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三島由紀夫が自決にいたるまで①:陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で立てこもる

しかし、例会には参加せず、早大生の森田必勝ら楯の会会員4人をともなって、午前11時に陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地を訪問します。三島は、事前に東部方面総監部の益田兼利総監に面会の予約を入れており、案内に従って本館2階の総監室に入りました。

そこで持参していた日本刀などを手に益田総監を拘束し、室内に立てこもります。そして、同駐屯地内の全自衛官と、市ヶ谷会館にいる楯の会会員を本館玄関前に集合させ、三島が演説することを要求。妨害すれば総監を殺害し、自決すると脅迫しました。

三島由紀夫が自決にいたるまで②:幕僚との乱闘

異変を察知した幕僚副長の山崎皎陸将補ら幕僚が、総監室の奪還を試みましたが、三島たちと乱闘になります。日本刀や短刀、特殊警棒で攻撃してくる三島たちに対して、幕僚は木刀や素手で応戦しましたが、山崎陸将補を含む数名の自衛官が負傷。強行すると総監の命も危ないと判断して、全員が退去しました。

その後、負傷した山崎陸将補に変わり、もう1人の幕僚副長である吉松秀信一等陸佐が、説得を続けます。同11時25分に、通報を受けた警視庁から機動隊1個中隊が出動。40分には、マイクを通じて、全自衛隊員に本館前に集合するよう指示が出ます。それを機に本館前の広場に自衛官が集まり始め、その数は800人を超えました。

三島由紀夫が自決にいたるまで③:演説と自衛官たちの反応

55分になり、森田と小川正洋が、総監室の窓から本館玄関上のバルコニーに出て、6項目の要求を記した垂れ幕を降ろし、10数枚の檄文をまきました。午前12時、三島はバルコニーに現われ、その先端に進むとマイクを使わずに演説を始め「自衛隊が立ち上がらなきゃ、憲法改正ってものはないんだよ」などと訴えます。

しかし、下から見上げる自衛官からは「降りろ、降りろ」「バカヤロー」「やめろ」といったやじや罵声が飛びました。また、事件を知った報道機関のヘリコプターが飛来し、上空で旋回したため、三島の声は何度もかき消されてしまいます。

三島由紀夫が自決にいたるまで④:演説をやめ「天皇陛下万歳」を三唱

当初、三島は約30分の演説を予定していました。しかし、10分ほどたったところで「まだ諸君は憲法のために立ち上がらないと、見極めがついた。これで俺の自衛隊に対する夢はなくなったんだ。それではここで、俺は天皇陛下万歳を叫ぶ」と述べ、演説を打ち切ります。三島と森田は「天皇陛下万歳」を三唱。総監室に引き上げました。

実はこの日、三島が本当に訴えたかった精鋭の第32普通科連隊は、100人ほどを残して900人が演習に出ており、留守でした。

三島由紀夫の自決と内閣首脳陣・マスコミの反応

三島は、部屋に戻ると服を脱ぎ、上半身裸に。部屋の奥で皇居の方を向いて、緋絨毯の上に正座すると、自ら腹を切り、森田らの介錯により果てます。そのかたわらに置かれたかばんの中には、「益荒男がたばさむ太刀の鞘鳴りに幾とせ耐へて今日の初霜」「散るをいとふ世にもさきがけて散るこそ花と吹く小夜嵐」という遺詠の短冊が入っていました。

この三島の最期に対して、当時の佐藤栄作首相や中曽根康弘防衛庁長官は、常軌を逸した行動だと口をそろえました。また、新聞各社の社説では、三島の思想の異常さを強調。その行動は反民主主義的だと断じています。

市ヶ谷周辺地図

市ヶ谷周辺地図

事件当日、楯の会が例会を行った市ヶ谷会館は、現在も防衛省の西側に隣接しています。三島の生家は、新宿区四谷4丁目22付近で、学習院中等科入学までそこで過ごしました。

最期を遂げた市ヶ谷駐屯地までは直線距離にして1km程度で、戦前は陸軍士官学校などがありました。少年時代の三島は、軍人を身近に感じ、憧れたのかもしれません。

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・関東大震災 被害と復興
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