そうしたなか、昭和初期に「三浦半島１周」という壮大な計画をもつ湘南電気鉄道が創設され、黄金町～浦賀間、金沢八景～湘南逗子（現・新逗子）間を1930（昭和５）年４月に開業。同社を支援する京浜電気鉄道とも連絡輸送を行うことになり、両社は延伸工事に着手しました。翌年12月に日ノ出町で結ばれ、乗り入れを開始しました。

他方、日本初の地下鉄を開業していた東京地下鉄道（現・東京メトロ銀座線）は、新橋～品川間に京浜地下鉄道を敷設し、京浜電気鉄道、湘南電気鉄道と直通運転を行い浅草と浦賀を結ぶ計画を進めていました。

湘南電気鉄道の最初の車両、デ1形は、縦1080㎜、横760㎜、間柱60㎜の大型窓、クロスシートを備え、明るく快適で高性能な画期的な名車でした。

続く京浜電気鉄道のデ71形も同型車を製造。共通するのは車体の長さ16m、幅2.5mの寸法で、これは東京地下鉄道の乗り入れを考慮し、地下鉄車両の標準寸法に合わせたためです。屋根が低く通風器もありませんが、乗り入れの際はパンタグラフを折りたたみ、台車に取り付ける予定だった集電装置で第三軌条（走行用レールとは別に第3の給電用レールを敷設）の地下トンネルに入線するための準備でした。

しかし、浅草～浦賀間の直通運転計画は東京高速鉄道による買収劇、1941（昭和16）年の営団地下鉄発足で東京地下鉄道が解散し消滅。三浦半島１周計画も京急が免許を引き継ぎましたが、西海岸の建設に至らず未完に終わりました。

東京地下鉄道は当時、東洋唯一の地下鉄であり、全鋼製のモダンで優秀な車両をもち、国内で初めて自動改札を導入するなど、湘南電気鉄道、京浜電気鉄道と同様に進取の気性に富む鉄道でした。

高性能車を続々と生み、クロスシート車を原則無料で運行する今の京急を見るに、もしも浅草～浦賀間の直通運転や三浦半島１周計画が実現していたら、より高い水準のサービスや運転が見られたに違いありません。

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