「安政遠足」の内容とは？
大会初日である5月19日の早朝に、合図とともに、出場者である藩士たちは安中城を出発。7里余（約27.49km）先の碓氷峠（うすいとうげ）にある熊野神社を目指してスタートしました。
コースとなるのは江戸五街道のひとつである中山道（なかせんどう）。安中あたりは街道の両側の杉並木が上毛かるたに詠まれるほど有名で、現在もその姿をおがむことが可能です。
安政遠足は分散開催された
参加者の数は総勢96名。1日で全96名が走るのではなく、16日間かけた分散開催という形が取られました。彼らは無事にゴールすると、神社に初穂を供えたあとに、酒肴、力もち、茶、切り干し大根、きゅうりもみなどが振る舞われました。
安政遠足のおもしろエピソード
この日の午前9時半くらいに到着したのは黒田誠三郎ほか6名。全員の名前がしっかり記録されているものの、初日に限って順位が書かれていません。
その理由は、記録係の神主が前日に神社に帰ろうとしたところ、大雨で足止めされ、翌朝にはレース中のランナーに追いつかれてしまい、神主も一緒に走ることになったためというおもしろい説があります。
克明に当時のことがわかるのは古文書『安中御城内御諸士御遠足着帳』が残っているからです。この古文書は大切に保管されていたものではなく、襖の下張りとして使われていたところを発見されたものでした。
安政遠足 安政2年のマラソンコース
松井田、坂本の宿場町を通過する約30km の上り道。かつて関所があり今は峠の釜めしと鉄道博物館で有名な横川も通ります。
「安政遠足」はマラソン発祥の地で現代によみがえった
安政遠足は1回こっきりで終わりましたが、それから1世紀以上を経た昭和50（1975）年に「安政遠足（侍マラソン）」というマラソン大会として復活し、現在も毎年5月に開催されています。
仮装が許可されているので、毎年趣向を凝らして走る参加者が多くなっています。甲冑姿のランナーの横を、アニメやゲームのキャラクターが息を切らして走るカオスな光景が人気となり、今では安政遠足は安中市の一大イベントにまで成長しています。
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