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三輪そうめん作りが盛んになった理由

一方で、三輪でそうめん作りが盛んになったのは、地理的な理由も大きいです。土地が扇状地にあるために水はけがよく、良質な小麦が取れる土質であるからです。また、巻向(まきむく)川と大和川(初瀬川)流域は流れが激しく、水車による製粉がしやすかったといわれます。

加えて奈良盆地の冬の寒さも幸いしました。気温が低いと塩分を少なくしてそうめんを作ることができ、コシの強い麺になります。さらに冬は晴天の日が多いので、外で干してそうめんを乾燥させやすかったといわれます。

三輪そうめんが歴史上登場したのは約450年前

実際に三輪そうめんが記録上に現れたのは、永禄8(1565)年のこと。興福寺の塔頭・多聞院の記録『多聞院日記』に、「麺十把、ミワヨリ来」という記述があります。

その後、江戸時代に入ると幕府に献上されるようになり、大和の名産として知られるようになりました。宝暦4(1754)年に著された、全国の名産を載せた『日本山海名物図会』にも紹介されています。伊勢参りに来る人々も魅了し、手延べのそうめん作りも各地に広がっていきました。

卜定祭は江戸時代から始まったとされ、当時はそうめんだけでなく五穀や豆類の価格も占いで決めていたようです。

三輪そうめんの歴史は今も受け継がれている

現代の大神神社の卜定祭では、奈良県三輪素麺工業協同組合、奈良県三輪 素麺販売協議会など関係者の参列のもと、三ツ鳥居前で卜定の儀式を行い、そうめんの卸値を占います。神職が「高値」「中値」「安値」が書かれたくじを神前でひき、選ばれたくじの値がその年の卸値となります。

2020年の卜定祭では、「誉」(三輪そうめん生産量の約90%を占める規格)の新物一箱(18kg)を高値とする神意を得ました。2019年は同様に「高値」、2018年は2年ぶりの「中値」でした。この価格は、地元の取引に反映されています。

祭典が終わった後は、拝殿前でそうめん作りの過程を真似た「三輪素麺掛唄」などの踊りが、三輪素麺掛唄保存会によって奉納されます。三輪では、そうめん作りの技術だけでなく、独自の神事や行事も今日に至るまで受け継がれているのです。

めでたい日のそうめん

索餅(さくべい)は平安時代以降、宮中で儀式や饗宴で供されていました。七夕にも食べられましたが、これは布織りの機械が「棚機(たなばた)」と呼ばれており、機織りの女性たちが索餅を糸に見立てて供物としたことに由来するといわれます。

室町時代には女官たちがそうめんを「おぞろ」と呼んでいた記録があり、今でも一部でそう呼ばれているのです。

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<コラム>
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