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千葉の軍都化は明治政府が推し進めた

明治に入り軍隊が組織されると、千葉県北部の下総台地は演習場として注目されます。とくに、現在の松戸、市川、船橋、習志野周辺には原野が広がっており、演習地に最適でした。

明治政府は、1871(明治4)年、市川の国府台に下士官を養成する機関である陸軍教導団を建て、歩兵、騎兵、工兵の各隊を1カ所に集結させました。1899(明治32)年に教導団は廃止されましたが、ここに3つの野砲兵連隊を移転させました。

また、習志野には近衛師団に属する騎兵旅団2連隊、第一師団に属する騎兵旅団2連隊を配置し、陸軍砲兵射的学校の移転を見越して雑木林だった四街道に駅を設置するなど、千葉県は「軍都」の色合いが濃くなっていきます。千葉市は町の発展を目的に軍隊を誘致し、交通兵旅団司令部・鉄道連隊材料廠の誘致に成功。その後、軽便鉄道(多古線、野田線)も建設されました。

習志野の地名の由来は明治天皇のお言葉

習志野の地名の由来については、1873(明治6)年4月に行われた近衛兵による大演習を起源とする説が有力です。

近衛兵は薩摩藩、長州藩、土佐藩の藩兵を徴集した約1万名の軍隊。明治政府は4年目にして直轄軍隊をもちました。大演習は、下総国旧下野牧の原野(現在の船橋、習志野、八千代市にまたがる地域)で豪雨のなか、2日間にわたり実施されました。

演習を見ていた明治天皇は、旧薩摩藩士の篠原国幹の指揮を賞賛し「篠原に見習え」といったことを受け、「習志野原」と命名されたといいます。

千葉が軍都として首都を守る要塞となった昭和の大戦

昭和に入ると、千葉県の軍備はさらに増強され、松戸、柏、千葉、印旛、四街道、八街、東金、銚子、旭、山武、木更津、茂原、館山などに飛行場が建設されました。

とくに館山海軍航空隊は「館空」と呼ばれ、空母を想定した訓練が行われました。また、館山海軍砲術学校は「館砲」と呼ばれ、パラシュート降下を中心とした訓練が行われました。船橋には海軍の無線通信所、習志野には毒ガス兵器を開発する陸軍習志野学校、県都・千葉にも多くの学校や気球連隊が配置されました。

なお、海軍無線電信所船橋送電所は、日本海軍連合艦隊司令部による真珠湾の攻撃指令「ニイタカヤマノボレ一二〇八」を送信した通信所です。

千葉の軍都化を物語る多くの戦争遺構

大戦末期になると、松戸の飛行場に陸軍飛行師団指揮下の飛行戦隊が所沢から移転し、B-29への体当たりも行われました。旭市と匝瑳市にまたがる香取海軍航空基地においても神風特別攻撃隊・第二御楯隊を編成、攻撃を行いました。

三芳村には特攻機「桜花」の射出場を建設しましたが、桜花が配備される前に終戦を迎えました。同様に、飯沼、外川、勝山、岩井袋、波左間(はさま)、洲崎といった海岸には、海軍特攻基地が置かれ、特攻艇「震洋」や水中特攻艇「海竜」「蛟竜」を配置する準備が進められていました。現在も多くの戦争遺構を見ることができます。

千葉県に配置されたおもな軍施設

千葉県に配置されたおもな軍施設

平野の多い北部には陸軍の基地や学校、飛行場が建設され、入り組んだ海岸線には多くの水上基地がつくられました。なお、木更津飛行場は、米軍側に使用意図があり、あえて爆撃しなかったという逸話があります。おもな軍施設を現代の地図にプロットしています。

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・火山がない県なのに鴨川に海底火山が流出?
・繰り返される巨大地震の爪痕・南房総に発達する海岸段丘
・鋸山の絶景をつくった「房州石」とはどんな石?

・・・などなど、千葉のダイナミックな自然の成り立ちを解説。

【注目2】古代から中世、江戸時代、近現代の千葉の歴史を一望

・ふたつの大型環状貝塚からなる巨大な加曾利貝塚の謎
・32基もの古墳がつくられた富津の内裏塚古墳群とは?
・鴨川市小湊がゆかりの地、高僧・日蓮の波乱に満ちた生涯
・坂東太郎の流れを変えた徳川家康の利根川東遷
・日本地図を完成させた佐原村の名主・伊能忠敬の素顔
・廃藩置県で26県もあった千葉県域をどうやって統一?

・・・などなど、千葉の歴史のポイントがわかる。

【注目3】千葉を駆け巡る鉄道網をはじめ、千葉で育まれた文化や産業を紹介

・民鉄最高速160キロでスカイライナーが走れる理由
・成田空港線の高架橋は成田新幹線の遺構だった
・登山鉄道も計画された小湊を目指した小湊鉄道
・かつて千葉市の中心駅は京成千葉駅だった!?

・・・などなど、千葉を走る鉄道網の秘密に迫る。

また、銚子港が水揚げ量日本一を誇る理由や明治期最先端の土木技術が光る海の要塞・第二海堡とは?、皐月賞や有馬記念の舞台として知られるJRA中山競馬場の誕生秘話・・・など、千葉県にまつわる文化・産業の面白話もたっぷりと紹介します。

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