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豊川用水の建設

転機となったのは1947(昭和22)年、日照りが続いて農作物に深刻な被害が出たため、2年後、国営事業として豊川用水の建設工事がスタート。19年後の1968(昭和43)年、全面的に通水が完了しました。

豊川用水は豊川や天竜川から取水し、東三河から渥美半島へ通じる用水で、幹線水路だけで総延長は118㎞に達します。農業、工業、水道用の用水で、農業用としては稲や野菜、花きなどの栽培に使われています。工業・水道用水は、愛知県や静岡県の浄水場でろ過され工場や家庭に送られています。

豊川用水の幹線水路略図

豊川用水の幹線水路略図

明治用水・愛知用水とともに「愛知の三大用水」をなす豊川用水。現在の水源は、新城市の宇連ダム・大島ダムに加え、宇連ダムが渇水した際には佐久間ダム(北設楽郡豊根村・静岡県浜松市)を介して天竜川からも取水しています。

水の70.5%が農業、23.7%が水道、5.8%が工業に使われています(2016年管理年報)。

豊川用水の整備と水害軽減

いっぽうで、豊川は流路が短いうえに大部分は山間部の谷間を流れており、下流域で川が蛇行していることなどから、たびたび洪水を起こす水害の川でもありました。

江戸時代には、今橋(現・豊橋市今橋町) にあった吉田城の城下町を洪水から守るため、中下流域には霞堤(かすみてい)がつくられています。霞堤は不連続な堤防で、堤の切れたところから一時的に水をあふれさせ、下流域を洪水から守るしくみです。

豊川放水路の完成

しかし豊川は、昭和時代になってもなお洪水を繰り返し、流域の農地開拓が進むにつれて、被害は甚大になりました。こうして豊川の根本的な洪水対策が急務となり、下流部に放水路をつくり、洪水のときに水量の調節を行うという計画が立てられました。

こうして1938(昭和13)年から27年間、途中、太平洋戦争による6年間の中断を経て、1965(昭和40)年に完成したのが全長6.6㎞の豊川放水路です。このとき霞堤は1960年代には9カ所ありましたが、豊川放水路の完成で豊川右岸の5つは完全に閉め切られました。もちろん、地域の洪水被害は格段に緩和されることになったのです。

豊川用水などの供給能力により計画された設楽ダムの建設

愛知県の河川事業の一環として、豊川の河口から約70㎞上流、北設楽郡設楽町で建設計画が推し進められているのが設楽ダムです。重力式コンクリートダムで、高さ約129m、総貯水量9800万m³。完成すれば愛知県内で最大のダムになります。

設楽ダムの目的は、豊川流域の洪水被害を減らす「洪水調節」、東三河地域の農業・水道用水の新たな取水を可能にする「新規水資源開発」、さらに渇水時でも豊川に流れる水の量を一定にすることの3つです。

設楽ダム建設予定地

設楽ダム建設予定地
国土地理院地図(タイル)および国土交通省の資料を元に作成

水色で示したのが、豊川(寒狭川)上流の設楽ダム建設予定地。ダム湖の総貯水量は9800万m³で愛知県最大。ダムの高さは約129m。豊橋鉄道田口線・旧線跡の一部も水没してしまいます。2019年3月までに約96%の用地を取得。

設楽ダムは2026年に完成予定

これまで東三河への水の供給は、おもに豊川用水が担ってきました。しかし近年、気候変動などにより豊川用水などの供給能力が低下。毎年のように水不足が発生し、取水制限が行われています。

他方で設楽ダムの建設計画は1970年代からありましたが、地元の反対から棚上げされてきたのです。

しかしその後の地域の過疎化と高齢化で、設楽町はダム建設に同意。2009(平成21)年には町、国、愛知県の三者がダム建設同意の協定書に調印しました。その直後、政権交代による事業仕分けで設楽ダム建設はストップしましたが、2012(平成24)年、自民党政権の復活で国交省が計画を再検証。再びダム事業が動き出すことになりました。

愛知県の河川事業の総仕上げともいえる設楽ダム建設。完成は2026(令和8)年の予定です。

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・1500万年前の奥三河には富士山級の大火山があった!
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・西南日本を分断する大断層、中央構造線が奥三河に露出!
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・県内の死者予測は2.9万人、南海トラフ地震とは何か?
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・・などなど愛知のダイナミックな自然のポイントを解説。

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・新幹線に負けない魅力満載!進化を続ける近鉄名阪特急
・国産初の超低床路面電車!リトルダンサーが走る豊橋鉄道
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・須恵器の猿投窯に始まり中世に発展した愛知の窯業
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・家康後の岡崎城主・田中吉政が築いた岡崎二十七曲りとは?
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