寺社を利用した面もあるでしょう。しかし、定隆が日泰に深く帰依していたのも事実でしょう。貞隆による強制改宗は数代にわたり、その範囲が東西七里に及んだことから、この一大改宗を「上総七里法華」と呼びます。

日蓮宗の一派(不受不施派)は江戸時代に弾圧を受けますが、日蓮宗は現在まで千葉の庶民に根ざし続けていくのでした。

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【注目1】千葉の地質・地形を徹底分析

・市原市を流れる養老川河岸の露頭に約77万年前の地層チバニアン発見!
・恐竜時代の岩石がむき出しの見て楽しい銚子のジオ巡り
・火山がない県なのに鴨川に海底火山が流出?
・繰り返される巨大地震の爪痕・南房総に発達する海岸段丘
・鋸山の絶景をつくった「房州石」とはどんな石?

・・・などなど、千葉のダイナミックな自然の成り立ちを解説。

【注目2】古代から中世、江戸時代、近現代の千葉の歴史を一望

・ふたつの大型環状貝塚からなる巨大な加曾利貝塚の謎
・32基もの古墳がつくられた富津の内裏塚古墳群とは?
・鴨川市小湊がゆかりの地、高僧・日蓮の波乱に満ちた生涯
・坂東太郎の流れを変えた徳川家康の利根川東遷
・日本地図を完成させた佐原村の名主・伊能忠敬の素顔
・廃藩置県で26県もあった千葉県域をどうやって統一?

・・・などなど、千葉の歴史のポイントがわかる。

【注目3】千葉を駆け巡る鉄道網をはじめ、千葉で育まれた文化や産業を紹介

・民鉄最高速160キロでスカイライナーが走れる理由
・成田空港線の高架橋は成田新幹線の遺構だった
・登山鉄道も計画された小湊を目指した小湊鉄道
・かつて千葉市の中心駅は京成千葉駅だった!?

・・・などなど、千葉を走る鉄道網の秘密に迫る。

また、銚子港が水揚げ量日本一を誇る理由や明治期最先端の土木技術が光る海の要塞・第二海堡とは?、皐月賞や有馬記念の舞台として知られるJRA中山競馬場の誕生秘話・・・など、千葉県にまつわる文化・産業の面白話もたっぷりと紹介します。

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