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中央西線の廃線跡に残る愛岐トンネル群

庄内川(土岐川(ときがわ))の渓谷に沿った旧線は、廃止後長らく放置されていましたが、明治期に完成したトンネルが連続する廃線跡には今も13基のトンネルが残り、豊かな自然とともにSLが走行していた、いにしえの姿を彷彿(ほうふつ)とさせます。

13基のトンネルのうち、愛知県側にあるレンガ製の4基と廃線跡はNPO法人・愛岐トンネル群保存再生委員会により大切に保存され、例年、春と秋に定期公開が実施されています。

中央西線の新旧路線と愛岐トンネル群

中央西線の新旧路線と愛岐トンネル群

中央西線の高蔵寺駅から多治見駅にかけた庄内川(土岐川)沿いの旧線(単線だった)には、14基のトンネルが貫いていました。このうち3~6号の4基がNPO法人・ 愛岐トンネル群保存再生委員会によって保存、整備されています。なお、9号トンネルは現在の古虎渓駅です。

中央西線に残る愛岐トンネル群で注目の坑門とは

徒歩で廃線跡を訪れる入場者たちが注目するのは、明治の先人たちが築いたトンネルの坑門(こうもん)と呼ばれる出入口です。重厚なレンガ積みの坑門は迫力があり、そして優美でもあります。 要石(かなめいし)、壁柱(へきちゅう)、笠石(かさいし)、帯石(おびいし)……坑門の構成には、それぞれ部材の役割がありますが、いずれも装飾の意味合いが強いものです。

中央西線の愛岐トンネル群から感じられる先人の情熱とすぐれた技術

トンネルは今も昔も多大な労苦、人力、そして月日を費やしてようやく完成します。重機や近代的な工法もなかった明治時代ではなおさらです。

そして、トンネルは橋梁などほかの建造物とは異なり、すべてが暗い地中にあります。わずか2カ所の坑門の装飾は、工事にかかわったすべての人々のせめてもの主張だったのでしょう。愛岐トンネル群では同じ意匠のトンネルはひとつもなく、先人の情熱が感じられます。

また、廃線後半世紀が経過したにもかかわらず、レンガの崩落がほとんどなく、いかにトンネルがすぐれた構造だったかがわかります。

中央西線の愛岐トンネル群保存の経緯とは

では、荒れ放題だったトンネル群は、いかにして保存されるに至ったのでしょうか。

そもそもは2005(平成17)年、勝川駅の高架化改修工事の際、残存していたレンガ製ホームが撤去されることになり、これを町おこしに活用するイベントを開催。続けて、レンガ製トンネル群の探索が始まり、2007(平成19)年、市民有志により調査が行われ、2009(平成21)年に愛岐トンネル群保存再生委員会が発足しました。以後、本格的に活動を開始し、委員会の尽力により藪のなかにあった廃線トンネルが見事に息を吹き返しました。

トンネル群の価値は認められ、鉄道トンネルとしては東海地方では初めて、3施設が登録有形文化財に認定されました。特別公開への来場者は増え、今では入場に長蛇の列ができるほど。甦った繁栄ぶりに、偉業を成し遂げた明治の先人たちも、目を細めているに違いありません。

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