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広陵町のある奈良盆地で行われていた「田畑輪換」

奈良盆地は、降水量が少ないうえに中小河川の集水域が狭く、昔から水不足に悩まされ続けた地域。米の生産量を補うために当地の農民が編み出したのが「田畑輪換(たはたりんかん)農法」です。

田の裏作として冬に麦などを作付けするのを「二毛作」といいますが、夏場に田を畑として使うのを「田畑輪換」と呼び、当地の農民は稲と綿の生産を行い、機織りの工賃で生計を立てていたのです。

広陵町の綿織物業は新たな局面へ

ところが、江戸末期に外国に対して港が開かれると、明治期にかけて状況は一変します。外国から安い綿花や綿製品が大量に入ってくるようになり、国内の綿作・綿織物業は大打撃を受け、奈良盆地でも綿作は急激に衰退。大和木綿は廃れてしまいます

一方で、海外からの近代的な紡績技術導入により、輸入の紡績糸に切り替える形で綿織物業は新たな局面を迎えたのです。

広陵町は靴下製造を開始した

紡績技術の近代化が進むなか、この新しい波にいち早く注目したのが、馬見村(現在の広陵町)の吉井泰治郎。糸屋を生業としていた吉井家に生まれた泰治郎は、海外視察の際に手回しの編み立て機を手に入れて持ち帰り、明治43(1910)年に地元で靴下製造を開始します。

機織りに代わる農家の副業として、手回し編みの技術を習得した人たちが納屋などで細々と靴下作りを続けるうちに、農家の副業から兼業、さらには本業へと発展してゆきます。地域での取り組みは次第に広がっていきました。原料の産地であったことと、加工業者も集まってきたことで、靴下製造の各工程で多くの業者が関わるようになり、互いに切磋琢磨する好環境も生まれました。

そうした町ぐるみの活動が市場競争力の強化につながって、1960年代には国内一の靴下生産地としての地位を獲得するようになったのです。

広陵町と靴下産業の今

近年、外国産の安価な靴下の広がりにより、靴下事業者数が減少していくなど、靴下産業を取り巻く環境は大きく変化しています。そんななか、広陵町は豊かな実績と商品力を強みとして、ファッション性、機能性、実用性を取り込みながら、広陵町ブランドの靴下を世に送り出し意気込みを見せます。

さらに、広陵町は靴下組合、商工会、大学、金融機関などと一丸となり、地域ぐるみで靴下産業を盛り上げています。広陵町の魅力を広く知ってもらうべく、靴下市や靴下デザインコンテストなどのイベント開催、靴下リサイクル事業にも積極的に取り組んでいます。

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高級麻織物だった奈良晒

大和木綿よりも前に特産品として知られた「奈良晒(ならざらし)」。江戸中期の書物には「上質の麻を選んで紡績し、旧都のよい水に数千回さらして仕上げた名品」と書かれ、武士の裃(かみしも)などの礼服や富裕層の夏衣料として人気でした。

17世紀の半ばに「南都随一」の産業となるも、その後台頭してきた越後縮(えちごちぢみ)や近江麻布(おうみまふ)などに押され、原料の青苧(あおそ)の価格高騰も重なり衰退。さらに明治維新で最大の顧客である武士階級がいなくなったことでほぼ消滅し、幻の存在となりました。

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見どころ―目次より抜粋

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・実は人工的に作られた山だった? 古代史の舞台・大和三山
・人々の営みに密接してきた 生駒山がもたらした恩恵とは?
・大和平野を潤す大動脈 吉野川分水は300年越しに完成 ほか

Part.2 奈良を駆ける交通網
・生駒市と東大阪市にまたがる 暗峠の急勾配は法令地オーバー
・営業期間わずか9年間! 大仏鉄道を阻んだ急勾配
・3度の変更の末、駅開業が転がりこんだ!?なぜ、王寺町が鉄道の町になった? ほか

Part.3 奈良で動いた歴史の瞬間
・古墳の密集地帯・奈良盆地 なぜ古墳が造られなくなった?
・大化の改新だけではない! 中大兄皇子が変えた時間の概念
・秀吉が催した5000人規模の大宴会 吉野の花見で笑いをとった伊達政宗 ほか

Part.4 奈良で生まれた産業や文化
・全国で2校の国立女子大学 奈良女子大学設立の背景には岡倉天心
・古くから言い伝えがあった 天川村と手塚治虫作『火の鳥』の関係は?
・実は奈良盆地の気候が肝! 広陵町が靴下生産量日本一の理由 ほか

<コラム>
データで分かる全39市町村 人口、農業・水産業、観光
吉田初三郎が描いた奈良の鳥瞰図
映画・ドラマ・小説…… 奈良県とエンタメ作品

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